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心のどこかに持ち合わせているかもしれない黒さを描いた『黒い絵』

今『異邦人』を読み直したら「太陽が眩しかったから」って言っちゃう気持ちとかが理解出来ちゃうかもしれない。って思えるくらいの暑さが続いていますね。

というこんな時期にはちょっと怖い本、ノワール小説が似合うということで、原田マハさんの『黒い絵』

原田さんの新境地ということで、すべての短編が何らかの犯罪や背徳行為にまつわるお話です。それについては皆さん賛否あるようですが、私はたまにはこういうのも良いな、と楽しく(楽しい話ではないけど)読ませていただきました。

「等身大の登場人物」を描くときに、境遇を同じくする、職業を通じてあるあるを描く。というのはよくある方法だと思います。
原田さんはそこで「どこかに誰もが持っているであろうどす黒い感情」を描き、壊れていく人物を描いていきます。

もちろん、こちとらそんなに劇的な人生を送っているわけではないし、奔放な生活をしているわけではないし、人を殺す予定もないわけです。
なのだけれど、登場人物たちが心に灯したほのかな悪意や執着心みたいなものは私たちの心を覗き込んだら見つかるかもしれません。

ああ、これはなんかわかるかも
と思ったところで、転落していく人が描かれます。なので、怖いもの見たさでページが進みます。

とにもかくにも、こういう暑い日に外出先のお供にするには短編がいいですよ。

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