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トンニャン#12 愛の天使クビド(リオールと対の天使)

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「クビドの巻」のような意味。話の位置は、前回の「リオールの巻」の続きです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「それ、間違いないの?」
「ミカエル様が会ったそうだ。
わたしも彼に会ったことがあるのだが、思えばよく覚えていない」

「私なんて、リオールと話したわ。
コーラがルシファーと決別してリオールを選んだ時、私達、トンニャンとコーラは、同じハイスクールに、人間達と一緒に通っていたし、最後の二年間は、三人はルームメイトだったのよ。
だから、あのいきさつは、よく知っているわ。
どうしてかしら、リオールがクビドと似ているなんて、思いもつかなかったわ」
「それがルシファーの力で、わからないようになっていたらしい。それから・・・」

クビドは言葉を濁し、考え込むようにいつもの自分のお気に入りの椅子に座った。
この椅子も雲で出来ており、父のミカエル同様、クビドは雲で作ったものを好んで使っていた。
「それから、何?」
「変な事を言うんだ。
生まれた時からミカエル様と呼んでいたのか?とか、ウェヌス様と呼んでいたのか?とか」
「そう。天使の世界は階級があり、上の者に対しては親子といえども、確かに、名前で呼ぶわね。
でも・・・私は、生まれた時から『おとうさま』『おかあさま』と呼んでいるわ、今でも」

「チェリーは特別だよ。一番かわいがられて育ってるじゃないか。
・・・ミカエル様とルシファーの事は知っているだろう?」
「ええ」
「ミカエル様は、リオールがルシファーを『父上』と呼んでいたことが気にかかるらしい」
「でも、コーラをルシファーから奪った時から、あの親子関係は破綻してるようにも見えるけど。
リオールもコーラを正式な妻として、独立してるしね」

クビドはチェリーの入れてくれたハーブティーに口をつけた。
「いい香だ。カモミールだね」
「そうでしょ?
手作りよ。ウェヌス様のお庭からいただいて、私が干して作ったの」

「チェリー、きみに頼めるかな?」
「え?」
クビドは天井を見上げて、そのままそっと周りを見回した。
「聞かれてるわよ、全部」
「やっぱり」
「仕方ないわ。私達は生まれた時から、全てを見られて暮らしているの。
何も秘密は作れないし、天使の掟は厳しいから、小さな理由で、堕天使になる者も多い。それが、この天上界」

チェリーはクリスタルの球体を手にし、クビドに見せた。
「私が人間界に行ってから何千年か時が過ぎたわ。これを見て」
クビドは言われるままにクリスタルを覗きこんだ。まじめそうな少女が本を読んでいる。

「この子はね、友達だった、アン・バスカントと、ネッド・グラウンドの子孫なの。アンによく似てるわ。それからこの子」
次に小さないたずら盛りの男の子が走っているのが見えた。
「この子はトム・クワイエットと、トーニ・バロンの子孫よ。トムに似ているけど、性格はおてんばだったトーニそっくり。
それから、この少女はボビーとビリー、グレープ兄弟の、兄ボビーとエミリー・パストの子孫。エミリーに似て勝気そうよ。
エレン・ピースと結婚して、ピース家に養子に入った弟のビリーの子孫はこの子。男の子だけど、エレンに似て美少年よ。
エレンの双子の姉妹、ルーシー・エイビスとフィリップス・セザールの子孫は・・・」

「みんなわかるよ。わたしが矢を射て、恋人同士にした者達だ」
「みんな、いい子ばっかり。私の大切な友達の子孫達」
「・・・彼らを救いたいんだね。でも、ノアは一人だ。
助けられるのは、ノアの親族に限られる」
「誰がノアなの?」
「わからない・・・」

続く
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トンニャン#12 愛の天使クビド(リオールと対の天使)


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#13へ続く
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