見出し画像

読みはじめ30ページで涙腺崩壊『死んだ山田と教室』

読み始めて30ページのところですでに泣けました、といったら「なに言っちゃってるんですか」と言われると思います。
なんたって、30ページといったらあらすじに書いてある事しか起こってないんだもの。
「人気者だった山田が死んで、なのに声が教室のスピーカーから聞こえてきた」というそこまでに、山田がどういう人で、ここがそこそこの偏差値の男子校で、色々あるけど概して仲の良いクラスだった二年E組。

でももしかしたら、読了した人は「だよねー」って言ってくれるかもしれない。
それを読者に伝えるための男子校の日常描写が、どうしようもなくバカバカしいのだけど、ない語彙力を絞っても絞らなくても言えるのは「最高」ってことなのですよ。

男子校ではなかったけど、バンカラ校風でめちゃ楽しかった高校時代と、卒業して何年経っても当時の馬鹿馬鹿しい話の続きができる中学時代。そういう自分の思い出が一気にフラッシュバックして、ただただ懐かしくて目頭が熱くなりました。この気持ちにさせてくれただけで、ここから小説が崩壊したとしても許せるよ、私。と思ったくらい。

冒頭1章で感動しすぎたので、どんどんハードルが上がっていきますが、学校ものだけに読者は終わりがある事を知っています。事件が起こったのは夏休み直前。そもそもこの教室から二年E組が進級した時にこの関係は終わりを迎えざるを得ません。その後はすぐ卒業も待っています。そして、音だけの存在になった山田もいつ消えるのか。
その終わりを迎えるのがもったいなくていったん本をおいてしまいました。

が、ここで作者は読者の想定しそうなことを覆します。メフィスト賞ですもんね、そりゃ謎もありますわ。(忘れて、これが永遠でもいいと思ってた)
永遠に続けばいいと思ったからこそ、この小説の後半が活きてきます。
なぜ音声だけになっているのか、なぜ死にきらないのか。VS 男子高校生の無意味な会話と、そこから大きく大人になっていこうとする成長期の進化。
読み終わった今考えても愛おしい時間でした。

高校生ものということで、『成瀬~』と比べられることが多い本だと思います。が、あちらよりずっとリアルです。このリアルな日常にたいして、懐かしく思いだし、感動出来る中高時代を送らせてもらえた周囲にいたみんなに改めて感謝したくなってます。昔の友だちに配って歩いて読んでもらってみんなで集まりたい、そんな気持ちでいっぱい。

講談社はきっとこれで来年の本屋大賞をガチで狙いに来るに違いない。が、そんなこと考えずに、成瀬のこの盛り上がりをさらにアツくする感じで今年中にめちゃくちゃ盛り上がっちゃってほしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?