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ある独白#22

今から四十六年前耀子は四歳だった。

母は二人目の子を宿し出産したが、ひどい難産で

男の子出産後、間もなく他界した。

子供も弱弱しく死産でなかったのが不思議なくらいだった。

医師は延命治療を施そうとしたが、

葛城博士は妻とともに看取りたいと希望し、

その日のうちに自宅に連れ帰った。

子供は竜次と名づけたが、やはり何日と持たなかった。

まもなく妻とともに火葬し、妻とともに葬った

しかし、医師には竜次は生きている、と嘘をつき

誕生後ギリギリで出生届を出した。

医師は竜次に会わせてほしいと言ったが、

葛城博士はかたくなに拒んだ。

その日から葛城博士は、もう一度竜次に会うため

研究を始めた。

保健所からの通知や学校からの入学通知を

ことごとく無視した。

怪しんで訪ねてくる者を追い返し、

ただひたすら研究に打ち込んだ。

それが耀子には自分は愛されていないと信じさせ、

十二歳で家を出る決心をさせた。

それから十年耀子が大学を卒業する頃

RP7型ロボット・リュージが完成した。

葛城博士はすぐにリュージに大検を取得させ、

葛城竜次として大学に入学させた。

「パパは、死んだ竜次を生き返らせたかったの?」

耀子は真実にそれほど驚くこともなかった。

半分は想像に近かったからだ。

「初めはそうだった。

しかし、いつか研究者としての目標になった。

そのため、耀子にはずいぶんさみしい思いをさせたな。

すまなかった」

「いいえ、パパ。私はパパから竜次をもらった。それだけで・・・」

そこまで言うと、葛城博士が、目を大きく目を見開いて

耀子の後ろに目をむけた。

耀子も振り返って見て、今度は驚いた。

「博士、成功ですか?」

竜次、大成功だ。耀子、おまえは気に入ってくれたか?」

そこに立っていたのは、深くしわをたたえ、

髪も白髪になった竜次だった。

「どうして?」

耀子と同じように年を取りたいと、葛城博士にお願いして

表面を年をとったように変化させるマシンを作ってもらたんだ」

葛城博士は自分の最後の仕事に満足したようだった。

耀子、これで竜次と一緒に年をとっていけるな」

「パパ・・・」

耀子は父の手をとって握った。

葛城博士は目をつぶり、だんだん冷たくなっていった。

竜次耀子を後ろから抱くように手をまわし、

一緒に葛城博士の手を握った。

冷たくなった葛城博士を見つめたまま、

耀子竜次に言った。

「今日からあなたは私の。死ぬまで一緒にいてね」

竜次は抱いている腕に力をこめた。

ありがとうございました_(._.)_

ある独白#22我が永遠の鉄腕アトムに捧ぐ


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かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

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#23へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nc9a5f5f96759

#1最初からは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb5ab031cb177

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