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トンニャン#20 悪魔皇太子妃コーラ

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「コーラの巻」のような意。話の位置は前回の「クビドの巻」の続きです。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

コーラとトンニャンは、近くの木陰で、その様子を見ていた。
「トンニャン、天使長って何?」
「いわゆる上級天使、セラフィム(熾天使)ケルビム(智天使)スローンズ(座天使)を差すようだ」

「あの、一番中心になっている天使は?」
「パワーズ(能天使)指揮官ラファエルだ。
ミカエルと同じ四大天使の一人で、スローンズ(座天使)とも言われている。
階級はミカエル同様、セラフィム(熾天使)にあたるな」

「おまえが天使長を誘惑した事は調べが付いている。
四枚も翼がある赤ん坊という事は、相手はケルビム(智天使)クラスの上級天使だろう。
まさか、セラフィム(熾天使)という事はないだろうな」
それでも、エンジェルスは決して相手の名前を言わないでいた。
しびれを切らした天使達は、エンジェルスに暴行を加え始めた。

「トンニャン、何、あれ?」
「天使の掟を破った者への仕置きは厳しい。
まして、天使長を誘惑して、自分より上級の天使を産み落とすなど、許されない事だ」

エンジェルスは、されるままになって、それでも黙って耐えていた。
やがて、長時間にわたる拷問に近い仕置きが終わる頃、エンジェルスの美しい顔も、醜く膨れ上がっていた。

「消えろ」
ラファエルが指を弾いて、エンジェルスに閃光を放った。
倒れているエンジェルスを、その閃光が輪のようになって身体全体を包み込み、その閃光の輪ごと穴があき、そのままストンと、エンジェルスは地に落ちて行った。

「ラファエル様、父親の名前を聞かなくて、よろしかったのですか?」
「あれだけ口を割らないという事は、聞いてはならない相手かもしれない。
・・・赤ん坊はどうした?」

先ほど、赤ん坊を落とした天使が報告した。
「はい。翼をすべて引きちぎり、魔界に落としましたが」
「生きているのか?まずいな。殺しておくべきであったか」

「では、探し出しますか?」
「いや、四枚も翼を持っていた赤ん坊だ。
もうすでに自分の身を守るために、悪魔に成りすましているかも知れない。
さらに知恵があれば、自分の記憶を封印しているはずだ。
探しても無駄だろう。・・・これが、後に憂いを残さねば良いが・・・」

「・・・よく、我慢したな、コーラ」
コーラは座り込み、まだ心の整理が出来ていないようだった。
「・・・だって、行っても助けられないって、最初に言ったの、トンニャンだよね」
トンニャンは顔を曇らせたまま、黙っている。

「ブラックエンジェルが私の母親だったなんて。彼女はわかっていたのかしら?」
「魔界に落とされた時、記憶を失う堕天使も多い。
天使長誘惑の罪、というのは有名な話だが、子供がいたというのは聞いていない。もみ消されたのかもしれない」

「ねえ、ということは、私は堕天使なの?」
「そういうことになるな」
「父親は・・・誰かわからない、四枚の翼を引きちぎられた堕天使」

「おそらくラファエルの推察どおり、自分で記憶を封印したのかもしれない。
だから、簡単に読み取れなかったんだ。
ちぎられた翼の痕も、自分で見えないようにしているんだろう」

コーラは木陰からまた湖の方を見つめ、自分の落とされた雲間を探すように、ふらりと立ち上がった。
二〇〇六年平成十八年八月八日(火)

オマケ
正直に言います。これを書いた時、コーラの過去を探りたいと思いながらPCを叩き続けました。
過去の世界に行ってからのことは「指からこぼれた」としか言えません。
エンジェルスを「ブラックエンジェルよね」とコーラが言ったのを、一番驚いたのは私でした。
私は作品を映像で視るので、たまに自分でも驚く展開が待っていることがあります。
このnoteのマガジン「トンニャンシリーズ」の中に、「トンニャンシリーズとは」という、この物語が作られる裏話を書いています。
コーラは、「ふしぎなコーラ」という題名で描いた漫画で、小学生の時に描きました。
後に、十代の終わりくらいに「トム」と出逢う話として、レポート用紙に書きなぐっています。
さらにそれを、2006年頃にデータ化して縮小、抜粋したのが、このnoteにもアップした、トンニャン過去編の「トム・クワイエット」なのです。
コーラがこんなに重要なキャラクターだったとは、何十年も時が経てから気づく私でした。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#20 悪魔皇太子妃コーラ

トンニャン#21「天使チェリー」へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/ndacb9b96551e?magazine_key=mf04f309d9dfc

最初から#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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