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元祖 巴の龍#14

菊之介と大悟は村はずれの小屋のような家の前に来ていた。あまりにみすぼらしいこの小屋は、かつての大悟の家に似ていた

「なんで俺はここまで来たのだろう」
大悟は自問していた。この弟に会ってから、振り回されっぱなしではないか。

 少年が拒んでも菊之介は諦めようとしなかった。それどころか大悟を振り払い、少年の後をつけたのだ。
またそれに、のこのこついてくる大悟も大悟であった。

 少年は家の前で振り返った。
 「あなたたち、なぜついてくる
 菊之介は飛び出してまた少年に頭を下げた。

 「わたしにカンフーを教えてください
 少年はふうとため息をついた。

 「カンフー、甘くない。言ったはず。この国の人、無理、皆、弱い
 弱いと言われて口を開いたのは、菊之介ではなく大悟の方だった。

 「ほう、聞き捨てならないね。ではもし俺がおまえに勝ったら、菊之介にカンフーとやらを教えてくれるか」
 「無駄、戦い、意味ない
 大悟はせせら笑った。

 「やはりはったりか。こんないかさまに付き合ってられるか。帰るぞ」
 大悟が菊之介を引っ張って帰ろうとする。
 「待て、いかさま、ない。勝負する
 少年が顔色を変えた。
 
少年と大悟は、少年の家の前で対峙していた。するりと大悟が太刀を抜く。
「兄上、斬ってはなりませぬ」

 菊之介は気が気ではない。
少年は片足を上げ右手を前に左手を胸の近くにかまえ、ひょうと息を吐く。

大悟はじりじりと間合いを詰め、機を見て太刀を振り上げた。
ひらりひらりと少年は大悟の太刀を躱してゆく
大悟は少しずつ息切れしてきた。

体力には自信のある大悟だった。まして少年を斬る気など毛頭なく、ただ生意気な子供を懲らしめてやろうと思っただけだった。
ところがどうだ。こちらは顎を上げているのに、少年は汗ひとつかいていない
菊之介、やむをえぬ。本気でいくぞ

続く
ありがとうございましたm(__)m

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そして、またどこかの時代で

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