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『ラブライブ!スーパースター!!』二期生とともに始まるLiella!と、ファンの反応を予測した展開について

『ラブライブ!スーパースター!!』の2nd Seasonが放送開始となりました。
今回も最速はNHKという事で大体どの地域でも同じ時間に最新話が見れる最高の条件での開始となりましたが、その中身も最高でしたね。
渋谷かのん達一期生と桜小路きな子達二期生の温度差を並行して描けており、二つが本格的な合流する終盤は滅茶苦茶好きな演出でした。
さて、今回も『ラブライブ!スーパースター!!』をやっていきたいのですが、第一話はやはり「きな子の物語」と「Liella!の物語」が大事なんじゃないかなと思います。

きな子を主軸にした新しい『一歩』

一話は桜小路きな子がスクールアイドル部に加入を決める物語でした。
北海道から上京してきたきな子は舞台となる街もスクールアイドルのことも詳しくありませんから、ガイド役としてうってつけですね。
また「スクールアイドルを知らない」ということは『1st Season』でのLiella!の活躍を知らないということですから、渋谷かのん達とも先入観なく付き合う事が出来ますし、これにより「自分と変わらない普通の少女達が、スクールアイドルになることで変わることが出来た」という『1st Season』の物語をより神格化しているようにも見えました。
こうした『1st Season』とその活躍を「価値あるもの」として描いたからこそ、桜小路きな子がLiella!、スクールアイドル部に向かうシーンがドラマチックだったと思います。
「Liella!は凄い。サニーパッションが次点に上げるぐらい実力がある。今年は優勝を期待されている。この学校のスターなんだ」という事を知った桜小路きな子。そんな彼女に「それでもLiella!に入りたいのか(=スクールアイドルをやりたいのか)」が問うのはなかなか重いことなのですが、一期生である渋谷かのん達ではなく二期生のやりとりの中で覚悟を固めさせており、一期生とは異なる物語が始まった手応えを感じさせますね。
気持ちの高鳴りを階段を駆け上がる部分と連動させている点も良かったです。

五人で続けるのはエゴ

また一期生の話としては「一期生の五人で続ける」ということを「自分達のエゴ」と切り捨てて「二期生が必要なんだ」という話にしたのも大事なところだと思います。
『1st Season』を経てのLiella!は五人だけのものじゃない。
学校やこの場所から継承した思いもあるし、平報われなかった過去の自分の思いもあるし、単身で留学するぐらい強いスクールアイドルになりたい!という思いもあるし、Liella!を応援するこの学校の人達や協力してくれたこの街の人達の想いもある。
「そんな想いの一つ一つに応えられるような結果を残すことが出来なかった」という無念が現在のLiella!にはあり、それが「今度こそラブライブ!で優勝したい」「皆と喜びを分かち合いたい」という決意に繋がっているわけで、Liella!としてステージに立っているのは五人だけど、同時にLiella!は「学校や地域全体の代表者」でもある。
そういう前提があるので「二期生が入部してくれないので、一期生だけでやっていきます」はエゴイスティックな考え方なんですよ。「二期生を仲間に入れない」ということは「二期生は関係ない」ということになる。二期生がいないとLiella!はLiella!にならない。Liella!の本質を損なってまでやるのなら、それは独りよがりな考え方なんですね。
そこを平安名すみれが言っている辺りに、この子の本質を掴む能力が高く、自分達の支持がどこにあるのかをよく分析していてプロ意識の高さを感じてしまいますが、こうした釘の差し方をした事で「何が何でも必要」に舵を切れているので良かったんじゃないかなと思います。

また地味ですが、唐可可の母国への強制送還について触れられており、それを知るのが本人と平安名すみれだけってのも面白いところですね。
「なくなった」ではなく「猶予をもらった」なので、場合によっては強制送還がありうるし、そうなった時にどうなるのでしょうか。
終盤辺りで回収され、「何が何でも勝たなくてはならない」に持ち込む気がしますが、一話で「今回必要な要素」として提示しているのは大事ですね。

ファンの反応を取り込んだ展開

個人的な話をすると、「二期生のLiella!の捉え方が、『2nd Season』からLiella!は五人から九人になります」と発表された時のファンの反応と似ている、もっと言えば重ね合わせるかのような描き方をしていた点が興味深かったです。
『1st Season』の、もっと言えば「九人になる」と発表される直前の五人体制のLiella!って本当に完璧だったんですよ。
五人全員キャラクターが立ってるし、パフォーマンスのレベルも高いし、トークも出来る。「この五人で次の物語が描かれる」ということについて疑う余地はなかったし、この完成度が更に高まることを期待していたファンも多かった。なので「Liella!は五人から九人になる」と発表された時は賛成の声も反対の声も両方上がりました。
実質倍ですからね。完璧な五人を見続けてきた人ほど「どうなっちゃうの?」「大丈夫なの?」という気持ちはあって当然のことだと思います。
私には、そんな「完璧な五人の中に新しく四人が追加されて大丈夫なんだろうか」というファンの動揺を反映したのが「Liella!はラブライブ!の優勝候補だから、そこに飛び込むのは厳しい」という二期生の反応に見えていました。
その動揺を見てから脚本に反映するのは時間的に無理でしょうから、「こういう反応があるだろう」を予想して書いたものが本当にその通りになったんだと思うのですが、京極尚彦監督は『劇場版ラブライブ!』で「作品が自分達の想像を超えたヒットになってしまった」という体験を「アメリカでいつも通りのことをやっただけなのに、帰国したら凄いことになってた」という形で描いていますからね。
そういうことをやられると、二期生を好きな気持ちにさせて欲しいし、アニメでも九人体制を見たくなりますね。

結びに

実は一話を見るまでは二期生のことが好きになれるか心配だったのです。渋谷かのん達と一緒に「一年」という時間を過ごしてきた人間なので、「一年間生活の近くにあったものが変わってしまうこと」「その象徴とも言える二期生の存在」はこの目で確認するまでは何ともいえない状態でした。
またそういう気持ちを抜きにしても一期生には「これまでファンと共に紡いできた物語」があるのでキャラクターとしては「濃い」。その濃さに二期生がついていけるかどうかも不安でした。食われちゃうんじゃないかとすら思ったりしてました。
ただ一話が始まってみると、心配するだけ無駄だった。二期生は二期生で一期生に負けず劣らず濃いし、「好きにさせてみせる」という気合が感じられる映像になっていた。
最初から五人から九人になることを想定した作品だからこその設計がもう面白いって凄いことだと思うんですよ。そしてそれが楽しめる作品になっていることもまた凄い。正直ここまでの作品とは思いませんでしたね。

とまあ長く書いてきましたが、物語的にはまだ一話ですし、サニーパッションとの戦いもある。今度こそラブライブ!優勝を見たいですね。

プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。