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てぃくる 906 青い火花
火は赤いものだという先入観に囚われると、青い火で大火傷をする。赤い炎の温度よりも青い炎の温度の方がずっと高いからだ。
ガス火の青さを知っていながら炎が赤いという先入観を撤回しないことは、プロメテウスによって我々にもたらされた炎呪なのかもしれない。
人は炎をすぐに情欲や情熱に重ね合わせようとするものの、燃えたつ赤い炎が熱し過ぎると青く変わることまでは想像できない。触れたものを瞬時に焼き尽くす青い炎は決して珍しい存在ではないのに、炎のもたらす帰結に思い至らない。
だから、私は警告する。
炎ではなく、青い火花として。
指で触れても火傷はしない、小さな火花。
だが、それはしっかり青い。
心に火傷を負わせるくらいには、しっかり青い。
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「シラーはね、一本だけでも強い存在感がある。いや、ありすぎるの。どこに置いても目に入る。入ってしまう。だから、この庭にはシラーは植えないことにしているの」
「バラや百合よりも派手、ですか? そうは思えないのですが」
「バラも百合もすぐに散ってしまうわ。でもシラーの青い火花は、ぱちぱちと音を立ててずっと散り続ける。周りにいる全ての者に、癒すことのできない小さな火傷を残しながらね。あなたもそう」
(2022-05-11)
Scilla by Nicola Sergio Trio
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