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【映画レビュー】『still dark』:こんな素敵な映画があったとは

 こんなに素敵な映画が存在していたとは!
 Twitterでこの映画を紹介されている方がいた。そこに貼られている画像が何となく気になって、あらすじを見てみたらおもしろそう。40分ほどの短い映画だからと思って、軽い気持ちで見てみたら、これがとてもいい映画だった。この映画に出会えてよかったと感謝したくなった。 

ユウキとケンタのどうしようもなく素敵な関係

 目の見えない青年ユウキは、とあるレストランで食べたナポリタンの味に衝撃を受け、ここで働きたいと、オーナーシェフに訴える。シェフは、特別扱いはしないし、1か月後のテストで基準をクリアできなければ、続けて雇うことはできないと言う。
 先輩アルバイトのケンタは、ユウキと同い年で、ユウキのことを最初から積極的に受け入れる。ユウキもケンタのフレンドリーさを受け入れ、ときには遠慮なくケンタに甘える。
 このユウキとケンタの関係が、とにかくいいのだ。ケンタがユウキの目が見えないことについて、触れることはまったくない。でも、ユウキが目が見えなくて大変なことは一番よくわかっている。そのことを100%受け入れて、当たり前のようにふるまう姿を見ていると、本当に優しい気持ちになれる。
 二人の素晴らしい関係が、演技とは思えないほど自然に映し出されていて本当にすごい映画だと思った。

言葉にできないほど美しいラスト

 明るく飄々としたケンタだが、最後に、パスタを作る最終試験のようなものをユウキが受けたときに、はじめて悲しく悔しい表情を見せる。内にあった熱い思いを画面の向こうからぶつけてくる。
 ケンタ、お前は、なんていいやつなんだ!!
 そのあと、シェフとケンタはユウキが去った後に、ユウキの作ったパスタを黙って食べるのだが、このラストシーンはもうすばらしくて、どんな言葉でも陳腐になってしまうほど美しい。見ればきっとわかる。
 ああ、いいなあ、としみじみ感じた。いい映画を見たときに訪れる、「このままずっと見ていたい」という感覚の波が押し寄せてきた。

短編ならではおもしろさ

 この映画は40分ほどの短編である。だから伏線的なストーリーはなくて、ユウキとケンタのレストランでの話だけが、ぎゅっと描かれている。本当にあっという間の40分だった。短編だけれども、見終わった後に、ずっとその世界が続いていくような広がりを感じた。すばらしい短編ならではのおもしろさかもしれない。

こんな素晴らしい作品がほかにもあるかもしれない

 youtubeのようなチャンネルが普及したことで、誰でも作品を発表することができるようになっている。スマホの動画機能も進歩し、誰でも撮影することもできる。つまり、作って観客に届ける手段は、誰の手にもある。
 もう少し大掛かりなレベルでも、地上波テレビや大手の映画館以外に、ネット独自の番組もたくさん出現し、従来の予算、時間などの枠にとらわれない作品がたくさん作られるようになっている。
 まだまだきっと、私が知らない埋もれた名作があるにちがいない。あまりに数が多くて、探し出すのがたいへんかもしれないが、楽しみだ。


 後で知ったのですが、主演の方が監督さんでした。とにかく、40分ほどの短い映画ですので、手軽に見られます。ぜひご覧いただきたいと思いました。

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