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元祖 巴の龍#48

「おい待て。おまえも狼が多いと言っていたが、どうも狼の群れに付けられているようなきがする。奴らは夜行性だ。夜は危ない」
日暮れには戻りまする

菊之介は何度も汗を拭いながら少し大悟から離れた。
桐紗のことは秘密だが、それより奥手な兄とはいえ、なにやら見透かされているようで、今はそばにいたくなかった。

大木の大きな根っこの上で、菊之介はくつろいでいた。すると後ろから涼やかな風が吹いてきて、さらに耳元にふっと風が入った。
菊之介

あ……義姉上。い、いや、名前で、というのは、そのうち……
菊之介は憐れなほど、しどろもどろになっていた。桐紗はふふっと笑った

「菊之介は本当にまじめですね。そこが良いところだけど。わかりました。今日は何も言いますまい。
もうすぐ日が暮れます。はよう大悟様のところに帰りなされ

菊之介は、もう汗でぐっしょりになっていた。
桐紗がいつのまにか消えた時も、疲れ切って動く気力を失っていた。


いつのまにか菊之介は眠り込んでいたようだ。すっかり夜になっていた
「しまった。寝過ごしてしまって」

菊之介は木の根から下りようとして、大木を取り囲む無数の光に気づいた。静止したまま改めて辺りを見回すと、その光は紛れもなく狼の目、しかも群れをなしている。

菊之介は、桐紗や大悟が言っていたことを思い出した。
しかし、狼に襲われた時の対処方法は誰も教えてくれなかった。

いや、今まで大悟に何もかも頼っていて、覚えようとしなかったのかもしれない。
狼の群れはすっかり菊之介を取り囲み、しかも包囲網を少しずつ狭めてきた。

菊之介は太刀に手をかけた
今では命を守るために、人すら斬り捨てることができるようになった菊之助だった。

大悟と共に狩りもし、獲物を狙って獲ることもできるようになった。
まさに狼に囲まれている今、太刀を抜く以外この危機を脱するすべがなかった。

いよいよ狼たちが近づき、菊之介が太刀を抜こうとした時だ。
一頭の狼が菊之介に向かって歩いてきた。
その狼は彼らの頭目のようで、右目を失って独眼だった。
菊之介は半分太刀を抜きかけたまま、狼から目をそらせなかった。

続く
ありがとうございましたm(__)m


「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ


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