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トンニャン#50 大天使ラファエル

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ラファエルの巻」のような意。話の位置は前回の「アポロンの巻」の次。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「そうして、わたしが地に堕としました。
でも、今まで何人もの天使を堕としましたが、ルシファー以外で、あれほどの強大な力を持った堕天使はいませんね。
まさか魔界において、夜にはルシファーをも凌駕するほどの悪魔になるとは。天上界では、最下級のエンジェルスだったのに」ラファエルはフッと皮肉な笑いを浮かべると、まだ顔を伏せているアポロンに目を移した。

「知っていますか?魔界の半分は堕天使ではないか、と言われるほど、堕天使は多いのです。あの三大実力者とて、例外ではない。
ご存知ですよね?アスタロトとベールゼブブのことは」
アポロンは、ラファエルの言葉が聞こえているのか、じっと顔を伏せて動こうとしない。
「アポロン?アポロン、大丈夫ですか?」

放心状態だな。しかし、何故今頃、あんな昔の事を。しかも、わざわざ聞きに来るなんて。
ラファエルはいぶかりながら、やっとさめたレモングラスを口に運んだ。

しばらくして、アポロンは我に返ったように顔をあげた。そして、両の手の平で頭を抱えるようにして、テーブルにひじをついた。
ラファエルが濡れタオルを持ってきて、アポロンの手にふれさせると、アポロンは礼をいうように無言で頷きながら、それを受け取った。

「・・・そろそろ失礼します。急に来て、時間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした」
落ち着いてくると、アポロンは早々に帰ろうとした。ここに来た目的がもう終わったと言わんばかりに聞こえた。

聞きたい事は、ブラックエンジェルの事だけだったのか・・・。

「アポロン、飛んで帰るのでしょう?そのままバルコニーからどうぞ」
「そんな、それはあまりに失礼だ。ちゃんと入って来た入り口から出ますよ」
「そう、言わずに。ミカエル達も、時々突然バルコニーから現れる事もあるんですよ」
ラファエルは、ためらうアポロンをバルコニーに連れ出した。

「入り口を出れば、すぐにシールドからはずれてしまいます。
でも、バルコニー上空は、この城の高さと同じ範囲のシールドの中にあります」
「それは、どういう?」
「いえ、何でもありません。では気をつけて。」

アポロンは言われるままにラファエルと別れの挨拶をかわし、ラファエルに背を向けて飛び立とうとした。
その瞬間だった。ラファエルは、宙に浮かんでゆくアポロンの背中に向かって声を上げた。

「ブラックエンジェルが堕天使となってから、わたしの部下達があらゆる手段を使って、子供の父親を探し出しました。
でも、真実がわかった時、わたしは、この件に関わったすべての者の記憶を奪いました。
知っているのは、わたしだけ。四大天使にも漏らしていない。
すべての終末の日まで、この秘密を持って行きます」
原作 二〇〇六年平成十八年十月二十三日(月)
改訂 二〇一〇年平成二十二年三月十一日(木)
(3.11のちょうど1年前に書いたとは、ちょっと驚き・・・)

トンニャン#50 大天使ラファエル

※「ラファエルの巻」の次は、
「アスタロト公爵」編の
「ルキフェル第五軍団司令官中将 マルコシアスの巻」 〉「悪魔皇女サ―ティ」と続きます。
さらにその次は、書籍収録「阿修羅王」編の4~6話
「ゾウの神様ガネーシャ」 〉「破壊神シヴァ」 〉「最高神ヴィシュヌ」と続きます。
その続きがまた、「アスタロト公爵編」の 〉「ハエの魔王ベールゼブブ」です。
この「ラファエルの巻」の後は六話(六週)お休みして、「トンニャン過去編」をアップします。
「阿修羅王」は」書籍で。
「アスタロト公爵」トンニャンシリーズマガジンから
https://note.com/mizukiasuka/m/mf04f309d9dfc

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャンが全部読めるマガジンはこちら
https://note.com/mizukiasuka/m/mf04f309d9dfc

次回トンニャン#51クビドとリオールへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n16f0fb8ce801

前回トンニャン#49 大天使ラファエルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n8df9310de36a

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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