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麻雀実況の勉強記録①ことばでピンを打つ

この記事は、実況者の末席になった底辺女流プロが、自分なりに麻雀実況について勉強したことを書いています。

その1 はじめに

「実況、上手くなりたいなぁ」と思った私は、「そうだ、実況について書かれた本を読もう!」と思い立ちました。

しかし麻雀実況の本はまだ出版されていないので、山本浩さんが書かれた「スポーツアナウンサー 実況の真髄」という本を買い、読んでみました。

とても勉強になりました。

スポーツと麻雀は全く違う世界ですが、「緻密なルールがある」「試合という区切りがある」「他者と競い合うものである」「勝ち負けの結果がはっきりと出る」など共通点は多く、この本に書かれている「実況の本質」は麻雀実況に大いに応用出来そうです!

特に私は、こちらの文章に感銘を受けました……。

「実況の基本中の基本は、エネルギーのベクトルの変わる瞬間に、ベクトルの起点にことばでピンを打ち続けるところにある」3Pより

うわ、文章が天才……!!

マジで「ことばでピンを打つ」という表現に、ゾクゾクっとしてしまう~~!

そして、この「ことばでピンを打つ」ような実況と言えば……日吉辰也プロ!!

というワケで、日吉プロの「ことばでのピンの打ち方」に特に着目して、実際の実況を文字起こしした物を挙げながら、麻雀実況について学んでみました!

文字起こしをした対局は、YouTubeで無料公開中の動画「第40期鳳凰位戦A1リーグ第6節A卓1回戦」になります。

選手:西川淳vs吉田直vs勝又健志vs一井慎也

解説:藤崎智
実況:日吉辰哉

その2 ことばでピンを打つとは?


まず、「ことばでピンを打つ」とはどういうことなのかを考えてみました。

「実況の基本中の基本は、エネルギーのベクトルの変わる瞬間に、ベクトルの起点にことばでピンを打ち続けるところにある」3Pより
「アナウンサーが、ベクトルの変化が生まれるたびに、アクションの変化に遅れることなく起点にピンを打ち続ければ、それだけで試合のリズムが伝わってくる」4P

では、麻雀において、エネルギーってどう流れているのでしょうか?

配牌を取り、ツモって、捨てていくうちに、手牌がじわじわとアガリに向かっていく。
私はそういう静かな雰囲気のエネルギーを、イメージしてしまいます。
そのイメージの行きつく先は「誰のチャンス手も潰されず、そんなに高くない手を誰かがあがったり、流局する」と言う、とても穏やかで、平和な結果です。

では、「ベクトルが変化した」瞬間は、何でしょうか?
穏やかでも平和でもない結果が生まれそうな雰囲気を感じた時なのかな?

例えば、
・配牌が良すぎる。
・ドラが2枚以上。
・高い手を作りに行った。
・テンパイした。
・リーチした。
・ヤミテンにした。
・現物で高い手を張っている。
・危険牌を押した。
・チャンス手が潰された。
・高いアガリが発生。

どれも見ていてドキドキしちゃうようなシチュエーション♡

こんな時に、ピンを打つように緊迫感を持って伝えると、視聴者の皆さんも一緒にドキドキしてくれて、麻雀視聴を楽しんでもらえるのかなぁと思いました。

その3 実際の日吉プロの実況


というワケで、日吉プロの実況が最も盛り上がっていたような気がする東4局をクローズアップし、文字起こしして、日吉プロが「ピンを打っている」と思われる個所を太字にしてみました!
全文起こすのは大変だったので、少し省略しています。

(東4局は18分26秒頃から始まっています)

日吉「さぁ、東4局。親は一井に変わっています。今日で水、金、水と三連戦の一井

皆さん御存知だと思いますが、先日、一井プロはEX風林火山IKUSAを優勝しました!
IKUSAの対局等があり、3週連続のリーグ戦という過酷なスケジュールになっているんですよね。でも順調にポイントを上積されていて、やっぱり強いなぁいう印象があります!

