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トンニャン#27 夜の女王 ブラックエンジェル

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ブラックエンジェルの巻」のような意。話の位置は前回の「チェリーの巻」の続きです。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「コーラ、何もなくて夜中に一人で出てくるなんて、リオールとうまくいってないのかい?」
「違うわ。そんなんじゃないの。ただ・・・。」
ブラックエンジェルは、うつむくコーラを見ていたが、また月に目を移した。

「言いたい事があるなら、お言い。私で出来ることなら、力になるよ。コーラは私の娘みたいなもんじゃないか。」
「娘・・・。」
コーラは顔を上げて、まだ月を見ているブラックエンジェルの、悪魔とは思えない白い横顔に見入った。
「実はね、聞きたい事があって来たの。」
「ほらやっぱり、何もないわけないじゃないか。それで何だい?私に聞きたい事ってさ。」

ブラックエンジェルがコーラの方に顔を向けた。
「あのね、もしかしたら聞かれたくない事かも知れないのよ。不愉快・・・だったりするかもしれない。」
「あぁ、じれったいねえ。ハッキリおしよ。悪魔皇太子妃の名が泣くよ。聞いてみなきゃ、聞かれたくないかどうかなんて、わかりゃしないじゃないか。」
「う・・・うん。」

「ブラックエンジェルは、天使だった時の事、覚えてるの?」
「天使だった時?・・・どうだろうね。ぼんやりと記憶はあるけど、それが?」
「堕天使になった理由なんだけど、天使長を、その・・・。」
「誘惑した罪。誰でも知ってるさ。ほんとの事だからさ。」
ブラックエンジェルは、立ち上がって高らかに笑った。

「そんな事聞きたかったのかい?魔界でも天上界でも、有名な話じゃないか。」
「その、誘惑した天使長の名前は?」
「名前?」
初めてブラックエンジェルに迷いの色が見えた。
「名前ね・・・。」
「相手の方が誰か、ということなんだけど。」
ブラックエンジェルは、ゆっくりと腰を下ろすと、もう一度湖の水に足を浸し、手で水面を探った。

「誰だろう?考えた事もなかった。」
「天使長だから、ケルビム(智天使)クラスよね?もしかして、セラフィム(熾天使)って事はないわよね?」

「四大天使?それはありえないさ。だって私は最下級のエンジェルスだったんだよ。挨拶する事はあっても言葉を交わすなんて。」
そこまで言って、ブラックエンジェルは頭を両手で抱え込んだ。

「痛い。頭が痛いよ。」
「大丈夫?ちょっと休んだ方が良いんじゃない?」
コーラはブラックエンジェルの身体を横にして、膝枕をした。
「誰かに膝枕してもらえるなんて、初めてかもしれないよ。」
その時ブラックエンジェルの脳裏に、一瞬自分が誰かを膝枕している映像がかすめた。

「自分で天使長を誘惑しておきながら、相手がわからないなんて、堕天使となった時に記憶が操作されたのかね。コーラ、おまえに言われるまで気づかなかったよ。」
「全然覚えていないの?」
「あぁ、顔も名前も思い出せない。」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#27 夜の女王 ブラックエンジェル

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

トンニャン#28へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n085eb3938705

トンニャン#26ブラックエンジェルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n1291fee2479a

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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