【AIがすべての芸術を生み出すようになった社会】第17話
青山は、ソファに座って興味深そうにルービックキューブで遊んでいる篝を一瞥した。本当に判別が可能だと、思い知らされたようにも思う。篝の前にも二人ほど、第一級と第二級のセンシティブをバディにした事があるが、ここまで的確に見抜いた者は、一人もいなかったのが実情だ。
「今日は料理は作らないのか?」
初回のパスタ以後、篝は料理をしていない。だが今日は時間があるからと、青山の方から促した。飽きたのならば、それで構わないと思っている。以後は宅配を手配するまでだ。
「こ、この前の! トマトソースで……ラザニア……作れる?」
「ああ。それらの食材は家にある」
「作りたい」
「俺の手伝いは必要か?」
「一人でやってみたい」
と、こうして篝が料理に立ったので、青山は仕事に専念する事にした。
――〝ヨセフ〟。
今回は、いくら一般市民が犯罪に手を染めたとは言え、現場に重要な紙片があった。ヨセフは、青山の両親が没した第一種指定犯罪事件にも関与しているとされている。その上、芸術家を多数手引きしている。嘗て大規模テロを起こした芸術家集団の捜査の途中、青山の両親は亡くなった。その際、裏で手引きする秘密結社と――そこに属するとおぼしき青年の姿を捉えたのだという。それが、ヨセフだ。亡き母が、死に際に同僚に伝えた名だという。そんな危険な芸術家の魔の手が一般市民にまで及び犯罪者に仕立て上げたとなれば、ゆゆしき事態だ。
「狙いはなんだろうな」
青山が呟く。目的が不明な犯罪者であるから、捜査がより困難になっている。
思考がまとまらない時、青山はAIが生みだした芸術作品に触れる事にしている。
そこで、今も音楽を流し始めた。
その時だった。
「それ、冬眞くんの……」
篝が驚いたように声を上げた。青山が視線を向ける。
「冬眞くんの作った曲だ。冬眞くん、こっそりコップを叩いて曲を作ってて。なんで、ここで流れてるの? 人間の芸術作品は、駄目なはずなのに」
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