ハチミツたべたーい

ハングリー精神とは

恵まれない環境から脱出するために必要な強い気持ちという意味で用いられます。

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通称地獄の氷河期というシーズンがあった。その時のぼくは今考えるとどうかしていた。まず家に家財道具が一切なかった。お金もなかったが。あったのは取っ手のないティファールのフライパンだけだった。

ちなみにかつて書いたこともあるがそのシーズンはスマホが止まっていた。止まっていたというより強制的に解約されていた。そのため日頃の連絡は近所のコンビニや地下鉄などの公衆WiFiを使って行っていた。非常に不便であった。が、それはそれとして割り切って生活することができた。良く言えばスマホに捉われない生活ができデジタルデトックスができたとも言える。

当時は23区の西側に住んでおり、仕事場は豊洲だった。当然電車賃もないから豊洲までチャリで通っていた。片道20km、時間にして1時間強かかる。意外にも電車も自転車も時間が変わらないのだ。ペットボトルに水道水を詰めていった。職場にいけば職場の人に買ってもらったカップ麺があったからお昼ご飯には困らなかった。時々奢ってもくれた。

しかし困るのは夕飯と休みの日だった。家には冷蔵庫がないので食べ物を保存できない。電子レンジもないのでお弁当があってもしょうがない。炊飯器もなかったのでご飯も炊けなかった。そんなときぼくは何を食べるのがいいのか一生懸命考え、ある食べ物にたどり着いた。

ハチミツである。

ハチミツはカロリーが高く(本当に高いのかは知らないがいかにも高そうだろう)、栄養価も高い(これも本当に高いのかは知らない)。なにより常温保存が可能なのだ。

ぼくはひと月ほど家でお腹がすいたらハチミツを飲んで生活していた。身体も壊さなかったしそんなに痩せなかった。ハチミツを飲めば大抵大丈夫だとわかった。

いまは衣食住に当時ほど困ってはいないが、当時ほどのハングリー精神を持って生きているだろうか。いま同じ生活が出来るのだろうか。そういったことを常に頭におきながら、毎日を過ごしている。ぼくにとってのハングリー精神とはハチミツの味なのだ。


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