てぃくる 361 軽くなる
エノコログサの穂が、すっかり枯れ草色になりました。
風に揺れる風情も「ゆさゆさ」から「ふわふわ」に変化し、すっかり軽くなったようです。重量感がなくなった分、猫の遊びものとしてはちょっともの足らなくなってしまったかもしれませんね。
軽くなったのは、穂についていた種子が落ちて毛しか残っていないからです。穂をぎゅっとしならせていた無数の穀粒は、今は土の上。それが一斉に芽を出したら、すごいことになるでしょうねえ……。
でも、地面に落ちた種子の多くは鳥の餌になります。冬季、枯野の上を多くの鳥が歩き回っているのは、こうした雑草の穀実を必死に食べ漁っているからなんですよね。
無尽蔵に見えるエノコログサの種実も、その大半が食べられて、わずかに残った分が次の世代を育むことになります。
たくさん実っても、ほとんどが食べられてしまってわずかしか残らない。ひどく効率が悪いように見えますが、種子が全部生き残って一斉に発芽したら実生が過密になって共倒れするおそれがあります。
食われることを承知で種子をたくさん作るのは、光や土の養分を子孫に上手に配分するための工夫なのかもしれません。
ともあれ。すっかり軽くなった枯れ草色の穂が、軽くなったことを喜ぶかのようにわずかな風にも身を揺らします。
ふわふわと。
(2017-11-19)
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