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『黛家の兄弟』の山本周五郎賞受賞おめでとうございます!

直木賞の時も、本屋大賞の時も「とにかく砂原さんに獲ってもらいたい!」と祈っているのです。(どちらも投票権がないので祈るしかない)
前作の『高瀬庄左衛門御留書もとても良くて、昨年No1本に選んでいるくらい。

そして実はこの『黛家の兄弟』はプルーフに感想コメントを使っていただいているという記念の1冊でした。
山本周五郎賞をとって、今後他の賞レースにもどんどん入っていって多くの人に読まれることを楽しみにしています。

さて、ここからは感想。

人の心は脆いもの。簡単なことで裏返ったり折れたりします。そういった中で「義」を持って生きることの難しさと辛さを感じました。時によっては、折れてしまった方が楽なこともあるでしょう。
この兄弟はその楽な方には流されず、困難があっても心に確固たる柱をもって生き続けます。辛いときも、どころか辛いことばかりで、時折息が止るような感覚に襲われながら読み終えました。

初めて読んだ時がちょうど『嫌われた監督』を読み、自らが身を置く組織に重ねていた頃でした。まさにこの本もそういった没頭の仕方をし、会社や組織、社会に置き換えて読んでいます。

諍いに巻き込まれた3兄弟は本当に多くのものを失います。打たれながらも闘いつづけ、終盤のシーンで発せられた
「ーーーあなたの国ではない」
という言葉が最後に心を貫いていきました。

砂原さんの作品は前作もそうですが、どこかしんとした静かな空気をまとっています。斬り合いのシーンは少なくないのに。これはひとつの作風となりそうですね。身体が熱く、頭のどこかだけ冷えたままある、そんな読後感でした。

『高瀬庄左衛門御留書』に続く神山藩シリーズ、ということでしたが、それほど関連性も感じずに読んでいました。が、最後の最後、大きな繋がりを見つけ、胸を掴まれます。兄弟たちが繋げたものはなんだったのか。
深いです。



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