演出を入れても売り上げが上がるわけじゃないので、無駄

ソシャゲの運営チームをしていた時のこと。

ゲームに新機軸のキャラクターの強化要素が企画され、私はその実装を担当していた。ただ、仕様書を見る限りその強化画面が既存のものと比べてえらく簡素な画面だったため、いっちょ嚙みついてみたのだ。

そして返ってきたのが、タイトルの言葉だ。

私は演出大好き人間なので、もう少し食い下がったところ以下のように説明してもらった。

「中身が大事、見せ方で工夫しても中身が良く無ければ意味がない。穴の開いた柄杓」
ユーザーは別に演出見たくて強化するわけじゃないし気にしないだろう」

なるほど、正しいと思う。
しかし…そうであれば一体何のために演出というものが存在するのだろうか?

考えてみよう。


ゲームは、プレイヤーの感情を動かすためにプレイされるものだ。
ゲームが提供する体験は、ただのデータのやり取りや結果を超えて、プレイヤーの感情に影響を与える。

ゲームシステム的な話をするなら…
例えばDQ1の竜王は最初から竜形態で、HPによって行動パターンが変化するだけでもプレイ内容は変わらない

しかし、竜王が変身することで、キャラクター性が示唆され、緊張感の演出がされ体験が変わる、感情が動く

もう一つ例を出そう。

ポケモンの進化シーンを思い出してほしい。
機能面だけを考えるなら、絵が変わって数値が上がったことがわかれば十分だ。

しかし、ポケモンは長々と時間をとって進化ムービーを流す(しかも進化したことによる能力値のアップはプレイヤーは知らされすらしない)。

もし、ポケモンが「ヒトカゲはリザードに進化した」とテキストだけが表示されるゲームだったとしたらここまでの一大コンテンツになっていただろうか


人の感情は、予想通りでは動かない。
予想を裏切り、それが期待以上のものであったときに、初めて感情が動く。ゲームが人の感情を動かすために存在していて、そのためにプレイされるものならば、演出を軽視するのは大きな間違いではないだろうか。

むしろ、プレイヤーが意識していないからこそ「期待を上回りやすい狙い目」なのだ。

演出を軽視することで、ゲームがプレイヤーに感情移入させる貴重なチャンスを失っている可能性があるのではないか?


…と、ここまで演出はいいぞ!と力説してきたのだが、
結局のところ冒頭で話したソシャゲの運営という状況にとっては、工数を割かないというのは正解だったのだろうと今は思う。
何せ利益に繋がらないのだから。

難しいな、ゲーム開発は…


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