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初めてのマリノアシティ

福岡のアウトレットモール、マリノアシティが閉店した。

僕が高校生の時にできたマリノアシティ。
アウトレットという言葉を知ったのはこの時だった。

「今度マリノアに行こうぜ」

地元の友達、橋本からの誘いだった。

高校二年の夏だった。

橋本は福岡の大名小学校出身で、めちゃくちゃシティボーイだった。ちなみに今大名小学校はなくなり、跡地にリッツカールトンができている。

そんなシティボーイの橋本と一緒にマリノアに向かった。

ダイエーでしか服を買ったことがなかった自分は、ブランドはもちろん全く知らなかった。

そんな自分とは違い、橋本は「わっ!〇〇も△△もあるやん!あっちには◻︎◻︎も!しかもめっちゃ安い!」みたいな感じで一人テンション上がっていた。

自分が大人になった今でも、ブランドに疎いことは変わっていない。
しかし、今だったら「全然分からんわ〜」と素直に言える。知らないことは知らないと言える方が人生楽だということを知っているからだ。

だが、当時は高校ニ年生。16歳くらいのまさに思春期。物事を知らないということが、なんか恥ずかしくてたまらない時期だった。
なので、全然知っとるけど俺そのブランドあんま好きじゃねぇんよな〜感をだしながら話を合わせていた。本当は何も知らないのに。

流行りに乗ってる、、むしろ先取りしてるくらいのスタンスでマリノア内を歩いていると、また橋本が知らない名前を出して言った。

「疲れたけん、スタバ入ろう!」

やれビームスだ、やれアローズだ、やれジャーナルスタンダードだ。当時ナイキとアディダスしか知らない自分にとっては(しかも持ってはいない)新しい名前を聞くたびに胃から何か出そうだった。

そんな中、新たにスタバというワードが出てきた。

今ではさすがにスタバは分かる。
スターバックスのことだ。
行くこともある。抹茶クリームフラペチーノかチャイティーラテしか飲まないが。

だが当時2001年くらいはスタバはそんなになかった。

調べたところ、2000年に九州に初進出していて、当時は4店舗くらいしかなかったらしい。

スマホもなければ、インターネットも全然メジャーではない時代に、橋本はよく知ってたなぁと今になって改めて感心する。

きっと王様のブランチを毎週欠かさず観ていたんだと思う。

そんな何の店かも分からないままスタバに入った。

さすがにカフェだってことは店内の雰囲気、他のお客さんが飲んでるのを見て理解した。

ただめちゃくちゃメニューが多い。

橋本は「なんちゃらほにゃららふらぺちーの」

聞いたこともない呪文を唱えている。

むしろスパゲティ頼んでんのかと思ったくらいだ。

橋本「ミズグはどうする?(地元の友達にはミズグと呼ばれている)」

先ほど同様、ここでも持病が発症する。
もうスタバ50回は来たことあるスタンスで

ミズグ「俺、今日は普通にコーヒー飲みたい気分やけん、コーヒーにしようかな。」

ブラックコーヒーを注文した。

砂糖を入れないことによって、橋本よりも大人なんだぞ俺マウントを取ろうとしていた。

しかし、真夏のクソ暑い日にホットコーヒーを持つ俺を見て橋本は言った。

「えっ、ホット飲むと?」

そこで冷たいのがあったのか?と内心思うのだが、砂糖を入れないことによって橋本よりも大人なんだぞ俺マウントを取っている状態なので

「俺コーヒーはホットで飲みたいんよね。」

と、コーヒーは本来ホットで飲むことによって豆本来の味が分かるんだぞどうだまいったか俺の方が大人なんだぞマウントをさらにかぶせた。

そうして橋本を黙らせた私は、優越感に浸りながらコーヒーの蓋を外して、優雅にコーヒーを飲み始めた。

橋本「それ蓋のまま飲めるんよ。お前スタバ初めてやろ?」

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