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選ばれない苦しみから、掴み取る喜びへ『ラブライブ!スーパースター!!』10話

『ラブライブ!スーパースター!!』10話は、ショービズの世界に憧れていた平安名すみれの努力の日々が報われる話でした。
「ダンスや歌、優雅さや華やかさ、それら全てを兼ね揃えながらも誰かに選ばれることはない」という日々を過ごしてきた彼女が、ようやく掴んだセンターでの物語。それは「選ばれない」というコンプレックスが生む卑屈さを、信じてくれる『誰か』のために傷つくことを厭わない勇気を持って乗り越える物語でした。

卑屈な平安名すみれ

念願かなってついにセンターに選ばれた平安名すみれ。
「ラブライブ!運営側から提示された『ラップ』という課題に最も合っている」という事が理由ですが、それでもセンターはセンター!
 最初こそ「私でいいの?」と言いつつも、他のメンバーからの推薦や喧嘩友達のような関係になっていた唐可可も気合の入った衣装を制作してくれたりと期待してくれており、それに応えようといつもにも増して練習に励むのですが、試しにやってみた結果を見た周囲の反応は芳しくない。

「センターは変えたほうがいい」
「これはこれでいいんだけど、ラブライブ!に勝つ事を考えるとこれではダメだと思う」

そうした周囲の反応や、「ラブライブ!の結果次第では唐可可は中国に帰ることになる」という事を知り、平安名すみれは「自分じゃない方がいい」「どうせ私は選ばれない。選ばれない私より、選ばれる他の人の方が良い」「それでも私をセンターにするのなら、私はスクールアイドルを辞める」と言い放つほど追い詰められてしまう。
この流れは凄くしっかりしててよかったですね。平安名すみれの卑屈さと「そうなる理由」がしっかりと描写されていて。
「平安名すみれは選ばれない子」というのは、彼女が加入した四話でも描かれていました。頑張っても頑張っても、勝利の女神は平安名すみれ以外の誰かに微笑む。それでも諦めずに頑張っても結果は全然伴わない。
選ばれない経験の数を重ねてきた人間が卑屈さと背中合わせの性格になるのも当然のことかと思います。
それでも夢を諦め切れてないのは彼女の強さでしょう。原宿を歩き回ってスカウトを待つような生活をしていたのも諦めきれないから。今度こそ選ばれると信じているから。
そんな中出会ったのがスクールアイドルで、澁谷かのん達だったのですが、そのスクールアイドルの中でも自分は選ばれない側だと知ってしまったのなら、それは泣きたくもなりますよ。おまけに「自分がやっていたら友達は帰国しなきゃいけないかもしれない」までのしかかってきているわけで。
選ばれない経験が生み出した卑屈な部分と自分じゃ背負いきれないほど大きな責任。この2つが一気に襲いかかってきたわけで、平安名すみれが逃げるのは仕方がないことかと思います。

ただここまで描かれてきた内容は全て「機会が与えられる」という話なんですよね。
「選ばれたい」と願う平安名すみれに「選ばれる機会を与えられる」という話で、「意地でも手放さない」「絶対に選ばせてやる」のような「機会を掴み取る話」ではない。
平安名すみれに足りないのは「諦めない」ではなく「泥に塗れてもチャンスは絶対に自分のものにする」という強い意思でした。

輝く星のギャラクシー

だから唐可可に「貴方にやってほしい」と言われ、そこで納得して引き受ける……だと平安名すみれは何も変わらない。彼女に必要なのは「絶対に掴み取る」という強い意思で、卑屈な自分を「それでも貴方は美しい」と肯定してくれることではない。自分の力で掴み取って、周囲に「貴方が相応しい」と認めさせるぐらいでないと、彼女は「選ばれない自分」に戻ってしまう。
今回良かったのは、そんな「外面を気にせず、転ぶことを考えずに自分の手で掴みに行く」を平安名すみれにさせていたことですね。

自分の帰国がかかっているにも関わらず、唐可可は平安名すみれを信じた。信じたから、彼女の頭上に輝く平安名すみれ専用のティアラを制作した。
そのティアラが突風に飛ばされてしまい、地面に叩きつけられそうになった時、なりふり構わずに飛び出して必死に手を伸ばして守り抜いたのは平安名すみれでした。
「今度こそは」と「今度も」の間で揺れ動き、チャンスを何が何でも自分のものにすることから理由をつけて逃げていた平安名すみれが、自分の事を信じてくれた唐可可や皆の想いを真正面から受け止め、自分の力でセンターを掴み取る。
その事を「ティアラを掴み取る」という形でもきちんと表現してくれたからこそ、「実際にどうだったのか」が描かれなくても何となく察することが出来たんじゃないでしょうか。

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物語と溶け合ったコケティッシュなライブ

また11話は今まで以上にCGライブと本編の物語が互いの物語を補完しあっていたかなと思います。
「ライブの中にも本編で語られた物語が存在している」と言いますか。リンクしていて、「Liella!として平安名すみれのセンターであることの意味」を描き切っている。『ラブライブ!スーパースター!!』のこれまでのCGライブでは頭一つ抜けた出来だったと思います。

今回のCGライブのイメージとしては「お城の舞踏会」で、五人は衣装から察するに「貴族の令嬢」という見立てがされていると思うんですが、その表情付けは魅惑的。振り付けもそうなんですが、コケティッシュな印象が押し出されたライブなんですよね。

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これのどこが本編とリンクしているかと言うと「選ばれる」じゃなくて「選ばせる」になっている点ですね。つまり「誰かに選ばれるのを待つ令嬢」ではなく「誰かの心を自分から掴みに行く令嬢」なんです。
そういう姿勢って今回本編で描かれた内容そのものだと思うんですよ。
そしてその中でも一人だけティアラを戴いているのが平安名すみれ!
自分から動き、意地でも掴んでみせた彼女がティアラを頭上に載せた王者として登場するのは熱すぎるんですよね。

これまでのライブも良かったんですが、今回は特に良かったです。
下手すると「ラブライブ!シリーズの中でも一番好き」かも知れません。

結びに

平安名すみれの当番回として、望んでいたものが全て入っていた回でした。
平安名すみれがスクールアイドルとして輝くためには、「誰かに選ばれて与えられる(=他者本位な輝き)」ではダメだというのは四話の時点で分かっていたことですが、「自分がなりたいからなる」「地べたを這いつくばってでも掴んでみせる」と自分の意思で「センター」という場所を選び、他者に何を言われてもそれを手放さなかった彼女はスクールアイドルとして凄く輝いていたと思います。そういう意味では平安名すみれが真の意味でスクールアイドル部に加入した回とも言えるでしょう。
またライブ直前の「ギャラクシー!!」は、平安名すみれがセンター、私こそが主役だと世界全てに宣言するかのような叫びで、ここも格好良く決まっていたと思います。

それにしても。まさか「チェケラ!」というサブタイトルとは思えない素晴らしい回でびっくりでしたね。今のところ箸休めのような回もないのですが、このままどこまで突っ走るのか。そして1stシングルはどこで拾われるのか楽しみです。


プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。