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トンニャン過去編#78 ピエール・オーギュスタン(原題「ファイヤーバード」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「アリスの巻」の次。「ピエールの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

チェリーは思い余って、トンニャンに相談した。
「今日、五年のへスター・カエサルに呼び止められたの」
へスターは、以前からニコラスが好きで、四年の頃から二人は付き合い始めたという。ところが、最近急にニコラスが冷たくなったというのだ。しかし、恋の相談だけなら、知り合いでもない六年のチェリーに話すはずがない。
「ニコラスが・・・コーラを好きらしい、と言うのよ」
「コーラを、ね。」
それで、チェリーに、コーラの気持ちを聞いて欲しいというのだ。
「それだけだったらいいのよ。へスターがね」
別れ際にヘスターが言った事、それは・・・。
 
「ニコラス、この頃悪魔とか、魔女とかこってて調べてたみたい。魔方陣がどうの・・・とか言ってたの。だから、もしかしたら、コーラ・デビルのデビルというのに、興味を持っただけかもしれないけれど。そう、思いたいけど」
 
「って、ヘスターが言うの。どう思う?」
トンニャンはフッと息をついた。
「呼び出してしまったのね。魔方陣から」
「呼び出したって、悪魔を?」
トンニャンは首を動かしながら、腕を組む。
「とりつかれたかな。アリスについで、次々ね」
「え?」
 
「でも・・・今度の相手はちょっとやっかいかも」
チェリーはトンニャンの言葉を聞いて、にわかに不安になってきた。
「コーラに言うべきよね?トンニャン」
「でも、今日の状態じゃ、耳に入らないわよ、きっと」
トンニャンには、コーラがニコラスと会った事がわかっていた。だが、あえてチェリーには言わなかった。
 
 
 
翌日コーラは一人で、早めのスクールバスで学校に行った。
「やあ、コーラ」
昨日のニコラスだ。コーラが無視して行こうとすると、ニコラスはコーラの腕をつかんだ。
「おはよう、くらい、言ってくれてもいいんじゃないの?」
コーラは少しためらったが、
「おはよう」
と、低く言った。
「もっと、優しく言ってほしいな。それに名前も」
コーラはあきれてものが言えない。なんとずうずうしいのだろう。そういえば誰かから、ニコラスはかなり優秀で、秀才だと聞いたことがあった。これでも秀才なのか。それとも秀才だから、好き勝手してもいい、とでも思っているのか。
「おはよう。ニコラス」
コーラが言葉を変えてやっと挨拶する。
「ニコラスなんて、みずくさいよ。『ニコ』でいいって言ったろ」
コーラは、もう聞いていられなくなった。ニコラスの手を振り切って駆け出した。
 
「あいつは・・・あいつは、何者なんだ?」
悪魔ではないはず。何故なら、悪魔が発する特有の気配を感じない。ならばいったい?
動揺しているコーラに、ニコラスの正体を見破る力など消えうせていた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#78 ピエール・オーギュスタン(原題「ファイヤーバード」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

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https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
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次回トンニャン過去編#79 ピエール・オーギュスタンへ続く
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前回トンニャン過去編#77 ピエール・オーギュスタンはこちらから
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■トンニャン過去編#1最初から
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