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RE_PRAY 攻略本感想(Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd “RE_PRAY” OFFICIAL PLAYER’S GUIDE)

注:ネタバレなしで語るのは困難。ネタバレあり。

ネタバレはやめてくださいっていのもまあわからなくもないんだけど、すでに受付終了してて販売数に影響するわけでもないのに、数日以上も配慮が続いていて、いろんな人の感想とか疑問とか新たな説とかそういうのをもっと読みたいタイプとしてはたいへん物足りない日々だった。

佐賀初日の貴重なその時だけの記憶が結局まともに記録できないままだったこと、後悔しかないので、書かないと忘れるからとにかく箇条書きでもなんでも書いとこっていう。文章構成あまり気にせず列挙する。きれいな文章じゃなくてもその時のありのままの言葉の方が、よかったりするから(自分にとっては、だけど)。脱線しながらすすみます

・攻略本を読みながらすぐ思い出したことはネタバレではなかったのでTwitterに書いた。


・この攻略本の感想としてよく目にしたのは、「こんなに細かく演出やら設定やらを考えてたとはびっくりで、あまりの能力の高さに驚いた」というものだった。私は逆に、能力の高さに対する驚き自体はあまりなかった。今まで見せてくれたものからある意味「わかってたよ!やっぱりそうだったよね」という感覚で。これは大したことないという意味ではない。いやほんとに、第一線のスポーツ選手でありながらクリエイティビティという面でもこんなに恵まれて、なおかつ有能な実務家でもあることは奇跡でしかない。クリエイターのなかには通訳さん的ポジションの方がいたり、実務能力をサポートする人がついてたりすることもあるが、その辺りまで、かなり自分でやってることも普通じゃないと思う。
それは前提のうえで、上記Tweetでも挙げた「夢見る憧憬」の心象風景を表した映像をみたときの驚きの方が、攻略本を読んだ時よりも上だった。競技の羽生くんの姿しか知らなかったから、こんなに豊かな風景を、映像として頭の中に思い描いているんだ!そしてそれをこのように自分である程度映像を作れてしまうんだという驚きがこの時あったのだ。
この映像をみた時、実は北京の会見を思い出していた。9歳の自分の手を取って壁を越えようとして、9歳の自分と同じフォームで一緒に4Aを跳んだと語ったあのシーンだ。

「最後に壁の上で手を伸ばしてたのは9歳の俺自身だったなと思って」
              リンク先動画 22分30秒ごろ~ 頭だし済

https://www.youtube.com/live/J0BdC3QMFAM?si=UGbFy8zkF8Igpp-q&t=1350

「これは映画だ」と心底驚いたし、あの広い会見の場でたったひとりで、大量の報道陣に囲まれて世界中に注目されながらも、自分の来し方をこんなに誰の目にもイメージできるような言葉で滔々と語る姿に、この人からみんな目を離せなくなるのも当然だと思った。きっと自然に、自分の人生を物語として生きている人なんだなあって感じた。
あと私は平昌以降の羽生くん関連の文字媒体はほぼ全て目を通してきたとおもう。プロ転向後のショーでのプロデューサー的視点への驚きは初回のnotte stellataに関する他スケーターからのコメントで一番強かった気がする。自分以外のスケーターへの選曲センスなんかもあるんだなって。
こういう下積みがあったので、今回のこの攻略本で、緻密に、コンセプトを考え抜いていることや、映像でそれをプロに伝えてたことなどはある意味、きっとそうだろうな、と私が想像していたことを、はっきりと羽生くんが語ってくれた!、そういう感覚の方が強かった。だからこんなにすごいと思わなかったと言っている人をみると、清塚さんが言ってたみたいに「だろ!!!」と言いたくなってしまう(笑)。って、一介のファンにすぎないのに何様なんじゃと自分でもツッコミたくなるけど。
とはいえもちろん、個別の項目については、驚いた点や、なるほどーと思う点もたくさんたくさんあった。

・羽生くんの公演が準備期間の割に信じられないクオリティで仕上がっているヒミツがみんなしっかりわかったんだろうなと思う。最初に、コンセプトがしっかり固まっているから、その方針に向かってプロが全力で作業をしていくと早いんですよね。
私はエンタメの仕事自体は知らないけれど、企画を進めていくときって、〇〇についての委員会みたいのが上からいわれていろんな部門から人が集まって始まるんだけどそもそもその「上」の人たちも、世の中の流れでキャッチーだと思ったキーワードを使ったあいまいなテーマ設定で丸投げしてきてどこを核にして進めて行ったらいいかわからず、なんとか勉強してひねり出したものについても、あの人とあの人の許可が必要といわれて報告にいくと、そのテーマの本質をよく理解しない的外れなことを言ってきて、まったく不本意なのに修正しなきゃならなくて、みたいな本当無駄無駄無駄、時間と労力だけを浪費する悲しい仕事っていうのが大量にあるんですよね。そういう中で仕事をすすめるのと、製作総指揮がはっきりと、コンセプトをわかりやすく伝えてくれて、それに応えたアウトプットを見せたら、またフィードバックがあって、修正できるのとでは、全然仕上がりのスピードが違うんですよね。しかも本人が誰よりも頑張って一生懸命なのをみたら、モチベーションもそりゃあ違うでしょう。それでも、頭で思い描いていたことを現実にするときに、プロのみなさまも色々大変だったろうなー。灯篭の話とか大変そうだったな。でもあの灯篭、とっても現地で印象にのこりました。こだわりの成果はあったと思う

