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Midjourneyに絵のサポートをしてもらってみた

こんにちは。水井軒間です。
アナログ画材で絵を描いて、SNSに投稿したり、展示をしたり、グッズを作ったりして生きています。


1、画像生成AIと絵描きの「付き合い方」

賛否両論の画像生成AI、私は「仲良くやっていきたい派」として積極的に情報を集めています。
絵のお仕事を受けた経験のある身からすると、「自分じゃなくてもいい仕事」ってかなり屈辱的だし、そういう仕事を代わってくれるなら助かる。
業界全体としても、これから絵を描きたいと思う若い人たちが、「人に利用してもらうための絵」より「自分のための絵」に向き合ってくれるような雰囲気になってくれたらいいなと思っています。

それはそれとして、画像やイラストを文字入力だけで生成してくれるツールというのは、どちらかというと「自分では絵が描けない人」への恩恵の方が大きいわけで、
元々絵を自分で描いている人間からすると、触ってみても「これ自分で描いた方が早いな…」という感覚がでかい。
せっかく興味を持って調べているのに、自分には特に関係のない話だった、てことになるのはなんか寂しいな…
何か今の自分の困りごとや、もっと良くしたいという部分に役立つ使い道はないもんかな…

と考えていた時に見つけたのがこちらのツイート。

なるほど、モチーフね!!!

絵を描く時、仮に人物部分は全て手癖で描き終えるとしても、
服とか、周りの小物とか、(自分は描かないけど)背景などをしっかり描きたい時、やっぱり資料を見ます。
本格的に取り組むなら書籍(図鑑、資料集、写真集、etc…)を買うこともあるし、大真面目に取り組むならたくさんの資料をもとにスケッチを繰り返して「描けるようになる」わけだけど、
ほとんどの場合、作業をしているその場で「これどう描いたらいいかわからんな〜」つって、画像検索をして資料を得るわけです。

これがね、微妙に要領を得ないんですよ。
ほしい資料と、絶妙にアングルが違うとか、ライティングが違うとか、
まるまるトレースしたり貼り付けるわけじゃないから完璧ではなくていいけど、もうちょっと資料として求めてるものに近いものが欲しい…みたいな場面が結構あるんですね。

また、理想通りの参考画像が出てきた場合でも、
特に服を調べた時によく思うんですが、「画像そのまんま模写みたいにして作品に組み込むのはちょっとな…」という抵抗が生まれます。
どんなにネットに雑に画像が転がってるとしても、全ての服にだってデザインした人がいるわけで。
事例にあるレースのパターンとか、自分で考えるのは大変だけど、参考画像からちょっとアレンジしようにもセンスがなきゃできないし、自分でアレンジできるようになるにはやっぱり何枚も資料をスケッチして「描けるようになる」しかない…
作品1枚にちょっとレース描きたいな〜程度の動機でそこまでできるか…?という。

そこでAIくんの登場な訳です。

AIはまさにその「何枚も資料をスケッチ(学習)して、文字で指示されたら描ける」という工程をやってくれている存在です。
そう、AIが既存の画像を大量に食っているのは、絵描きが既存のものをたくさん観察してスケッチやデッサンをして”学習している”のと全く同じなんです。
機械だから学べる量と速度が尋常じゃないだけでね。
まさに私が求めているアシスタントじゃないか!


2、試しに一緒に作業してみよう

というわけで実践。

事例ツイートの方はデジタル作画だし、おそらく元からBlenderで背景を作成するなど、合成の技法を用いているから「AI生成画像をそのまんま貼り付け」をしているのかな、と推察するんですが、
(一応補足すると、Midjourneyは有料会員になると画像を商用利用できる規約なのでクリーンです)
私はアナログで作画しているので、そのまんま貼り付けて手間を削減しよう!という感覚にはあまりなりません。

なのでどちらかというと、今まで画像検索で乗り切っていた「描けないものの資料を探す」段階をAIにやらせてみよう、といった試みです。

使ったサービスはMidjourneyです。
今アツいのはNovelAIというやつらしいですが、あれはキャラクター特化というのと、有料会員制なのでちょっとハードルが高い。
Midjourneyは25枚まで無料で利用できるので、お試しにちょうどいいかなという判断です。話題になり始めた時から気になってたし。


