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トンニャン#11 愛の天使クビド(リオールと対の天使)

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「クビドの巻」のような意味。話の位置は、前回の「リオールの巻」の続きです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

 「ミカエル様、お呼びでしょうか?」
 クビドは父・ミカエルに呼ばれて、雲の上のミカエルの書斎を訪れていた。ミカエルはやはり雲の机に向かって、何か書き物をしていた。
 「クビドか、久しいな。最近の仕事はどうだ?」
 ミカエルは振り返ると、父親らしい言葉をかけた。

クビドは直立したまま、顔を伏せ、どう答えたものかと言葉を探した。
 「・・・そうか。
人間界はやはり荒れているのだな。愛の矢の出番は、なかなかないか」
「いえ、その・・」

【愛の天使 クビド】
 ギリシャ神話で、戦いの神アレスと愛と美の女神アフロディーテの間に愛の天使エロスとして誕生する。
この物語ではローマ神話の呼び名、ウェヌス・クビド(英語ではビーナス・キューピット)として登場し、父は軍神マルスと同一視されるといわれる四大天使ミカエルである。
しかし、ギリシャ・ローマ神話のクビドは、本来の天使とは出自が異なる為、ミカエルとは結び付けにくい。
天使の階級は、セラフィム(熾天使)・ケルビム(智天使)・スローンズ(座天使)・ドミオンズ(主天使)・ヴァーチュズ(力天使)・パワーズ(能天使)・プリンシパリティーズ(権天使)・アークエンジェルス(大天使)・エンジェルス(天使)と、九階級あるといわれる。
ミカエルは戦いの天使なので本来ヴァーチュズ(力天使)だが、階級から言うとセラフィム(熾天使)に匹敵する。
クビドを階級に当てはめると、知恵の天使である、ケルビム(智天使)と考えられる。

 
 ミカエルはゆっくりと首を横に振った。
 「いや、私も見ていないわけではない。
人間は戦争という過ちを繰り返してきたが、最近では、本来武器を持たない者達までが、少しでも怪しいと疑った者を、集団で襲っているのも、珍しくないようだ。天帝が憂えるのも無理からぬ事」
 「ミカエル様、方舟の話は、エンジェルスに至るまで、噂になっております」
 「ふむ・・・」
 ミカエルは右手の指で顎を支え、ものを考える人のように、ひじをついた。

 「今日ここに呼んだのは、その話ではないのだが」
 「と、申しますと?」
 「・・・ずっと、わたしの事をミカエル様と呼んでいたか?」
 「は・・・はい。生まれた時から、ミカエル様ですが?」
 「母のウェヌスの事は?」
 「・・・ウェヌス様とお呼びしております」
 ミカエルはしばし黙ったまま、クビドを見つめていた。
 「ミカエル様、話というのは?」
 「いや、もちろん、その事ではない」
 

 「ミカエル様のお話は何だったの?」
 クビドが自分の城に戻ると、いつものように妻のチェリーが向かえてくれた。

チェリーは天帝の直系の天使、つまり娘であり、すでにクビドが愛の天使としての役割を果たしていた頃に生まれた。
チェリーが生まれてまもなく、天帝から正式にミカエルに申し入れがありいいなずけとなった。
その後チェリーがいくつかの修行を終えて、クビドと同じケルビム(智天使)への昇進を期に正式に妻となった。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#11 愛の天使クビド(リオールと対の天使)


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#12へ続く
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最初から#1は
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