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『難問の多い料理店』は、まさに”真相をお話します”だった

『#真相をお話しします』を大ブレイクさせた著者の最新作。

あれだけ売れたあとだと、何かと大変だろうなあ…と売り手側としても、読み手としても勝手な心配をしてしまうのですが、新作はこちらに『#真相をお話しします』というタイトルがつけられていても納得してしまうような謎解きでした。

Uber Eatsを思わせる「ビーバーイーツ」の配達員たちと、都心部にあるゴーストレストランのシェフが連作を繋ぐ存在です。
配達員たちは、様々な理由や事情を持ちながらギグワーカーとして働いています。もちろん裕福な生活を送っている人はそうはおらず、このゴーストレストランの裏稼業である「謎解き業」の片棒を担ぐことになるのです。

軽く届け物を頼まれて「報酬は1万円」なんて話にうまい話があるわけはないんですが、この話に乗ると、このゴーストレストランのやっている裏稼業である探偵業の手伝いをすることになります。なんかね、現代の必殺仕事人みたいな感じ。

頼まれて行った先で、相談を聞き、戻ってきてシェフに話し、もう少しの調査業や頼まれ事をやったら業務は終了。
シェフはこれらの謎パーツを掛け合わせて華麗に謎を解き、依頼人に回答していく。というのがこの仕事です。

なんといっても、Uber Eatsみたいな仕組み✕ゴーストレストランという今どきのパーツをこういうアイデアに組み合わせたのが大きな発明でしょう。
コロナ禍中、「この制約を使ったいろんな小説が出てくるとしたら、それはそれで面白いな」なんてちょっと不謹慎なことを考えていたんですが、まさにこういう形で花開いたか!!!みたいなミステリでした。
一方で、天才型の探偵役+ワトソンたち(話によってワトソンが違うので、このかき分けも見所ではあります)という設定は昔ながらのもの。新旧織り交ぜて、若者世代にも届きやすいミステリになってるんじゃないかなと。

個別の謎解きについてのコメントは割愛するとして、設定の他で面白いのは探偵役が自らを「シェフ」だ、と断言し続けることです。彼がやっているのは謎解きではなく「お客さんが求める味付けや料理を提供すること」
過去、料理人が謎解きをやった事例はいっぱいあるでしょうが、それとは全く異なるスタンスなのです。
わかりやすい物語を求める、メディアの作った筋書きに載ってしまいがちな私たちへの警鐘もあるのかもしれません。

読み終わった今、各章につけられた料理についてもう一度考え直しています。まだまだ隠された謎があるのかなあ。

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