巴の龍(ともえのりゅう)#14
最初に着替えさせた時から 気づいていたことだ。
しかし、菊葉(きくは)のふところから、
桔梗(ききょう)に作ってやった鍔(つば・刀の鍔)を
見つけた時、事情がわかるまで、大悟(だいご)には話すまい、と決めていた。
「生まれた時に男では殺されると思い、母が偽ったのです。
十三年間、女として育てられました。
しかし、母はこれ以上 城にいれば 必ず男とばれる時が来る。
その前に ひそかに わたしを逃がしたのです。
その鍔は もし身内の誰かに生きてめぐり逢えた時のために、
母が別れ際に・・・。」
丈之介(じょうのすけ)は再び鍔を見つめると
しっかりとにぎりなおした。
ガタガタ戸の開く音がして大悟が帰ってきた。
丈之介は振り返って すぐに座るよう示唆しようとしたが、
大悟の頬に一文字の傷がつき
血が流れているのに気づいた。
「大悟、その傷は?」
大悟は横を向いて座り、
「初めて太刀を交えた。先に矢で相手に怪我させてしまったから・・・」
と ぼそぼそ言った。
「何者だ?」
「わからない。どこかへ行ってしまった」
丈之介は少し考えたが、今は菊葉のことが先決だと思いあたった。
「大悟、この鍔を見よ」
大悟は鍔を手にとって見た。
「これは わしが桔梗に作ったもの。この菊葉が持っていた。
驚くなよ。この子は 先のいくさの後、桔梗が生んだ わしの子なのだ。」
「え・・・じゃあ 母は生きているのか。それに妹・・・」
大悟は妹と思った瞬間、気持ちが沈んでいくのを感じた。
だが それも 大悟には何故か わからない。
「いや、妹というのでは・・・」
丈之介が言いかけた時、突然小屋の中で火の手が上がった。
丈之介は自分の太刀をつかみ、
菊葉は急いで母からもらった鍔をふところにしまう。
そして 大悟は、すばやく小窓から外を見た。
巴の龍#14
ありがとうございました(●^o^●)
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巴の龍#15へ続く
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