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みずいろ一人旅/長野編(12月の虹の日に)

(一人旅がやっぱりとても好きで、1人だといろいろ眺めたりぼんやり考えたりする時間があるのがいいなあと思い、なんなら文字を書く余裕すらあるのでは、ということで、せっかくなのでメモを残してみるという試み…続くかは不明です)

朝早めに着いたのでとりあえず入った喫茶店で、なんだか分からないけど名物らしい「モカクリームオーレ」頼んだらこれ出てきた。

・松本、そこそこしっかり雨降ってても傘なしで歩いてる人が老若男女関係なく関西や東京より多いような気がする。普段から雨の多い土地なのかな、それとも雪で濡れ慣れしている、みたいなこと?

・松本からJRで塩尻駅へ、そこから今日は奈良井宿という旧宿場町を目指す。塩尻駅からはコミュニティバスのようなものがたくさん出ていて、塩尻〜奈良井まで1時間以上乗っても100円。すごい。私以外はみんな地元のおじいちゃんおばあちゃんでけっこう混み合っていて、余所者の私などが乗せてもらうのが申し訳ない感じだ。(しかし奈良井まで行くJRは本数が少なすぎてバスを使うよりない)(と思ったんだけど今調べ直したら時間帯によってはそうでもなかった…?まあ行かれる方は各自調べてみてください)

塩尻〜奈良井宿間のバスは1日5往復。一部はスクールバスも兼ねていると書いてあった。

・塩尻の他、バス停の名前でも塩のつくところがあって、内陸地にとっては塩ってやっぱりすごく重要だったからそれに由来する名前が多いのかしら、とぼんやり思った。(あとから調べたら塩尻はやっぱり日本海や太平洋からの「塩の道」の終点だったから、という説は有力とのこと)

・生糸商標カード、マニアックすぎるが可愛い。くださいと言ったら他のカードもついでにとくれた。発電所カードと近代遺産カード、いずれも無料。そういえば九州でも、離島カードみたいなのどこかでもらった気がするなあ。

可愛いでしょ。

・バスの車窓から「木曽路 凍結注意!」と書かれた看板が見え、これが(飲食店ではない)ほんとの木曽路!となった。

・松本空港への着陸時から奈良井宿までの道すがらは、ずーっと虹がかかっていた。何度振り向いても必ず虹のアーチがそこにあるというのは、夢っぽいというか、きれいとか通り越して奇妙な感じ。太陽や月が必ずあるみたいに、消えることなんてない、当然に存在し続けるものみたいだった。地形や気候で虹がかかりやすいのかな、それとも単に今日の天気がそうやったのか。もはや雨の日というより虹の日ですねと思った。(なお地上に下りて初めて虹に気がついたときにイヤホンから流れていたのがたまたま矢野顕子の「虹がでたなら」でした。偶然にしてもひねりなさすぎ〜)

空は暗いのに虹は根元までえらいしっかり色濃くて、それもなんだか普段見る虹と違うなあと思いました。
振り向いても、
振り向いても、
振り向いても、
まだいるんだなあ。
そうこうするうちに、だいぶ山になってきた。

・山の中に入っていく車窓を眺めていて、夢水清志郎シリーズの「魔女の隠れ里」をふと思い出した。小学生の時に読んで、ちゃんと怖くて悲しい話だったので印象深く覚えている。

着きました。
こんな感じ。

・奈良井宿にある古道具屋さんの一角に軍盃、という小さなコーナーがあって、鶴や星といった簡単な図柄とともに◯◯部隊凱旋記念、とか支那事変記念、とかの文字が入ったお猪口が重ねられていた。こういうものが作られて、その後私たちも知るような数々の出来事があって、それでもここにこうして小さな盃たちが残っていることを思った。当時これを手にした人たち、いずれにせよもういない人も多いだろう、その人たちがその時々に抱いた感情はどんなものだったのか。
そのお店で卓上に置く小さな引き出しを買った。小さいと言っても高さ30センチほどはあり、旅先で(しかも初日に)買うものではないと思うけど、まあ、そういうこともあります。家に置くのが楽しみ。(私は、どうせ物を買うなら旅先で買ったほうがその土地の思い出が付加されてお得、みたいに思っている節がある)

・街道沿いに水汲み場がいくつもあり、それぞれ作りが違って面白かった。長い道のりの途中、ここで古くからたくさんの人たちがいろんな思いで水を飲んだんだろうな〜と思うと果てしない気持ちにもなる。

水場の裏は細い階段になっているパターンが多かった。
水、さわったらめちゃ冷たかったです。
これは高札場。
やはり土地柄で、おそば屋さんがいっぱいある。あと漆。

・信州へ来てそばを食べないというのもなんだろうと思い、冬の木曽名物だというすんきそばというものを食べた。蕪の葉を刻んで発酵させたお漬物をのせた温かいそば。そばはやはり美味しくて、すんきもつんとした独特の酸味と辛味のようなものがあり美味しかった。けれども、これが土地を象徴する食べ物であるというのはつまり、この土地の冬の厳しさをこそ示すものであって、九州や近畿の暮らしが長い自分からするとちょっとした衝撃、みたいなものも感じた。あっちのほうの土地で名物というと、基本的にはその土地の豊かさを示すものであるように思う。この土地はこれが美味しいよね、っていう。けれどこれは、この土地の、言ってしまえば貧しさを示す食べ物だ。九州でこれを名物ですって言って900円で出したらわりと「!?」って反応あると思う。なんで蕪の、しかも葉っぱの、さらに漬物…?え、それだけ…???って。でもこれは、その貧しさの中でも知恵をしぼって少ない食料を駆使して生き延びてきた、人間の逞しさや意地みたいなものを示す名物なんだなと思った。家の近所でメニューにあっても多分他のきつねとか肉うどん頼んじゃうよな、と思ったけど、ここでこれを食べてみてよかった。名物と一口に言ってもいろいろな意味合いがある。

すんき、おうちによって酸っぱさがかなり違うのよ〜とお店の奥さんが教えてくれた。
雨は雨で風情があるね。

・松本に戻り、ホテルの部屋で鯉の煮付けをつつきながら日本酒を少し飲んで、友達と電話で最近の話をしてから眠った。鯉はとても美味しくて、これからその辺の鯉を見る目も変わってしまいそう…。

これ今写真さわってて気づいたんですけど、加藤の鯉、塩尻で店舗見かけてへ〜つって写真撮ってたやつだ。

・明日は諏訪方面へ行ってみる予定。あの辺は温泉が出ているそうで、入れるといいなあ。

長野編②へ続く)

おまけ。水滴をつけた植物たちがきれいでした。

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