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#237 《フランスのキャンプ事情》というより《私の事情》


今回フランスへはフェリーでノルマンディー地方に渡ってきた。車ごと来たので荷物は十分に積める。移動しながら帰りはブルターニュ地方にある別の港から帰る計画だ。

我が家のホリデーは、上の2人の子どもたちが大学で家を離れた頃『子ども3人との自然の中のキャンプ』から『子ども1人と飛行機でのシティホリデー』に代わった。しょっちゅうフランスでキャンプをした頃は彼らの需要に合わせてどんどんテントのサイズが大きくなっていた。最後には真ん中で立って動けるスペースのほか、三方向に親の寝室/長女の寝室/兄弟の寝室への入り口があった。
一緒にホリデーに行く子どもが巣立ち、あのテントがどんな作りだったかなんて、もう思い出せないほど時が経った今、「二人でキャンプをしてフランスを周りたい」と夫が言い出したのだ。

この夫の提案を、たまたまイギリス人の別の女性に話したことが3回あった。皆5、60代の女性なのだが、全員が顔をしかめながら「キャンプなんて絶対に嫌〜」と言った。這うようにしてテントに潜りこむ動作を思い出して身震いした人もいた。口々に「ホテルじゃなきゃ行かないって言えばいい」と勧めるので、こっちが面食らった。
でも、私ひとりが4、5月に日本で旅行してきたばかりとあれば、今回は私が夫の想いに寄り添う番だよね、きっとね… それに西洋人と違ってしゃがむ、潜るは得意なわけだしね…
夫はキャンピングカーを買ってもっと長いホリデーに出てもいいとさえ思っていたが、さすがにそのような投資をしてしまうと旅の形態が決まってくるので、それは避けたかった。

この夏私は生まれて初めて野外音楽フェスを経験した。夫が80年代から好きだったシンプルマインズがメインアーティストだったからだ。コンサートでは揃いも揃って歳の頃は私たちと同じカップルばかり。皆青春のキラメキを再現するかのように飛び跳ね、大いに盛り上がり、その晩は隣りのフィードでキャンプをしたのだった。
テントで寝たのは15年ぶりくらいだろうか?フェスティバルのテントは隣りのテントが近い。前と両隣り三方向のテントからイビキが聞こえてくるという、なんとも一体感のある夜だった。
そんな経緯があったことで、テントで寝る感覚を思い出して今回のキャンプ旅行に臨んだ。今フランスに来て、こちらの自然の中のキャンプ場はあの夜とは全く違うということをそういえば思い出した。穏やかで互いをリスペクトする成熟した雰囲気がここにはある。
とにかく静かで心地よい。
同じ目的でここに居るという連帯感があるので、街ですれ違うのとはわけが違う。目が合えばボンジュールって言うでしょ、普通に…

フランス人の「ボン」は空気みたいなのだ。それはナニワのギャルソン(ぼん)でもジャパニーズトレー(盆)でもいけないのだ。
そして難関中の難関「ジュール」ときた。私のジュは夫も子どもたちも口を揃えて「違うんだよね〜。Zを入れるようにしてジュを発音するんだけど」と指摘してくださいやがる。
そりゃあ自意識過剰にもなるだろう。ボンジュールがちゃんと言えないときたら、その先どうする?
ああ、早く「ボンソワ」(こんばんは)の時間になって欲しい。
夜8時を過ぎたからボンソワと挨拶したらボンジュールで返された。次はボンジュールと言ってみたら、なんだよ、ボンソワで返すんかい。
夫も言っている。「こちらの挨拶を何げに訂正してくるね〜」と。
真夏の夜8時なんて真っ昼間の明るさなのに加え、フランスとイギリスの一時間の時差により今8時はイギリスではまだ7時。時刻で挨拶するタイプと日の落ちる具合で挨拶するタイプがいるのね、きっと。
いろいろ迷うわ〜、フランス。

日曜日、ピクニックをするためにスーパーへ買い出しに行ったらブーランジェリーコーナーが見事にすっからかん。バゲットが買えないのかとハラハラさせられた。こんな光景はコロナが全世界にもたらした危機以降初めて見た。イギリスでは奥にある魚屋さんやお肉屋さんのカウンターも全て閉まるなんて見たこともない。こういう来てみないとわからなかったフランスっぽさを見つける。
ドイツ系のスーパーへ行ったらバゲットがしっかり買えて事なきを得る。

明日はいよいよ娘夫婦と合流。そろそろベッドが恋しい頃だったのよ私。


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