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【映画レビュー】『ワンダー 君は太陽』:人間って、友情っていいなと素直に思える

 「辛いときに観るといい映画」ということで、かなり前に勧めていただいた作品をようやく観ることができた。いやはや、もっと早く観ればよかったと思った。

よくあるヒューマンドラマではない

 遺伝性の疾患で、赤ちゃんのときから何度も手術を繰り返してきた主人公の少年オギー。彼の顔は、病気のせいで崩れている。何度も整形を繰り返してきたものの、いわゆる普通の顔ではない。そのため、学校には行かず、家で勉強をしていた。しかし10歳になり、母親が彼を学校に行かせる決心をするところから、物語が始まる。
 そこから、オギーがいじめや嫌がらせを受けたりして苦しみながらも、次第に友達を作っていき、みんなに認められていく過程が描かれる。それだけを聞くと、よくありそうな子供が主役のヒューマンドラマに思えるかもしれない。でも、この映画はそうではない。
 いや、そうかもしれない。しかし、その温かさがものすごくて、しかも屈折したりひねったりせず、あまりにストレートで王道すぎて、よくある映画などとはまったく思えないのだ。

こういう人たちと一緒に生きていきたい

 そのように、観た後に、心がほっこりして、気持ちがよくなる映画だった。なぜかと言われると、はっきり言葉にはできないのだが、、主人公だけでなく、出てくる人たちがみんなそれぞれ悩みや苦しみを抱えていて、それでも自分のことだけでなく、大切な人のことを心から思いやっている。それが伝わってくるのが、とにかく素敵だからのような気がする。
 オギーのクラスメイト、両親、姉、姉の友人、それぞれが悩みを抱えていることにもスポットライトを当て、丁寧に描き出す。そして、彼らがオギーと接する中で、人に対して優しくなれる様子も、温かい目で見守るように映し出される。
 それに触れると、ああ、こういう人たちがいるんだなあ、こういう人たちと一緒に生きていたいなあ、という気持ちが湧いてくる。現実の中では、いろいろと不満や思い通りにならないことはあるけれど、やっぱり、友情っていいものなのでは、人間っていいものなのでは、と素直に思えてくる。

優しいお姉さん

 特に印象的だったのは、オギーの姉のヴィアである。ヴィアは、本当に弟思いで、弟に対していつも優しく温かく接している。
 しかし、実際によくあることだと思うが、両親はいろんな問題を抱えているオギーにどうしても力や時間を注がなくてはいけなくなってしまい、姉のことが二の次になってしまう。もちろんヴィアに対する愛情がないわけでは決してない。ものすごく大切に思っている。しかし、ヴィアがしっかりして優しい子供だけに、ますます、彼女はきっと大丈夫と思いこんでしまうのだろう。
 ヴィアは、両親の思いが弟ばかりに向けられていることを、寂しく感じている。母親がそれに気づいて、ヴィアと時間を一緒に過ごしてくれた時はものすごくうれしそうだ。しかし、そのときも、オギーの学校から呼び出しがあり、母はヴィアを置いて出て行ってしまう。
 ヴィアはそういう苦しみを口に出すことはない。それはきっとオギーのことを思ってであろう。オギーに対しては、どんなに自分がつらいときでも、常に前向きになれるように温かく声をかけ続けている(冒頭の写真のように)。そうした誠実さは最後に報われることになる…
 私は、この映画の主人公はヴィアだと言っていいと思う。それくらい、彼女に共感し、人間として本当に素敵だなあ、いいなあと思った。自分も少しくらいそんな風になれればとも思った。

出てくる人たちがみんな素敵

 ヴィアだけでなく、ほかの登場人物も、本当に素敵に描かれている。オギーをいじめた子供でさえも……。こういうヒューマンドラマで、出てくる人がみんなこんなに素敵な映画は、これまで見たことがなかった。 


 自分でこの作品を見つけて観ることは、おそらくなかったと思います。勧めていただいたから出会えたのです。人から勧められたら、時間はかかっても観るようにしたいなと、改めて思いました。

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