・これだけ考えて作ったRE_PRAYだけど、公演前から、こう見てほしいとかほとんど語らずに初回公演を迎えたのは本当に勇気のいることだったろうねー。スケートファンはゲームに疎いし

・それにしても攻略本2000円って本当に利益でてますか????心配…。フモさんもページ数の話をして震えてたし。

印刷機の仕組みから言えばA判原紙に16ページ単位、あるいは8ページ単位で印刷(※つまり本のページ数は8または16の倍数になる/80ページとか256ページとか)するのが高効率なわけですが、あえて2ページ端数を増やすように部分的にページ数を変えた折を設けての「82(ハニュー)」ページでまとめたこだわりの一冊。
ー中略ー
「これは商売100%で作っている本ではない…!」と早くも震えが来ます。

https://vitaminw.livedoor.blog/archives/53482575.html


・この攻略本全体で、一番私が意外だったのはエンディングのエストポリス伝記Ⅱメドレーについての説明のところだ。えっアドリブ演技だったんっていう。あれこそ緻密にくみあげたやつじゃないかと思ってたからね。あと光の球体はエスト登場人物ではなく、今回のショーの登場キャラ(というか新プログラム)だったんかいってのも意外ポイントでした。「新プログラムが3人」という言葉は、もはやファンには通常運転な羽生流用語である。

・そして読み終わって思ったこととしては、これだけ詳しく語っているだけに語られていないことが気になるという事。羽生くんに「全クリおめでとう」って言われたけど全然クリアできてないよっていう。
1.メガロバニア前のアクションシーンの苦労が全然書いてないと感じたんだけどどうだったんだろう。本人の言葉ではあまりアクションシーンのこと語られてないんだよね。「撮影はつつがなく終わった」って。え?これだけ?と思ってしまった。私が埼玉初日で度肝を抜かれたのがあのアクションシーンで、「は、俳優????アクション俳優じゃん!!」と驚いたんだけども。だって、箱が落ちてくるところ、箱はバーチャルな状態でそこにあるものと想像しながら演技してるわけだから、ああいうのって鍛錬なしにできるものなんですか?謎すぎる。もっと詳しくあのアクションシーンのこと知りたかった。練習とかリハとかどれくらいやったのかな。演技指導はあったのか、とかすごい気になってるんだけどほぼ何も書いてないよ!!!
2.ブドウの謎 みんながあれだけブドウの謎は~言い続けてきたのだが…。でも少し謎も残っていた方がちょうどいいのかも
3.第一部最後のセーブデータが壊れています、の演出が翌日以降結構変わった。セーブできなかった苦しさ無念さみたいのをはっきり読み取らせる演技をして終わるようになったのは、埼玉初日のあの謎の笑いがあったから、伝わりやすくかえたのかな?
4.パラパラ漫画のアイデアはだれなの?やっぱり本人?
5.埼玉メガロバニアのブレードの話気になる。いつの時点で気づいたの?演技中はそのまま滑って次の曲から靴交換したんだろうか
などなど、 今後も追記するかも

・立派な写真集があるし、この攻略本はその文字情報の豊かさがすごすぎてそこに注目集まってるためにあまり指摘されてないけど、攻略本の写真もめちゃくちゃ良い!2冊、買うべきだったんだろうなあー。こんなに薄いなら。なんとなくGIFTのアフパみたいなイメージしてたからあんな分厚いの2冊もきたら無理って思ってしまったのだった

・ステッカーかわいい。ってかなんでこのドット絵キャラのグッズ少ないんです????

・小原さんって今までご本人が表にでて語られることがなかったので、あまりよく知らなかったのだけど、MIKIKO先生だけでなく、こんなに、頭の中のイメージを共有できそうな方と出会ったのは、めっちゃラッキーだったね、よかったね羽生くん、と思った。こうやって、イメージを汲み取ろうとしてくれる方に出会えて、それがプロのスキルを持った方で、実際に映像化してもらえるなんて、ほんとありがたいことだよ。
私のような一般人であっても、喋った時に、ピシっと考えてることが伝わることって少ない。なんかズレてるんだけど、まあいいやという感じで日常を過ごす。でも本当、時々少ない言葉のなかでもニュアンスを的確につかんでくれる人がいると本当に嬉しいからね。魂をこめて作ろうとしているものなら、なおさらだよね。
最近、セクシー田中さんなど、0からつくりだすクリエイターをないがしろにする話を耳にする機会が多かったけれど、今回のRE_PRAYは地上波放送も上手につくってあった印象。もちろんテレビの番組編集担当者はまた別の方だと思うけど。

