7さいのあの日
おかあさん。あのね。
わたし、こわかったんだよ。せかいがこわれちゃうんじゃないかとおもった。あの、大きくぐらりとした時、そのまま落っこちてしまうんじゃないかとおもった。おなかの下がふわりとして、それからずっとふわふわしてるんだ。じめんがじめんじゃないような、ずっとうみの中にいてゆうらりゆうらりしているみたいな。
それにね、ひとりぼっちだったんだよ。みんなこうふんして、ぼうぜんとして、みんなだれかにはなしてたけど、じぶんにはなしかけてた。でも、わたしはそれもうまくできなかったんだ。だから、わたしもわたしをまいごにしちゃったし、そのことにおとうさんもおかあさんもおとうとも、きがつかなかったんだよね。そして、わたし自身も。
恐かった。さみしかった。心細かった。どうしたら良いかわからなかった。そして、そのことをずっと言えなかった。だってわたしはおねえちゃんだから。お母さんにこれ以上不安そうな顔をさせたくなかった。まだ小さい弟のことはだいじにしてあげないといけない。でも、わたしはおねえちゃんだから。
そうじゃなかった。
私だってあの時まだ小さかった。おかあさんだって呆然としてるのに、どうして自分はいい子にしてなくちゃと思ったんだろう。
お母さんの呆然、お父さんの緊張、弟の興奮、言葉にならない何かが3人それぞれから一気にでていて、わたしはそれに呑まれてしまって、自分のことを置き去りにしてしまったんだ。ホントは、ひとりじゃないよって言ってほしかった。言わなくても良いからうけとめてほしかった。きいてほしかった。みんなまるでわたしがいないみたいで。じぶんにむちゅうでわたしをむいてくれなかった。
だから、いない方がいいのかなって。おもってしまったんだ。