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【感想】早番にまわしとけ

 ※この記事は「自分の感情を記録しているだけ」の文章です。毎度のことながらレビューとしては役に立ちませんので、どうぞ優しい視点でよろしくお願い致します!

 今回の記事はキタハラさんの御本「早番にまわしとけ 書店員の覚醒」の感想文となります。(フォロワーさんは既にご存じでしょうが、キタハラさんは私の推し作家さんです。圧倒的な筆力と観察眼で、読みごたえのある良質な文章を届けて下さる方です)

 上記の通り、前回の記事では「遅番にやらせとけ 書店員の逆襲」の感想を書いたんですが、今回はそちらと同シリーズということになるようです。物語自体は単巻で完結しているので「早番」だけで読まれても大丈夫ですが、先に「遅番」を読んでおくと更に楽しめると思います。(山本さほさんの描かれた表紙も可愛くて、つい二冊並べたくなってしまう)

  購入予定の書籍の発売日にはお約束のように「まだ書店にないよ! 地域格差!」と嘆き悲しんでいる九州地方在住のわたくしですが、今回は諸事情あって書店へ出向くことが難しく、やむをえずネット通販で購入しました。よりによって書店の物語をネット通販……涙なしには語れない悲劇ですが、いつになるかもわからない「書店へ行けるタイミング」を待っているよりも、売り上げの初動へ反映される期間内に購入した方がいいんじゃないかなと。ちなみに通販の発送日が発売日だったので、結局届いたのは発売日の二日後でした! 地域格差!(絶叫)

 さて、正直申し上げまして、今回は感想を書くのが非常に難しいです。なぜならば、何を書いてもネタバレになってしまいそうなんですね……! いちおうネタバレはしない方向で書くと決めているので、いつにもましてぼんやりとした感想文になると思います。よろしくどうぞ。

 私は本を読む際に「世界へ潜り込む」とよく言うんですが、今回もすんなりと作中に潜り込ませて頂きました。私がキタハラさんを推すのは、この「まるでその場にいるように」潜り込ませてくれる技量の凄まじさゆえなんです。主人公と同化する感覚ともまた違う、登場人物のひとりひとりを慈しみたくなるような、キタハラ作品独特の没入感が本当に好きで好きで――ええ、今回も裏切られることはありませんでした。

 内容としては「畑違いの部署から異動になった新店長が、周囲のひとたちと『仲間』になっていく物語」というところでしょうか。前作の「遅番」よりも、お仕事小説の色が濃くなった気がします。
 実はこの「完全アウェーの場所へ上司となるべく放り込まれた」状況が、過去の自分とそっくりだったんですよね。ついつい「私、キタハラさんにこの話をしたことあったっけ!?」などと考えてしまうくらいに(あるはずがない)主人公の由佳子さん、完全に昔の私だった……いや、書店勤務はしたことないですけど。でもしんどさは多分おんなじ。部下の方が自分よりも部署でキャリアを積んでるの、本当につらい以外の何物でもない……!
 そんな感じで古傷えぐられたところから読み始めてしまったので、序盤はどうしても由佳子さんへ肩入れする気持ちが強くて、個性的すぎる周囲にキリキリしてしまったり……だけど気が付けば、全員のことが愛おしくなっていました。少しずつ由佳子さんが変わってゆき、そして由佳子さんが周囲を変えていく。彼女たちの変化とシンクロするように、読み手の私もみんなを好きになっていきました。
 過去の自分を手放すことは、決して簡単なことではないけれど――自分を変えていくことで、はじめて見える景色があった。無邪気に思い描いたハッピーエンドとは、全くかけ離れたものかもしれない。だけど「未来」の方を向いた時、見つめる先にあったのは、いつか掴めるであろう確かな希望でした。
 見事な「覚醒」を果たした彼女たちに、どうか幸あらんことを!

 過去の自分を手放すことは、別に悪いことなんかじゃない。
 自分だって、もっと変わることができるかもしれない。
 読み終えた時、そう思えたから、いつか私も「覚醒」しちゃうのかな?

 私にとっては、背中をそっと押してくれるような、とても温かな物語でした!

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