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アスタロト公爵#15 ルキフェル第五軍団中将マルコシアス

※この物語は 「阿修羅王」本編より 悪魔の三大実力者のひとり、アスタロト公爵の作品を抜粋しています。特定の宗教とは 何の関係も無いフィクションです。 

「それが命の代償。
私に仕掛けさせたサルガタナスも、早晩私の手に落ちるわ。
いいえ、ルキフェルの軍団は、いずれすべて手に入れるつもりよ」
サーティはやっとアスタロトの方に、顔を向けた。

「西の副王ルキフェル、アスタロト公爵。東のハエの魔王ベールゼブブ。
西は、私が自由に出来る日も近いわね」
「おまえ、まさかそのために・・・」
サーティがアスタロトを見て、微笑んだ。

「ではひとつ聞きたい。わたしがリオールの秘密を知っていると、何故わかった?」
サーティはゆるやかな巻き毛にふれると、それをすくように指を入れた。

「ルシファーは私達二人に力を分け与えた。
リオールには力と統率力を、私には頭脳と何ものをも見通せる目を。
生まれた瞬間から、私はすべてが見えた。だから生まれた時から、リリスが母親ではないと、知っていたわ」
「では、見えたものをルシファー様に報告していたというのか?」
「えぇ、そうよ。ルシファーにとって必要と判断したものだけね」

「・・・さっきからルシファー様を呼び捨てしているが、おまえはいつから親を名前で呼ぶようになったんだ?わたしの記憶では・・・」
「本人達と公の場では、きちんと『おとうさま』『おかあさま』と呼んでいるわ。リリスは、私とリオールを我が子と信じているし」

アスタロトは顔をしかめた。
「気に入らないな。生んでくれた親を呼び捨てするなんて。
聞いていて不愉快だ」
「生んで欲しいと頼んだ覚えはないわ」
サーティの瞳が暗く澱み、目を落とした。

「リリスが妊娠した時、ルシファーには男の子が生まれるとわかっていたの。自分で男の子を作ったから。
・・・リリスはリオールが生まれると、自分の跡取りとしての女の子を欲しがったわ。その時ルシファーに新しい考えが浮かんだの。そして私を作った。
あなたにわかる?無邪気に母に甘える兄を見ながら、すべてがわかっていて、ずっと自分を欺いてきた私の気持ちが!」
サーティは、両手を強く合わせて震える指を自ら押さえた。
「ルシファーも、リリスも、勝手に私を作っておいて利用してるだけ。
あんな奴ら、親じゃないわ」

話を聞くアスタロトは、ずっと渋い顔をしている。
「アスタロト、損はさせないわ。あなたには、ベールゼブブは殺せない。
でも私なら、ベールゼブブの首も落とせるわ」
それからおもむろに顔を上げると、今度はアスタロトの傍に立っているリジュに話しかけた。
「でもね、リジュ。あなたにだけは悪いと思っているの。
決してあなたを傷つけようと思ってるわけじゃないのよ。
今まで通り、アスタロトの一番の想い人でいてちょうだい。私はこの城に住むつもりはないから」


マルコシアスはサーティとアスタロトの会話を聞きながら、ただ立ち尽くしていた。
・ ・・・俺は何だってこんな所にいるんだ?なんで、こんな事になっちまったんだろう・・・。
二〇〇七年平成十九年三月三十一日(土)

ありがとうございましたm(__)m

アスタロト公爵#15 ルキフェル第五軍団中将マルコシアス


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