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アスタロト公爵#12ルキフェル第五軍団中将マルコシアス

※この物語は 「阿修羅王」本編より 悪魔の三大実力者のひとり、アスタロト公爵の作品を抜粋しています。特定の宗教とは 何の関係も無いフィクションです。 

「襲ったのか?マルコシアス、正気か?
ルシファー様の娘に手を出すなんて、命がいくつあっても足りないだろう?!」
 マルコシアスは舌打ちをしながら、アスタロトに背を向けた。

 「・・・サルガタナスと賭けをしたんだ。」
 サルガタナスとは、ルキフェル第三軍団・大将サルガタナス。
七十二人の魔王の一人で、三大実力者に最も近い力を持ち、魔界ではアスタロトとも親しい部類に入る。
 
「あいつ、この俺を臆病者だと言いやがった。
俺だって七十二人の魔王の一人だ。
なのに、あいつは俺が、三大実力者の足元にも及ばない、ただ中将という地位にしがみついている臆病者だと言いやがったんだ。
アスタロト、おまえなら、そう言われたらどうする?」
 「どうするって・・・。おまえ、サルガタナスにからかわれただけじゃないのか?」
 「やっぱりそう思うか?」
 「わかっていたのか?」
 「・・・いや、サーティに言われて、そうかもしれないと思った」

***

 一瞬の後、サーティは突然現れた黒い影に組み敷かれていた。流れる血は、すでに白いドレスの袖口を赤く濡らしていた。
サーティを襲ったのは、まさに狼。犬のように舌をたらし、その鋭い爪のある獣の前足でサーティの白いドレスに手をかけた。
つつっと爪が白いドレスの胸を走る。裂けた白いドレスの生地が、風に吹かれてまくれそうになる。
狼・・・マルコシアスが、その白い生地に指をかけた時だった。
 
「うっ!!」
 マルコシアスは視界を失って目を両手で押さえたまま転げまわった。
 「何が起きたのか、わからないわよね?マルコシアス」
 マルコシアスは耳を疑った。その声はサーティなのか?いや、サーティ以外にここには誰もいない。
 「あなたの目をつぶしたのは、私の血よ。あなたが、この胸に手をかけようとしたから、指の血を弾いただけ。
でも、ただの血じゃないわ。たっぷり毒が仕込んであるの。もう、見えないわね」

 サーティが毒をあやつる?そんな力があったのか?
ルシファーとリリスの娘というだけで兄のリオールに比べ影が薄く、いつも静かにリリスの後ろに寄り添っているだけの娘。
魔女裁判長を約束されているのは知っているが、悪魔にしてはおとなしく、しとやかなお姫様というイメージしかない。
ルシファーの娘でなかったら、とっくに悪魔達の餌食になっていたに違いない。そう・・・信じてきた。

 「ねえ、マルコシアス。どうして私を襲おうなんて、考えたの?理由によっては、その目、また見えるようにしてあげてもいいわよ。言ってごらんなさい」

***


 「それで、サルガタナスの事を話したのか?」
 「あぁ、あいつに

『臆病者でなければ、ルシファー様の娘を手に入れてみろ。
あわよくば、ルシファー様の娘婿になれるぞ』

と言われた事をな」

ありがとうございましたm(__)m

アスタロト公爵#12ルキフェル第五軍団中将マルコシアス


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#13へ続く
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