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トンニャン#43 太陽神アポロン

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「アポロンの巻」のような意。話の位置は前回の「リリスの巻」の次、書籍化した「阿修羅王」の1~3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」(インドの神様編)の続きとなります。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

チェリーはアポロンを促して、バルコニーから部屋にもどった。
「やっぱり温かいレモングラスはおいしいわ」
「外は寒かったか?」
「少しね」

「すごく昔の事だけど、おにいさまは、まだ歩けなかった私を抱いて、よく散歩に連れて行ってくれたわよね」
「そんな事もあったな。小さな妹が可愛くて仕方がなかったからな。」
アポロンは本人を目の前にしても、チェリーへの気持ちを隠そうともしない。

「私ね、覚えているのよ」
「何を?」
「その散歩の時、いつもエンジェルスと会っていたでしょう?」
「エンジェルス?・・・そりゃあ、歩いていれば、誰かとすれ違う事もあるだろう。エンジェルスはたくさんいるんだぞ。
毎回エンジェルスとすれ違ったとしても、いつも同じ相手じゃあるまいし」
チェリーはレモングラスティーのカップを手の平において、その手を温めるようにふれている。
「いいえ、いつも同じエンジェルスだったわ。
長い黒髪の、透き通るような白い肌をした綺麗なエンジェルスだった。
翼が一枚しかなかったから、後からエンジェルスとわかったの」

「・・・そう、だったかな?」
「でも、わたしが歩けるようになったら、もうそのエンジェルスと会う事はなかったわ。だから、ずっと忘れていたの」
アポロンは、黙ってレモングラスを飲んでいる。
「あのエンジェルスはどこへ行ってしまったの?あれから、一度も見かけた事がないわ」
「・・・さあな。誰かも覚えていないから、わたしにもわからないな」

*****

「アポロン様」
美しい黒髪のエンジェルス。チェリーとの散歩でよく出会い、何度となく挨拶を交わした。
それがいつか、交わす言葉がふえ、立ち止って話す事も多くなった。
「アポロン様」
透き通るような白い肌と、鳥が歌うような美しい声。ほんの短い時を一緒に過ごしたエンジェルス。
遠い遠い思い出。

*****

チェリーは、少し斜めを向いた。
「私が人間界で、魔女コーラとトンニャンと友達になった事を知っているわよね」
「あぁ、知っている。悪魔と友達になったなんて、こうして声に出して言っているが、本来許されない事なんだぞ」

「この天上界では、皆、見られている、聞かれているんだぞ。おまえが、天帝の娘だから、誰も手を出さない。それに甘えてはいないか?」
「おにいさま」
「チェリー、大切な妹だから言う。おまえに対して誰も言えないから言うんだ。
天上界と魔界の対立は、今が始まった事ではない。天帝の娘であるチェリーが、事もあろうに、今では悪魔皇太子妃となったコーラと、友達だなどと、もう二度と言ってはいけない」
チェリーは、アポロンに言われて答える事が出来ず、しばし黙った。
アポロンはチェリーの手からカップを取り、もう一杯レモングラスを注いだ。そして、チェリーにそのお茶を勧めた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#43 太陽神アポロン

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャンが全部読めるマガジンはこちら
https://note.com/mizukiasuka/m/mf04f309d9dfc

次回トンニャン#44 太陽神アポロンへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nbd467ba8a6ea

前回トンニャン#42 太陽神アポロンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb1fa00017576

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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