・GIFTの続きは羽だったのかー!そういえばGIFTの最後にも羽が重要だった

・阿修羅ちゃんに託されているものが思った以上に重かった。そりゃニコリともできない。ずっと阿修羅ちゃんって、疾走感あふれるSOI最終日のが私の中で一番はまっててそればっかり見てしまってたのですが、ここ1か月ほどは、RE_PRAYの阿修羅ちゃんにはまってて、けっこうな頻度でみている。どういうスイッチでそっちに切り替わったのか自分でもよくわからない。

・メガロバニアのVコンめっちゃ見たい。ディスク販売の暁には、フルコンプリート版の方に収録してください!!!!ディスク販売絶対してほしいし、初心者も買いやすいように廉価版と濃いファン向けのフルコンプリート版があるといいなー。

・破滅への使者の話のところで、光一さんとの対談の話を思い出したなー。しんどくてたまらない時のその先の演技。

・個人的な話なんだけど梅雨時のせいか髪の毛が絡まったりして困ってたんで羽生くんの話を参考にしてトリートメントを先にして、シャンプーするようにしたらすごくいい

・「あの夏へ」の終わり方は、映像と、舞台をはけるまでの本人の動きの段取りすべてかなり明確に本人のなかで固まっていたんだね

・私はとりへびのお立ち台のところで、言葉に動きをつけているシーンをみて、MIKIKO先生の番組っぽいやり方だなーと思ってた。攻略本ではこのシーンの話ではなくて、レクイエム前のところの動きのことを指してるけどやっぱりMIKIKO先生のあの番組の影響だったんやなーと。


あと、最近たまたま読んだ本で、読んでるうちに羽生くんを思い出す本があったのでこれも書きたい。
最果タヒ『恋できみが死なない理由』です。
(羽生くんにおすすめしたいかも。)
おすすめと思った理由は、目の前にあるありふれた感情と向き合い、考えながらも迷いや悩みもまた深まっていくけどそれを手放さない、その過程を、難解でない明快な言葉で正直に伝えている本だなーと思ったからです。タイトルから恋愛本のようだけど別にそんなこともないです。

最適化されていく。みんなにわかるように話すことで、みんなの知っている言葉を使うことで、その言葉に合わせるように自分という人間も、最適化されていく。みんなに「わかりやすい」人間になる。場を壊さない人間になる。でも、それだけだ。場の要素でしかない私。ここに自分がいたっていなくたって同じだと思った。誰にだって共感される人間なんて、すべてが「わかって」もらえる人間なんて、そこにいる意味がないとも思った。
-中略-
詩は、私にとって、「わからなさ」に宿るものです。わかってもらいたいという感情を抱いた途端、その言葉は詩ではなくなる、と思っています。読んでその詩を「好きだ」といってくれる人も、それぞれが違う解釈をしていたりする。彼らがどう読むかなんて私にはコントロールできないし、それでも、届くものがある、ということが私にとっては大切だった。読み手と書き手が、完全にわかりあう必要などないのだろう。わからないけれど、でも、だからこそ強く残る手触りがあり、それこそが「詩」なのかもしれなかった。それぞれが自分自身の中にあるものを、そこから思い出すのではないか。共感や、わかってもらう、ということを追いかけて、忘れ始めていた自分の「本当」が、奥にまだ眠っていることを思い起こすのではないか

最果タヒ『恋できみが死なない理由』

引用の前半部分は、若い時のほうがより、瑞々しくその感覚を毎日感じるんじゃないかなあ。去年の町屋良平さんによるインタビュー(ELLE)で羽生くんが話していたことを少しだけ連想しました。人間は自然に社会に適応していくものなので、羽生くん自身も普通に過ごしていれば社会に適応してのまれてしまうだけだろうから、9歳の自分を握りしめているという話をしてた。
中略後に引用した部分などは、「詩」を「スケート」におきかえて羽生くんがいつも話している内容に近いんじゃないかと!
RE_PRAYという公演で、羽生くんが考えてた事に少し通じるものがあるような…。それぞれが自分のこととして、捉えなおすようなところ。

あと、羽生くんがファンを気遣ってくれるたびにだいたい私も↓のようなことを思っているので、この点もなんかそうだなーと思った。リンク先にもう少し詳しく掲載あります。

必ずきみが愛さなくちゃいけない人なんて、いない。と、伝えてくれる人はあまりいない。
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好きです、が、相手を縛らないで、相手の中に届いていくような時代が早く来てほしい。

最果タヒ『恋できみが死なない理由』

まあもちろんこの本のすべての項目に共感したわけでもなく(当然)、でも良かった本なので挙げました。

いやーやっぱり、こういうブログ形式っていいなあー。羽生君ファンになるずっと前、ブログとか結構書いてた。
自分の庭だから好きに脱線できる感じで。
ツイッターでは随分遠慮して書いてるんだなーと気づいた。
でも自分の為につかえる時間のなかで、こうやって自由に書ける時間はほとんどとれなくなってて、ツイッターでちょこちょこ言うくらいしかもう現実的に無理で残念だな

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