ChatGPTを用いたプロンプトテクニック - 括弧"[ ]" を用いた効果的な文章作成術
頭の中にはなんとなくのアイデアがあるけれど、それをうまく言葉にするのが難しいと感じることはありませんか？あるいは、あるテーマについて書こうとしたときに、文章の構造について悩むことはありませんか？
そんなときに便利なChatGPTを用いたプロンプトテクニックがあります。それが、角括弧"[]"の活用です。
ChatGPTは、”[]”で囲んである箇所に文章を挿入するような機能が備わっています。
たとえば、次のようなプロンプトをChatGPTに入力してみます。
昔々あるところに、[キャラクター]が住んでいました。
角括弧で囲った[キャラクター]の部分へ、文脈に沿った単語を挿入した文章を生成してくれます。
昔々あるところに、[勇敢な戦士]が住んでいました。
このテクニックは、シンプルながらも非常に便利です。この記事では、その効果的な使い方について二つ紹介したいと思います。
一つ目は、"[]"を用いて文章の構造を作り、ChatGPTに詳細を追加してもらう方法です。これにより、文章の全体像を作るだけで、その具体的な文章の作成をChatGPTに助けてもらうことが可能になります。
二つ目は、既にある文章の構造を分析し、テンプレートを作成する方法です。これにより、同じ構造を持つ文章を効率的に生成することが可能になります。
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
"[]"を用いて文章の構造をつくる
まず、一つ目の方法をご紹介します。さきほどの例では、一つの文章の中でのみ[]を使いましたが、昔話によく見られる物語の構造を"[]"で示すことにより、構造に沿った物語を生成することが可能となります。
たとえば、次のようなプロンプトを与えてみます。
昔々あるところに、[キャラクター]が住んでいました。彼/彼女は毎日、[日常的な活動]をしていました。ある日、[出来事]が起こり、[キャラクター]の日常は一変しました。[キャラクター]は[解決策]を思いつき、[行動]をとりました。結果として、[結果]が起こり、[キャラクター]は[学んだ教訓]を学びました。そして、彼/彼女とその村は幸せに暮らしました。
すると、次のような「勇敢な戦士」を主人公に据えた物語が生成されます。
昔々あるところに、勇敢な戦士が住んでいました。彼は毎日、訓練を積んでいました。ある日、隣の村が魔物に襲われるという報せが届き、戦士の日常は一変しました。戦士は村人たちを守るために自ら戦うと決意し、剣を手にとりました。結果として、魔物を退治し、村人たちは再び平和な日々を送ることができました。戦士は勇気と友情の大切さを学びました。そして、彼とその村はこれからも幸せに暮らし続けました。
このテンプレートを用いて、テーマを設定して物語を生成することも可能です。たとえば、「このテンプレートを使って、関東人と関西人の典型的な性格の違いが分かる物語を作って。村上春樹風の作風にして」というように、テーマを設定して物語を生成することができます。
ChatGPTは穴埋め問題が得意
ChatGPTはこのような穴埋めタイプの問題が実はとても得意です。これは、GPTが自己教師付き学習（self-supervised learning）というプロセスを用いて訓練されているためです。自己教師付き学習では、モデルに明示的なラベルは与えられず、文章内の次の単語を予測したり、一部を隠して穴埋め問題を解くことで学習が進められます。この訓練を通じて、ChatGPTは穴埋め問題の達人として文章を生成できるようになります。受験の達人が過去問に見たことのあるパターンを瞬時に把握し、正確に回答を導くように、ChatGPTも学習した知識を利用して穴埋め問題に回答するのです。
文章の構造を分析しテンプレートを作成する
次に、"[]"を活用する二つ目の方法として、既存の文章を提示し、その構造を分析してテンプレートを作成する例を見ていきましょう。
ここでは、以前に「論理的な文章を書くパートナーとしてのChatGPTの使い方」で紹介した『桃太郎』の論文風アブストラクトをその構造分析の対象とします。
幾度もの鬼の襲来で村は疲弊し，壊滅の危機が迫っていることが問題となっている．そこで本研究では，鬼に奪われた宝物を取り戻すことを目的とし，その達成のために必要な味方を集めるためのキビ団子を用意した．その結果，得られた味方と協力して鬼を退治して宝物を取り戻した．この成果は，これを破損した村の主要設備の修復に充てることで当面は壊滅の危機を脱することが可能になるという点で重要である．
このような論文風アブストラクトを他のさまざまな物語に対して自動的に生成するためのテンプレートを作成します。
この文章の構造を分析しなさい。本文の各部を[]に置き換えて、学術論文のアブストラクトに使えるテンプレートを作成します。
(『桃太郎』の論文風アブストラクトを挿入)
すると、文章を分析し"[]"で抽象化した次のようなテンプレートが作成されます。
"[現状や問題の説明]"により、"[問題の結果]"が問題となっている。そこで本研究では、"[目的]"を達成するために、"[方法や手段]"を用意した。その結果、"[結果や成果の説明]"。この成果は、"[結果の意義や影響]"という点で重要である。"
『桃太郎』のアブストラクトの構造が抽象化され、テンプレートが作成されました。論文のアブストラクトに含めるべき要素がきちんと"[]"で抽出されています。
[現状や問題の説明]
[問題の結果]
[目的]
[方法や手段]
[結果や成果の説明]
[結果の意義や影響]
このように、何を書くべきかという抽象的な情報が明らかになること自体が、文章を書く際には非常に役立ちます。何を書くべきかが分からない場合、これまで同じ目的で書かれた文章をChatGPTに分析してもらうことで、書くのに役立つ情報が得られます。
それでは、このテンプレートを使って、『童話：シンデレラ』の論文風アブストラクトを作成してみましょう。更に精度を高めるために『桃太郎』のアブストラクトを例として提示します（One-shot promptというテクニックです）。
このテンプレートに従って、「童話：シンデレラ」のアブストラクトを書いてください。その際、「桃太郎」のアブストラクトを参考にしてください。
「桃太郎」の要約: 幾度もの鬼の襲来で村は疲弊し，壊滅の危機が迫っていることが問題となっている．そこで本研究では，鬼に奪われた宝物を取り戻すことを目的とし，その達成のために必要な味方を集めるためのキビ団子を用意した．その結果，得られた味方と協力して鬼を退治して宝物を取り戻した．この成果は，これを破損した村の主要設備の修復に充てることで当面は壊滅の危機を脱することが可能になるという点で重要である．
結果です（[]も含めて出力されました）。
シンデレラが継母と義姉から虐待を受ける[現状や問題の説明]により、彼女の幸せと自由を求める[問題の結果]が求められている。そこで本研究では、シンデレラが彼女の生活を向上させるための機会を探す[目的]を達成するために、妖精の祖母から得た魔法の助け[方法や手段]を用いた。その結果、シンデレラは王子様の舞踏会に出席し、王子様との出会いを果たした[結果や成果の説明]。この成果は、外部の助けによって個人の生活が向上する可能性を示し、心の純粋さと善良さが最終的に報われる[結果の意義や影響]という点で重要である。
いかがでしょうか。シンデレラの内容が、しっかりと論文風アブストラクトとしてまとめられました。
このように"[]"をプロンプトの中で活用することで、あらゆる文章作成をよりスムーズで効果的に進めることができます。
このプロンプトは、[insert]や[format]と呼ばれることもありますが、わたしは"Fill-In-Prompt"という名前がふさわしいのではないかと考えています。ぜひ、皆さんの日々の文章作成の仕事にも活用してみてください。
それでは、また。ciao！
▼ 参考文献
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