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トンニャン#15 愛の天使クビド(リオールと対の天使)

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「クビドの巻」のような意味。話の位置は、前回の「リオールの巻」の続きです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
また、#14・#15は、軽くBL表現があります。苦手な方はスルーしてくださいませm(__)m

 少しの間、本当に気を失ったリオールを、クビドは微笑みながら見守った。やがてリオールは目覚めて笑みを浮かべた。

 「夢ではなかったんだな」
 「夢なものか、リオール。もうわたし達を誰も引き離せない」
 「どうしてだろう。涙が後から後から流れ出てきて止まらない。生まれてから、一度も泣いた事などないのに」

 クビドは同じ色をしたリオールの緩やかな巻き毛を何度も、撫でている。
「次はいつ会える?リオール」
「次?次なんて・・・わからない。
それに、ここから出る前に、この天使の波動を封印すると、トンニャンが言っていた。また、悪魔にもどってしまう」
「大丈夫。リオールは、わたしにふれれば、すぐに今の姿になれる。いや、これが本当の姿なのだから、戻れる、と言ったほうがいいかな」

「でも・・・こんな事を続けていいのか?天使と悪魔が。それに、チェリーやコーラもいるし・・・」
クビドは、そっとリオールの胸にふれた。
「自分が一番愛している者が見えるか?」
リオールは哀しい顔をした。
「ずっと、コーラだけだったのに。魔界の誰とも、人間とさえ契る気にはなれなかったのに」

「リオールは、わたしより純粋だ。わたしはチェリーと婚約する前に人間のプシュケーと契った。
チェリーは人間界で、その神話を読んだが、何も言わなかった。わたしの心の奥底には、今の今まで、ずっとプシュケーがいた。
でも、今は違う」

クビドがリオールの手を取って、今度は自分の胸にふれさせた。
「これでも、もう会わないなんて言えるのか?」
そのままリオールは、またクビドの腕の中にいた。

「でも、時々会って、それから、それから、先はあるのか?」
「先?未来などない。天使と悪魔が愛しあって暮らせる場所など、この世界のどこにも存在しない」
「では、辛いだけでは・・・」
「次に会うのが戦場でもいいのか?」

リオールは、クビドに言われて、現実の状況を思い出した。
「いずれ、戦場で剣を交えるかもしれない。
わたしはその直前まで、リオールを離さない。
それともリオールは、このまま別れて、次には血を流し合う事を望むのか?」
リオールは身体を起こし、何度も首を横に振った。

「もうだめだ。もう拒めない。それどころか、今別れるのすら辛い。
別の空間で、別の人生を歩んでいる事がこんなにも辛いなんて」
「大丈夫、うまくやれる。この球体はトンニャンが作ったものだ。
わたしはここまではうまく作れないが、リオールと力を合わせれば、きっとこのくらいのシールドを張る事が出来る」

「そろそろ皆が、戻る頃ではないのか」
後ろを振り向いたリオールに、クビドはそのまま後ろから抱きすくめ、肩から首にかけて舌を這わせた。
「だめだ、皆が帰ってくる」
今だ涙の止まらないリオールの不安な声も、クビドには愛のささやきにしか聞こえなかった。
二〇〇六年平成十八年八月五日(土)午後

ありがとうございましたm(__)m
オマケ
子供の時(過去編1970年代)には、リオールとクビド(キューピット)が対の天使だなんていう設定は無かった。
「対の天使」という言葉自体、(2006年頃、作品を再開した時)私が作ったものだし、この作品の「ミカエルの巻」で、初めて思いついた言葉です。
この二人が、こういう関係だったとは、書いてみて驚いた私でした

トンニャン#15 愛の天使クビド(リオールと対の天使)


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最初から#1は
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