トンニャン過去編#48 ビリー・グレープ(原題「フェニックス」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「エレンの巻」(原題「天使チェリー」最終話)の次。「ビリーの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです
「あれ、どういうこと?」
ルーシーとフィリップを二人きりにして、チェリーはビリーとその場を抜け出してきた。
「フィリップに頼まれたんだ。ルーシーを紹介してほしいって」
「それって・・」
「そう、ずっと好きだったみたいだよ。チェリーがルーシーと仲がいいと思ったから、チャンスがあったら、紹介する約束だったんだ」
チェリーは、思わぬ事に驚きながら、いつかビリーと二人で歩いていた。そして校内を歩くうちに、二人きりである事に気づいた。
「ルーシーは、エレンと暮らしてるんだよね?」
「そうよ。お嬢様、って呼ばれてるんだって。なんか気恥ずかしいみたい。そうりゃあそうよね。まさか、自分があんなに大きなお屋敷の娘だとは、思ってないわよ」
「・・・うん。」
ビリーは少しずつ口数が少なくなっている。
二人は校内を出て、近くの喫茶店でお茶を飲んだ。
「レモングラスが好きなの?」
「えぇ、昔から」
チェリーはここでもレモングラスを飲んでいる。ビリーはコーヒーを注文し、一口飲むと、落ち着きなく目をあちこちに泳がせた。
「ところで、ボビーとエミリーはうまくいってるの?」
「え・・・あ、あぁ、いつも仲良すぎて、あてられ通しだよ。」
「そう、よかったわ」
チェリーは以前ここを去る時、クビドに頼んだ事を思い出していた。
******
「帰る前にお願いがあるの。」
「わかってるよ、きみの言いたい事は。美しい恋人達のことだろう。言わなくてもいい。誰かもわかる。ちゃんと幸せになれるように、矢を射ておくよ」
*****
「チェリー、知り合って一年にもなるのに、こうして二人きりでお茶飲むのは初めてだね」
「そう・・・だったかしら?」
ビリーはさっきから、なにかもじもじして、言いたい事が言えてないように見える。
「チェリー、あの・・・。」
ビリーは少し肩を震わせて、チェリーと向き合った。
「俺と付き合ってくれないかな?」
「付き合ってるじゃない、今」
チェリーはこともなげに言うと、レモングラスを口にした。
「そうじゃないよ。つまり・・・その・・・。ボビーとエミリーみたいに」
「え?どういう意味?」
「・・・チェリーが好きなんだ」
チェリーはレモングラスの入ったカップを思い切りテーブルに落とした。
あせって拭こうとしたティッシュは、濡れてびちゃびちゃになる。
気づいた店員がタオルを持ってかけつけ、テーブルを拭いてくれた。
「なんて、言ったの?」
落ち着いてくると、チェリーはもう一度聞いた。
「二度も言わせるの?きみが・・」
「わかった。わかったわ」
チェリーはビリーの顔の前に手をかざし、次の言葉を止めた。
「・・・ハッキリ言うわね。私、好きな人がいるの。
・・・婚約してるのよ。いずれ、その人と。
・・・でもね、それはこの学校の人じゃないから、誰も知らないわ」
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン過去編#48 ビリー・グレープ(原題「フェニックス」)
※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024
次回トンニャン過去編#49 ビリー・グレープ(原題「フェニックス」)へ続くhttps://note.com/mizukiasuka/n/nf7f63541ffa5
前回トンニャン過去編#47 ビリーグレープはこちらから
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■トンニャン過去編#1最初から
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