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てぃくる 359 土の匂い

 今年は夏の猛暑の影響が長引いたせいか、夏きのこ、秋きのこ共にさっぱりでした。毎年採りに行っているハタケシメジも、今年は収穫ゼロ。まあ、そういう年もあると割り切らないことには仕方ありません。

 そんな中、ぽつぽつとウスムラサキシメジが出ています。


 ムラサキと付いていますが、本家ムラサキシメジよりは淡い上に、時間が経つと色が褪せていくので、かなり個体差が大きいです。画像のものはものすごくあっさり。どこが紫だっていう淡さですね。
 しかし、秋半ばまでに発生すること、ヒダが密で独特の土臭さ(薬臭さ)が漂うことなどで、あたりが付きます。

 本種は、ムラサキシメジと違って有毒。食べられません。色の濃いムラサキシメジの方は食用になるんですが、好みがものすごく割れますね。一口食べてダメ出しをしてしまう方も、結構おられます。わたしもどちらかというと苦手です。

 ブナシメジやエノキタケのように木を腐らせるタイプのきのこには、強い土臭さがありません。でも、優秀な食菌であるホンシメジやハタケシメジですらも、地面から生えるものには多少なりとも土臭さがあるんですよ。その風味が苦手な人は、土臭さ、埃臭さがきついムラサキシメジやコガネタケをすごく嫌います。

 でもね。今わたしたちが口にしているものは、ぎりぎりまで野性味を削ぎ落とされたものばかりになりつつあります。出来るだけ癖の少ないものを、穏やかな味のものを。
 まあ、それでもいいんですが、何を食べても同じ印象を持ってしまうっていうのは、本当にそれでいいのかなあと。

 土臭さというのは、甘酸辛苦渋という味の骨格の中には入らない、別の個性です。身近なところにない味の個性に触れておくこと。それは、自分の感性を研ぎ澄ませる上で必要なんじゃないかなあと。そう思ったりします。

 いや……それでも。わたしは、苦手ですが。

(2017-11-15)

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