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トンニャン過去編#40 ルーシー・エイビス(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。話の位置は「エミリーパスト」次。「ルーシーの巻」のような意です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「何の権利があって、そんなことするの?死なせてよ。もう、私、ひとりなんだから!」
「ルーシー!」
突然、チェリーがルーシーの頬を叩いた。
「おかあさんは、そんな事、望んでやしない。
ルーシーに生きてほしいから、ひとりになっても生きて欲しいから、本当の両親の事を打ち明けたのよ」

「・・・こんなに近くにいて?目の前にいて?何故今までだまってたの?」
「それは・・・きっと、ルーシーを愛していたからだわ」
「愛・・・してた?」
「そうよ。もし、本当の事を言えば、ルーシーがいなくなってしまうと、思ったからよ」
「私がいなくなると?」
 
「ルーシー、小さい時はここに住んでなかったんでしょう?」
ルーシーは、少し落ち着いてきたのか、軽くうなずきながら、腰を落とした。
「えぇ、そうよ。スコットランドにいたの。小さい時は、これでも裕福だったのよ。
でも、父が事業に失敗して、自殺したのよ。
それで、母と二人で、ロンドンの近くに越してきたの。

でも、母は、私を育てる為にずい分無理をして。それがたたって病気になってしまったの」
「おかあさんが、最後に言った言葉、覚えてる?」
「え・・・えぇ、でも信じられなくて」
「そうよね。それは驚くわ。それに、何か、証拠があれば・・・。
だけど、今すぐじゃなくても、いずれ、真実がわかるわ」
「真実?」
「そう、真実」
 
 
 
「トンニャン、泊まってくれるなんて嬉しい」
「エレンのベッドって大きいわね。ダブル?」
「そうなの。一人じゃ広すぎるでしょう?だから、今日は嬉しい。トンニャンと二人で、同じベッドで眠れるなんて」
トンニャンは、エレンの部屋のシャワーを借りて、さらにエレンの希少なパジャマを着ていた。エレンはほとんどネグリジェで、パジャマは一つしかもっていなかったのだ。
 
「エレンは、この町の生まれ?」
「いいえ、違うわ。覚えてないんだけど、どうも、私が生まれてすぐに、引っ越して来たみたい」
「みたい?」
「そう、なの」
「みたいって?」
「覚えてないのよ。どこなのか。父も母も、何故か教えてくれないのよね」
「そう・・・」

 
 
「ルーシー、本当の両親の事は、おいおい考えていきましょう。私、しばらく、このアパートにいるわ」
チェリーはルーシーを連れて、ルーシーのアパートに帰っていた。
「チェリー、どうしてそんなに私に親切にしてくれるの?」
チェリーは微笑んだ。
「言ったでしょう?あなたのお友達になりたいって」
 二〇〇七年平成十九年七月十六日(月)午前三時(原文一九七六年十一月)

続く
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トンニャン過去編#40 ルーシー・エイビス(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズ、「魔女裁判長リリス」の次は、書籍「炎の巫女/
阿修羅王」の「阿修羅王(全6話)」の前編3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」と続きます。もしもnoteに発表すれば、1話が5回、3週分となります。続きを3週分、空けて。そしてその間、トンニャン過去編を続けて発表します。

【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

次回トンニャン過去編#41 エレン・ピースへ続く

前回トンニャン過去編#39 ルーシー・エイビスこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nbcdba61755d0

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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