描くのは「宝石」。
というのも以前描いた宝石が納得いかない出来だったので、リベンジです。

ちなみにこの時は「宝石 描き方」と検索して出てくるイラスト講座を参考にしましたが、デジタル向けの工程をアナログにうまく落とし込めなかったことが敗因と考えています。絵全体はすごくいい感じなんだけどね…


さてまず、Midjourneyくんに宝石を描いてもらうぞ。
どう指示すればいいのかな…と悩んだんですが、
とりあえず「赤ピンクの八角形の宝石」をそのままGoogle翻訳にブチ込み、
「red pink octagon gem」と入れてみる。

はえ〜なるほど…

他にも「ラウンドブリリアントカットの赤い宝石」とか「斜めから光が当たったダイアモンド」とかを指示してみたんですが、結局最初に描いてくれたものを採用しました。
これが一番イメージに近いかな、と思うものを高解像度化。

ほお〜これは…へえ〜…

さてこれをどう資料にしようかな。
私の使っている画材はポスカと蛍光ペンです。なのでモチーフを描き込む場合、細かい質感などは潰してツルッと表現することが多いです。
となるとむしろ高解像度化してないやつの方がわかりやすいな〜。

というわけで、低解像度の方をお絵描きソフト(Procreate)に取り込み、
角度を変え、ちょっと加筆をして、参考資料の完成!

これをじっくり見ながら、アナログにて作画していきます。

そして完成したものが、こちら。

どうでしょうか。
以前描いたものと比べると、だいぶリアルというか、物質感のある感じに描けたと思います。


3、AIと共同作業してみた所感

完成した絵を眺めながら、
普段はほぼ手癖で女の子ばっかり描いているけど、時々しっかりモチーフを描きたくなった時、やっぱり資料があると良い出来になるな〜とか、
きちんとした観察に基づいた描写は想像だけで描いたものと違ってリアリティというか、”真実味”みたいなものがあるな〜とか、
おれってやっぱ絵が上手いぜ…とか考えていたんですが、
ちょっと待てよ、「AI生成画像の”真実味”」とは…?
と、ふと引っかかったので、自分の中でちゃんと深掘ってみました。

これは絵師・イラストレーターという商業的な視点ではなく、
画家という、非生産的で目に見えないものを重んじる立場、での意見なのですが、
「描くこと」とはその対象を「想うこと」だと思うのですよね。
動植物をスケッチしながら、自然の創る造形の美しさに感動したり、
工業製品を観察しながら、それを作った人や使った人に思いを馳せたり、
人間の肉体ひとつ取っても無限の神秘に満ちていますから、人物をうまく描きたいと思って訓練する過程そのものに意味があります。
人間をキャラクター的二次元表現に落とし込むのも、それらの神秘を想った上で自分なりに噛み砕いた”解釈”のひとつの形です。
だからキャラクターを描く絵師の「絵柄」にはその人だけの強い魅力と価値があります。

画像生成AIには想いがありません。ただ、この世に画像として現れているもの全てに対して「偏りのない均等な解釈」を吐き出すことができます。
「赤い宝石」についての「大体こういう感じだよね」という解釈をAIが出した画像があって、それを元に描いた私の絵には、「宝石への想い」は一体どれくらい宿っているのだろうか。

私の作品の主軸はあくまで人物であり、モチーフは基本的に装飾する用途でしか描かないので、それほど強い想いが必要なわけではありません。
AIの強みは他の全ての機械と同じく「効率化」「手間の削減」「時間短縮」です。

だから何が言いたいかというと、仮にAIができることでも、人間が時間と手間をかけてやったとき、そこにはきちんと「想い」という価値が乗るから、意味はなくならないし、
むしろそれ以外のものをAIに代わってもらうことで、自分が好きなものや興味のあるものに割く時間が増える、と捉えるのが、とりあえずの良い付き合い方だと思います。


ただ私個人は「AIそのもの」に割と強い興味が湧いているようで、
AIの描いた画像と向き合ったことで、私の「AIへの想い」が少し胸をかすめたような気がしました。
こういったところから、単なる効率化だけでなく、「新しい表現」みたいなものが生まれていくのかもしれませんね。

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