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ネットワークの成長を理解する数理モデル

我々の生活はさまざまな「つながり」で満たされています。友人、同僚、知り合いとのつながり、私たちが日々得る情報や知識、あるいはインターネット上で見つける記事やウェブページ間のつながりなど、これら全ては「ネットワーク」を形成しています。今回は、そんなネットワークがどのように成長し拡大するのかを理解するための数理モデルについてお話します。

「ネットワーク」って?

ネットワークは「点(ノード)」と「線(エッジ)」で表現されます。例えば、ソーシャルネットワークの場合、人がノード、人と人とのつながりがエッジになります。

Barabasi-Albert(BA)モデル:友達が多い人ほど友達が増えやすい

ネットワークの成長を説明するための一つのモデルがBarabasi-Albert(BA)モデルです。このモデルの基本的なアイディアは、「友達が多い人ほど新しい友だちができやすい」という現象を数学的に表現することです。パーティーで、みんなが話している人の周りに人々が自然と集まってくるような感じですね。

しかし、このモデルには問題点も存在します。例えば、人と人との関係の強さ(親友か、知人かなど)を表現できません。また、既存の友達同士が新たに友達になることも考慮していません。

Ubaldiモデル:既存の友人と新たな出会い

これらの問題を解決するために、Ubaldiらは新たなモデルを提案しました。Ubaldiモデルでは、既存の友人とのランチを楽しむ一方で、新たな友人との出会いも追求します。これは「今日は友人Aとランチをするけど、その時、Aに新しい友人を紹介してもらおう」というような、現実世界で起こりそうな状況をモデル化できたものです。つまり、Ubaldiモデルでは「友人の友人を通じて新たなつながりを作る」ことが重要な要素となっています。ちなみに、この友人の友人を通じて新たなつながりが増えていくことを「隣接可能空間」を通じた広がりと呼びます。

もちろん、これまでにランチにいったことのある友人であればあるほど、ランチに行く確率が多くなるという、さまざまなネットワークの性質に実際みられる「優先的選択性」という仕組みも組み込まれています。

モデルの改良:より現実に近い人間関係を表現する

私の研究室では、Ubaldiモデルをさらに洗練する試みをしています。その試みとは、友人から新たな友人を紹介してもらう際に、その友人が最近どのような人と交流しているか、頻繁に会っている人は誰かなど、よりリアルな要素を取り入れることです。

たとえば、「最近ロボット研究を始めたから、友人が最近交流しているロボット工学者を紹介してもらう」、といったことを考慮できるモデルに改良しました。これにより、新たに紹介される人物の選択がより現実的になり、それによってネットワークの成長もより現実に近くなります。

自分の運営する組織やサービスの状況を把握し施策につなげる

こうしたモデルを使ってネットワークがどのように成長しているかを理解することは、組織を運営していたり、サービスを運営していたりする人にとって有用です。たとえば、運営するサービスのユーザ活動量が減っているなと感じたとき、その減っている原因が、「既存ユーザ間の交流の停滞」なのか、「新規ユーザとの交流が生まれていないから」なのか、といったことが把握できるようになります。さらに、どのような人々を通じて新たなつながりが生まれているかを把握することで、理想の状態に持っていくためにはどのようなアクションを取ればいいかが分かります。

たとえば、ネットワークが「最近交流した人物の紹介」を通じて広がっているとすれば、それはつまり、既存のユーザーが最近交流した人物を新たに紹介することで、新たなつながりが生まれ、ネットワークが成長しているということです。この場合、「新しい出会いを促進するイベントの企画」などの施策が効果的になります。イベントを通じて、既存のユーザーが新たに交流する人物を見つけ、それを他のユーザーに紹介することで、新たなつながりが生まれます。これはネットワークの拡大と活性化につながります。

このように、ネットワークの成長動向を理解することは、適切な対策を講じ、組織やサービスの成長を支える上でとても重要です。人々とのつながり、情報のやり取りなどの活動は全てネットワークの中で行われ、その成長が個々の力だけでなく、全体としての力を引き出すためのカギとなるからです。

今後はこのモデルを使って、創造的なコミュニティがどのように成長するのか、といったことを更に探求していければと思っています。

それでは、また!ciao.

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