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#218 ダッフルコートを蘇生させてみる


以前からイギリスのチャリティーショップの話をしているが、我が夫は一点しかない何かを『掘り出す』、カーブーツセール(イギリスのフリーマーケット)やチャリティーショップ巡りが好きだ。もう病的なくらい好きなのは、祖先からのDNAにある狩猟的血が騒ぐからなのだそうだ。そしてうちの次男は父親と気が合うらしく、若者なのに何の抵抗もなくチャリティーショップで上手に買い物をしてくる。

初夏の頃だった。
初めて入った混沌としたチャリティーショップで、「これはないやろ」と思うくらいみすぼらしいダッフルコートを次男が手にした。
そして一言。
「おかあさん、これ直してくれる?」

このままでは着れないのは一目瞭然


お世辞にもきれいとは言えないので、私なら絶対見過ごしていたはず。
しかも後ろを見てやや唖然とする。

埃だらけで、紺というより白

そのチャリティーショップはちょっと普通じゃない、管理の行き届かない不思議なお店。
そんな店舗こそ、『掘り当てる』楽しみというかチャレンジ精神が掻き立てられるのかもしれない‥‥

それにしても、どんな保管をしたらこうなるのだろう‥‥ 私としてもちょっと「うえ~っ」となりながらも、面白いのでまず写真を撮ってみた。

袖に積もりに積もった埃

次男がブラッシングしたり、木の棒で叩いたり。気持ちよく埃が舞ってくれるので、果ては庭の頑丈なテーブルに打ち付けたりしていた。
そして案の定と言うべきか、バッファローの角でできた Toggl (トグル) が打ち砕かれておった‥‥(涙)

残ってたトグルも全部バラバラやん


ああ、修理部分が増えたぞと思いつつ、気を取り直して丁寧に手洗いを‥‥
あらあら、みるみる綺麗になっていくダッフルコート。
もちろん、こういうウールのコートはドライクリーニングが正当なのだが、我が家では私が自分の手に負えそうなアイテムは結構じゃぶじゃぶ手洗いをしている。
このコートならなんの躊躇もなく洗えたので、本当にスッキリしたし、ちゃんと大事にされるべき品質だなと思った。

庭で日光浴の図


一個も形をとどめなかったバッファローのトグルを4個購入。
革の紐の厚みを計って、同じものを購入。

想像以上に苦戦したのが革製の紐をコートに縫い付ける作業。
革は丈夫な加工を施してあるのか、とにかく堅くて縫い針がなかなか入らないのだ。家庭用のミシンでは歯が立たず、指をブスブス刺しながらなんとか手縫いで縫い付けた。
くっつけることには成功したので、次男が使ってどのくらい長持ちするかは、時が教えてくれることだろう。

この秋大学に入った息子が、高額でスマートなコートを着る必要などないのだ。長髪の彼が伝統的でちょっと着古したダッフルをラフに着こなすのがいいのだ。(と母は勝手に思っている)

Gloverallのダッフルコートはイギリスで最も伝統的な会社のひとつなので、なかなかいい買い物だった、と次男を褒めたい。

以下は本家のウエブサイトと、その下が日本向けのサイトです。

https://www.gloverall.com/

見つけた息子と、洗って修理した私との共同作業で、本体はGloverall社の新品の値段の二百分の一(1/200) 以下、トグルと革紐を合わせても安いものだ。
リサイクルは楽しい。物に命を吹き込むってなんだか幸せだ。

こうして出来上がったのをハンガーに掛け、息子が袖を通す日を心待ちにした。

創業時からこのダッフルコートのデザインは変わっていない、定番中の定番


今日、ようやく大学の休講週で帰省している息子に出来上がったコートを渡してみた。この息子、最近日本語で口の悪い奴になっているが、黙ってハグをしてくれる(笑)

暖かいのだろう、キッチンに来た時もまだ着たままだ。

おまけのボッサボサ男

呼び止めて撮った一枚


いくら暖かくても、着たまま寝るんじゃないぞ~
お茶を持ってキッチンを出ていく息子の背中にそう念を押した。


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