【小説】奔波の先に 〜聞多と俊輔〜#20
異国(1) 山尾を先に江戸に向かわせて、野村弥吉と聞多は江戸に向かった。今回はもう多少遊びながらになってしまったので、途中京に来ていた桂に追加の路銀もねだる始末だった。
「弥吉がこんな大酒飲みとは知らんかったぞ」
「聞多さんは、さすが遊びなれちょりますな」
「絶対600両あっても異国に行くのは足りんだろう。焼け石に水な気がするんじゃ。使ってもええじゃろう、今のうちに遊ばな損じゃ」
「伊藤や山尾に呆れられますよ。とりあえずは急ぎましょう」
「ははは、そうじゃな。急ぐか」