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#130 貼り貼りデコパージュで、ある会社の歴史にまで発展した話



昨日はフレンチポリッシュという家具の仕上げ技術の記事を上げた。

このように、職人の技術を伝授してもらえたことで、家具の再生に携われていることが嬉しい。

特別な道具や材料がなくても‥‥

ところが家具の材質は高級なものばかりではない。比較的新しく大量生産された家具であれば、そんな特殊な仕上げを必要としないものも多い。

カラーペイントを塗るのは誰でもできるようでいて、ブラシ痕が残りやすいのでなかなか綺麗な仕上がりは難しい。
ショップマネージャーの二人の女性はこのブラシさばきがものすごく上手い。
そのうち彼女たちから技術を学びたいと思っている。

私がボランティアを始めて間もなく「この椅子全体にデコパージュをほどこしてみましょうか」と指示された。

この記事のなかに紹介した古い地図を貼った椅子がそれだった。
私は地図のデザイン性が大好きだ。
しかもワークショップにはたくさんの古い地図も寄付されてくる。この選び放題のカッコいい古地図たちには痺れた。もし私にしっぽが生えていたなら、大振りしていたと思う。

出来上がってお店に置かれたのは去年の暮れのこと。

全部デコパージュする代わりに、部分的に黄色にペイントしてみた

この椅子は £50 (7,500円程度) の値段がつけられたが、大喜びで買ってくれた人がいるという。
自分の手がけたものを誰かが認めてくれたのはとても嬉しい。

デコパージュを再び‥‥


作業に費やした時間で考えたら割に合わないのかもしれないが、これはチャリティー団体なのだ。効率を求められているわけではないし、売れれば『貢献できた感』を持つことができる。

続いてのプロジェクトをいくつか提案されたが、もう一度デコパージュをやってみたいと思った。
なぜなら古地図同様、古い楽譜からも豊富に選ぶことができたから‥‥

残念ながら私は楽譜は読めないのだが、デザインがやっぱり素敵だと思う。

まずは、下準備から。
古い小箱の表面の黒い皮に似せたような表面の生地をひっぱって全部剥がした。

表面のみでなく、金具も全部取り外す


これが何の箱だったのかの手掛かりになる見取り図が箱のふた部分の裏に貼られていた。

手掛かりとなったのはH.M.V

グラモフォンの歴史にたどり着いてしまう


私は初め、右上の突き出した部分が顕微鏡の覗き穴なのかと思っていた。
ところが、上記の見取り図と全く同じものをネット上で見つけたのだ。

このサイトのおかげで、もとはどのような形で使われていたのかを知ることができたではないか。

Gramophone (蓄音機)

これを探し出せたのは、H.M.Vのおかげである。His Master's Voice (彼のご主人さまの声) の略である。
日本人の私にはビクターの犬としておなじみのロゴがそれである。

それどころか、英、米、日の理解の違いに気づく

このH.M.Vについて、昨日のお話に登場したR氏やらショップマネージャーやらと「あのグラモフォンを聴いている犬」の話題になった。
私はすかさず「ああ、ビクター犬ね!」と言ったのだが‥‥
そもそもイギリス人はアメリカの会社であるビクターとの関連を知らないし、なんなら犬の名前も知らなかった。

みんなの前で「犬の名前はビクターよ」と得意げに言った私がいて‥‥
「おおなんてこと。日本から来たミズカからこんなことを教えられるなんてね~」とまで言われたのだった。

調べてみると、

(英)グラモフォン・カンパニーは1901年にアメリカのレコード会社「ビクタートーキングマシン」に派生。
1929年にRCAがビクタートーキングマシンを買収し、RCAビクターが誕生。
RCAの日本法人として「日本ビクター」が設立(現 JVC ケンウッド)。
JVCはJapan Victor Companyの略。

https://jukelog.com/music-nipper-logo/

こんなに違う会社名が出てきて、だんだん何がなんだかわからなくなってきた。
私の謎が解けたのは下記のブログのおかげでした。
面白いので是非一読をお勧めします。

‥‥

『ニッパーやんけ』

日本のみなさん、ごめんなさい。
外国で知ったかぶりで押し切りました‥‥


デコパージュまとめ

今日は脱線が多かった。
私は本当は、上手にカラーペイントができない人でも、PVA糊とブラシさえあればデコパージュができることを伝えたかったのだ。

ビリビリちぎった紙を貼って、貼った表面にもPVA糊を塗る。塗って貼って、塗って貼る。

もともとグラムフォンだったために穴や内側の凸凹を残した箱。捨ててしまえばそれまでだった物だ。

この箱に貼った楽譜も古いものだったらしく、貼ってみると紙の端の黄ばみがなんとも良い味わい。

かつてこの箱は音楽を奏でることで愛されたのだ。
箱そのものは音を出さず、入れ物に過ぎなかった。
ここに音楽をまとわせることができてなんだか嬉しかった。

こうしてお店に置かれ

この箱も誰かに買われていった。新品の頃から100年近くが経つことになる。

あと100年くらい使い続けてくれたら夢のようだな、と想いを馳せる。
モノとの出会いもまた「縁」なのだと思う‥‥


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