見出し画像

巴の龍(ともえのりゅう)#13

新城(しんじょう)の城の天守閣でイライラと動きまわる男がいた。

いかにも殺気立ち、憎しみを爆発させんばかりに、

悔しさが充満する空気が、今の男を象徴している。

バタバタと走る音がして、階段を登って来た者がいる。

定継様、見つかりました」

男・三つ口定継(みつくち さだつぐ)はピタリと足を止めた。

菊葉(きくは)か?間違いないか?」

登って来た家来は 深くうなずいた。

「そうか、やっと見つかったか。

おのれ菊葉め、娘と思い育ててやった恩を仇で返しおって。

して、あやつは どこに?」

北燕山(ほくえんさん)の奥深くにございます。

すでに四天王のひとり、一の将軍が手の者を連れて向かっております」

「そうか、用心に越したことはない。

あれは わしを十三年間もたぶらかした桔梗(ききょう)の子だからな。

・・・桔梗は?」

「はい、お言いつけ通り」

定継は含み笑いをしながら、北燕山の方向をながめた。

菊葉・・・。あれが死んでゆくさまを見られぬのが、

残念じゃのう」


「では、おまえは先の戦の後に生まれた

わしの子だと言うのだな

丈之介(じょうのすけ)は半信半疑だ。

「はい、母は三つ口定継に捕えられた時、

その美しさゆえに定継に 見初められたのです。

しかし、その時すでに わたしをみごもっていました。

母は わたしの命を救うため、屈辱の道を選んだのです」

桔梗は生きているのか?」

菊葉は 首を振った。

「わかりません。

先ほど父上が言われたとおり、

わたしは女では ありません」

丈之介は 大きくうなずいた。


巴の龍#13

ありがとうございました( *´艸`)

「SIRIUSの小箱」ってなあに?
過去作品・メルマガ HP/リザストはこちらから

最新作「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

巴の龍#14へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/na8918064e671

巴の龍#1 こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6785ce9c010e

もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)