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元祖 巴の龍#7(地図付き)

これより時は少しさかのぼり、北燕山より西の来良(らいら)の地。

目隠しされ、兵衛はちょっと驚いた。
だな」
 すっと手が離れ、横にぷーっとふくれた葵の顔が覗き込む。

 「なあんだ、つまらない」
 「ほかにいないだろう、こんな真似するのは」

 葵はひょいと跳ねて木刀を持った。
 「さあ来い。勝負だ!」
 兵衛は笑いながらゆらりと体を動かすと、起き上がって手元の長い杖を拾った。

「えい!」
 正面から葵が打ち込んできた。ひらりと躱し、兵衛はツイと枝先を振り下ろし、葵の鼻先にひたりと止めた。

「あぁあ、負けた負けた」
 葵は木刀を投げつけて逃げて行った。

 ふと気がつくと、後ろに洸綱(たけつな)が立っていた。
 「義父上(ちちうえ)
 兵衛は振り向いた。

「まったく困ったものだ」
 洸綱は葵の去って行った方を見つめながら微笑んだ。
 「だが、おまえの母・桔梗に似ているあの妹は葵のように明るい娘だった」

 「母上に?」
 洸綱はうなずいた。
男勝りで太刀の腕も男顔負けだった。だが、それが災いして、わしは自分の妹をいくさに巻き込んでしまった。

親子四人、隠れ里で静かに暮らしていたものを探し出し、再び新城を取り戻すべく、三つ口定継に挑んだのだ。

だがそれも、この有り様だ。おまえは母とも父とも弟とも別れなければならなかった。
・・・兵衛、恨んでいるか」

兵衛は首を振った。
「いいえ、わたしは義父上に慈しみ育てていただきました。
葵のことも実の妹と思っております

続く
ありがとうございましたm(__)m

地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)

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そして、またどこかの時代で


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