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『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は2nd Seasonで何を描いたのか

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2nd Seasonが最終回を迎えました。
スタッフ、キャストの皆様、そして応援しているファンの方々。お疲れ様でした。
本稿では「『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は2nd Seasonで何を描いたのか」ということで、簡単にですが『2nd Season』について述べていきたいと思います。

鐘嵐珠の登場から始まった高咲侑の物語

『2nd Season』の主軸となっていたものの一つとして、「高咲侑が自分の表現したいことを『音楽』に落とし込む」がありました。
『1st Season』での高咲侑には「スクールアイドル達を応援し、彼女達が自分達のやりたいことを実現していく姿を傍で見続けることで、自分のやりたいことを考え、その答えを見つける」という物語が与えられており、最終回では「やりたいこと」を実現するために挑んだ音楽科への転科試験に合格。『2nd Season』では、虹ヶ咲学園音楽科の人間としてスクールアイドル同好会に参加していたのですが、未だ「彼女が何を表現したいのか」ということは曖昧なままでした。
「スクールアイドルから夢をもらった。やりたいことを教えてもらった」と語っています。ですが、「では音楽科で、その夢ややりたいことをどうやって自分の表現とするのか」については『2nd Season』開始時点では「まだまだこれから考えること」であり、「その表現でどうやってスクールアイドル同好会に関わっていくのか」に挑戦するところにまで達してませんでした。
そんな高咲侑と対称的だったのが『2nd Season』から登場した鐘嵐珠とミア・テイラーでしょう。
高咲侑と同じく「スクールアイドルから夢ややりたいことを教えてもらった」と語りながらも、自身もスクールアイドルとしてステージに立って、パフォーマンスで表現に落とし込んでいる鐘嵐珠は、高咲侑から見れば「一歩も二歩も先を歩いている存在」ですし、ミア・テイラーも後に語られる「本当にやりたいこと」から少し外れているものの「鐘嵐珠への楽曲提供」という形で「自分なりの表現への落とし込み」を行っている存在でした。
この二人の登場により「自分の対となる存在の鐘嵐珠に、自信を持てこれだと言える解答を見つけられるのか」という内面的な物語と、「その解答をどうやって『表現』として落とし込むのか」という技術的な物語の二つの物語を与えられた高咲侑は、スクールアイドル同好会に支えられ、また自身も同好会のメンバーとしてスクールアイドルを支えながら「『2nd Season』の大半」と言う長い時間をかけて模索していくのですが、その答えを見せてくれた10話は「高咲侑の物語の完結」と言っていいものだったと思いますし、彼女からスクールアイドルに返せる感謝の表現としては鐘嵐珠に負けていない代物だったと思います。

同好会であることの意味を問う

一方、スクールアイドル同好会はというと「たった一人でいい」という鐘嵐珠の登場で、「スクールアイドル同好会ってなんだろう」という根源的な物語が展開されていたように思いました。
『ラブライブ!』のμ’sや『ラブライブ!サンシャイン!!』のAqoursとは違い、スクールアイドル同好会は「一つのユニット」というわけではなく、「一人一人違うスクールアイドル像があり、それぞれの姿を実現していく」という方針ですから、究極的には「一人」でもいい。「同好会」という集団である理由はスクールアイドルとしてはないわけです。
鐘嵐珠の登場により彼女達は「同好会である意味」のようなものに向き合い、その結果生まれたものが「3つのユニット」であり、「3つの集団である存在意義」だったと思うんですね。「スクールアイドル同好会」という集団から生まれた「3つの存在意義」という形はこの作品が描いてきた「それぞれの理想を追い求める」という考え方にも沿っていて、良い結論だったかなと思います。
またこの辺りがしっかりと固まったからこそ鐘嵐珠やミア・テイラー、三船栞子達が「スクールアイドル同好会に所属しなくても、スクールアイドル活動はできる」と分かっているにも関わらず「それでも同好会に所属する」と決めたことにも積極的な参加が感じられて良かったと思いますね。

「あなた」を貴方に返還した最終話

そして最終話ですが、この最終話はほぼ「次は貴方も!」と呼びかける展開がほぼ全てだったかなと思います。
ここでの「次は貴方も!」には個人的にはいくつかの意味があると思っていて、その複数の意味が最終話の魅力を高めているのかなと思うのです。個人的に特に大事なのは、その中でも二つでしょうか。

一つ目の意味としては「スクールアイドルに憧れているけど、スクールアイドルではない観客達を応援する」という意味ですね。
『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』と同じくゲームアプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』にルーツを持つキャラクター達が登場していたのも、おそらくその「貴方もなれるよ」という意味を強く持たせるためで、ステージに引っ張り上げられた高咲侑と合わせてみると「貴方のステージは待ってる」なんですね。
ここに来て、そもそものルーツを同じくする者達をステージに引っ張り上げてきたのは良かったですね。

もう一つの意味としては「あなた」を返すことで、「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会とあなたの物語」にしたことでしょうか。
高咲侑はゲームアプリにおける「あなた」の代替物として創造されたキャラクターですが、『2nd Season』では「貴方の代替物」というより「高咲侑」というキャラクターとして描写されていた。
そんな高咲侑をステージに引っ張り上げ、「次は貴方も」的な展開にしたのは高咲侑と「あなた」は明確に切り離す意図があったからでしょう。
この切り離す描写により高咲侑が引き受けていた「あなた」は視聴者に返還され、アニメとゲームはまた別の方向性を歩むことが可能になったと思うんですよね。
あと「あなたをお返ししますよ」という姿勢を見せたことは、「あなたと虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の物語はこれからも続いていくんだよ」と言う意味でもあるので、美しい幕の引き方をされましたね。高咲侑があなた(=ファンや視聴者)ではなくなるための卒業式みたいな感じだったのかもしれません。

結びに

『2nd Season』が発表された時は「何をやるのか。そもそも『1st Season』でほぼほぼ話としては語りきってるし、これ以上何かやるとしてもユニット編と鐘嵐珠達ぐらいで、メインストーリーになりそうなものは特に無いのではないか」と思っておりました。
いざ始まってみると、その点についてはスタッフも自覚的であり、だからこそ「何をやるのか」を検討することに時間が尽くされたかのようなシリーズ構成になっていましたし、最終話まで見終えた今となっても「ラブライブ!に出場しないラブライブ!」という『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』らしいことで楽しませてくれた作品だったのではないでしょうか。
来月からは『ラブライブ!スーパースター!!』も始まりますし、本作が広げた世界があちらでもどこかで輝いているといいですね。



プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。