日吉「さぁ、ドラが2ソーとなっています。勝又はかなり悪い手。こちら吉田は2メンツ出来ていて、一気通貫のイーシャンテン」
藤崎「ドラの重なりがあるから、6ピンは引っ張らざるを得ない感じですか」
日吉「5ピンが頭かと思いきや、2ソーが頭になった時は、47ピンで使いたいってことですよね」

吉田プロは一通ドラ1のイーシャンテン。ペンチャン残っていますが、チャンス手の気配!
続けて日吉プロと藤崎プロが吉田プロの手牌の変化の可能性について話していました。
でも、1巡で状況が変わります。

日吉「この巡目で、かなり手が変わりましたよ!
まずね、うわぁぁ、テンパった!一井、さっきダブ東アンコにしてのテンパイ!
25ピンの7700!
そして勝又は白中トイツの七対子イーシャンテン+トイトイ四暗刻など

一井プロのテンパイに、日吉プロの口調が明らかに変わりました!
親のダマテン7700の恐怖が、めっちゃ伝わってきます!
更に勝又プロの手が大物手に化けそうな気配も、伝わってきます!

日吉「うわ、25ピン、こわっ!これ、吉田2ソー伸びちゃうと、5ピン出ます!

チャンス手っぽかった吉田プロがピンチに!?
この戦い、どうなるの?一井プロはツモるの?吉田プロは放銃してしまうの?それだけで手に汗を握る状態なのに、なんと……!

日吉「白ポンは?2枚目!ポンですね

勝又プロが白を仕掛け、参戦~!!

日吉「しかも25ピン現物だ!仕掛けた勝又の現物!
日吉「これ、西川だって25ピン掴んだりしたら、危ないぞ……。わっ、受けた受けた!受けると25ピン危ない!7700!

受けてるはずの西川プロまで、ピンチにっっ!!

そしたら、吉田プロが5ピンを引いて、アタリ牌の5ピンを暗刻にしたました。
ん、これどうなるの?

日吉「5ピンだ!いったん6ピン?やっぱ危ない!次のツモが2ソーか3ソーかが、大きな分岐点!」

まだ吉田プロは危機を脱していないようです……!
再び冷や冷やしていると、何と、勝又プロに白トイトイ、ツモれば三暗刻も付くテンパイが!!

日吉「うわ、テンパったよ!6マン中!うわ、中、だって2山じゃない?……1山だ!」

一井プロと勝又プロ、どっちがアガるの~??
あわあわしていると、吉田プロも6ピンを重ね、テンパイが入ります!!

日吉「うわ、テンパったよ!ペン3ソー!ひょっこりツモは?……2山!
ただこれで、25ピン止まらない!吉田は!2ピン、止まらない!
うわぁ、どっちよ?勝又だって中ツモッたら、3000・6000ですからね

藤崎「ただ、中は止めそうかな、タダシは……」
日吉「うわ、5ソー強いなぁ!5ソー強いなぁ!

何とも目まぐるしいテンパイラッシュの中、日吉プロは残り枚数を正確に把握し、危険牌を押して真向勝負している様子も伝えているのが、凄すぎです!!

藤崎「2ピン1枚…」
日吉「減りましたか!減りましたか!
藤崎「唯一出ない所に行きましたね」
日吉「降りている西川!……ただ降りていても2ピンになることはないですか?」
藤崎「……ある」
日吉「ありますよね!
藤崎「あ、中無くなったよ!」

勝又プロの高目和了が無くなったその時、勝又プロが3ソーを引いて、ツモ切り!

日吉プロが「3ソー!ロンが出来ない!ロンが出来ない!」と叫ぶ中、吉田プロの次のツモは2ピン~~!
強くツモ切る吉田プロ!!

日吉「その先にはやっぱりこうなっているんだよな~!!
一井のアガリ、ダブ東ドラ1、7700、高い!

対局は、以上になります。

さて、日吉プロが特に強調して実況していた箇所は、以下の通り。
・チャンス手の気配
・一井プロの高打点のヤミテン
・ヤミテンへの放銃の危険性
・3人がテンパイ
・危険牌が止まら無さそうな様子。
・吉田プロのアガリ牌が切られたが、役ナシなのであがれない
・次に吉田プロに待っていたのは、高打点での放銃……

なるほどなぁ。これが「ことばでピンを打つ」ってことなのかなぁと勉強になりました!

それにしても、手に汗握る展開を、リズミカルに、緊迫感たっぷりに伝え、最後は「麻雀あるある」っぽいガックリ感も表現されていて、本当に凄い……。

私もこういう実況が出来るようになりたいけど……頭も目も耳も悪いから無理!(^^)/

明日はFocusM実況です!自分なりに、頑張ります!

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