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てぃくる 609 元には戻らない

 干し椎茸を水で戻す。
 確かにサイズや外形は、かなり戻る。

 でも、それは大きさや形だけだ。
 味も匂いも食感も、もう二度と元には戻らない。

(干からびたベニタケの仲間)


 変化してしまったものを元に戻すという行動は、しばしば良からぬ新たな変化をただ重ねるだけに終わる。仮に補修されたものが元に戻ったように見えても、それに接するわたしたちの心情は二度と元に戻らないからだ。

 わたしたちは、万物が不可逆的に変化するという事実を無条件に受け入れるしかない。元に戻せるものは、何一つない。事実として、ない。だが、その事実を受け入れ難いことも、悲しいかな紛れも無い事実なのだ。

 生椎茸と干し椎茸にはそれぞれに個性があって、利用方法が違う。干し椎茸をわざわざ生椎茸に復元する意味はない。そのことには一も二もなく同意してくれる人が、「でも」で繋ぐ否定の滑稽さを。

 日々実感している。


秋の影舐め行く先は日々変わる

(2019-10-15)

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