勝つためのスプラトゥーン #2
# この記事は何で、何をしているのか
数百人規模の社会人Splatoonコミュニティ・Splathonで解説や色んなチームのコーチをやっているミズハラユキと、Splathonきっての実力者であり、甲子園の地区大会やオンライン大会の優勝経験もあるあわが、「スプラトゥーンで勝つこと」をテーマに色々話す回です。ほぼ全部録って出しで、全3~4回くらいを予定しています。
第1回はこちら:
# 登場人物
ミズハラユキ/mizuharayuki
よくしゃべる方。すごくしゃべる。XP2650-2700ライン。Splathonでは主に解説やコーチを担当、大昔に大規模大会優勝など。メインウェポンはパブロ・ヒュー。ポケモンは赤から。
あわ/awa
つよい方。すごくつよい。XP2750-2800ライン。スプラトゥーン甲子園地区大会優勝、直近では123杯優勝など。メインウェポンはエクスプロッシャー系。ポケモンは緑から。
# スプラトゥーンに王道なし
ミズハラ:
前回はどうやってうまくなるか、あるいはうまくなる上で必要なメンタリティあたりの話をしましたが、そもそもみんなが想像する「うまくなる」って何なんでしょうね?
あわ:
やっぱりゲームである以上、結果として勝てるかどうかっていうところになるんじゃないですかね。
ミズハラ:
一番分かりやすく出てくるのは、ガチマッチだとXパワーやウデマエの数値が上がること、あるいはナワバリでチョーシが上がること、とか。そういうところに評価基準が置かれるんですかね。勝ち負けが結果的に影響を与えるところなので。
(成長の例。)
あわ:
ただ、今までやってなかったことを練習すると、うまくいかなくてXPが下がってしまう、ウデマエゲージが割れてしまうようなタイミングって絶対あるはずなんですよ。
ミズハラ:
これ、どうやって克服したらいいんでしょうね。新しいことに挑戦するとウデマエが下がる、だから挑戦しない、結果的に頭打ちになるケースが結構あると思っていて……。メンタル的な問題にもかかってると思うんですけど。
あわ:
自分はぶっちゃけ「時間」だと思ってます。「ステータスの一部として、どれくらい時間を割いているか」みたいな考え方ですね。努力とか取り組みの質じゃなくて量。
ミズハラ:
あくまで指標のひとつとして、一番手軽に積み重ねやすいのが時間だと。なんだかんだ上手い人はめっちゃプレイしてますからね……。
あわ:
何をどうやってきたか、という質の軸はもちろんあるんですが、ひたすら愚直に積み重ねていくことでうまくなる、量の軸ってのはあると思います。身も蓋もない話で「続ける」。
(続けている図。)
あわ:
あとは……自分の話になっちゃうんですが、初代の頃から色んなブキを触ってましたね。そのおかげでゲーム理解が多角的になった。10種類近くは塗りカンスト(※Splatoon1は999,999pt)してたはず。
ミズハラ:
自分もだいたい「強ブキ」と呼ばれるやつは一通り触りました。そのブキの役割、やられたら嫌なこと、得意な距離や戦い方を理解できるようになる。いろいろなブキを使うと引き出しの数が増えますね。
あわ:
そういう面から見て、引き出しを増やすのは方向性としてアリだと思います。プレイ時間を積むのとはまた別になっちゃいますが。
ミズハラ:
どの辺までやれば引き出しが増えたって言えるんでしょうね?
あわ:
今だと、自分の最高ウデマエよりちょっと低いくらいを目指す、とかですかね。それが強いブキであればあるほど良いと思います。ただ、2はどうしてもちょっと時間がかかってしまうので、そこで「何が楽しいか」を見つけるのに時間をかけてみるというか。
ミズハラ:
1の強ブキは単にスペックが壊れていたので、好きにやってても楽しいし、じきになんとなく使えるようになってたんですよね。2はそうでもないのでちょっと難しい。どうしても「修行」っぽくなってしまう。引き出しを増やしたいのであれば……という感じかなあ。
(いろんなブキ、使ってますか?)
あわ:
いろんなブキを使っていくと、徐々にイメージの精度が上がるんですよね。使ったことがないブキでも「これって多分こういうブキだよな」の予測が当たるようになっていく。そうなると対峙した時の対策もしやすいし、味方に来た時の活かし方やステージごとの強さも分かるようになる。結果的に強くなります。
ミズハラ:
いろいろ試行錯誤するといいんでしょうね。「このブキって、どんなブキなんだろう? 何が強さの根幹なんだろう?」「今の自分は何が足りてないんだろう?」みたいな。メインが同じマイナーチェンジでも、実際触ってみると全く違うというのは結構ありますし……。例えばわかば・もみじ・おちばは全て強いプレイングが違いますし、スプラローラーとスプラローラーコラボなんかに至っては完全に別物だったりするわけで。
あわ:
結果的にプレイ時間を積むことにはなるんですけどね(笑) 気づきひとつで上手くなるケースってあると思うんですけど、まず気づける段階になってない人がほとんどなわけです。そこに辿り着くには時間を使うことになる。
ミズハラ:
知識が組み合わさってより高次の知識に変化するためには、そもそも知識のインプットの量が要ると。
あわ:
一万時間理論じゃないですが、結局は「地道に続ける」「色々なブキを使う」「試行錯誤して、考える」に落ち着くと思います。人から教えてもらうとショートカットできたりしますけどね。
ミズハラ:
自分もスプラ1の時は色んなブキを持ってましたね。強ブキで言うと、塗りカンストしてるスシコラ、ダイナモ、96デコあたりかな。スピコラ、H3チェリー、あとはシャプマあたりも。
あわ:
自分もほとんどの強ブキは使ってましたねー。1だと「ウデマエがカンストするまでこのブキ以外持たないぞ!」みたいな感じで使い込んだり。二度とやりたくないですけどね(笑)
# 相手の気持ちになれ
ミズハラ:ブキの話で色々とやってきましたが、この話って全体的に「知識」方面ですよね。引き出しを増やすとかも。
あわ:もちろん戦う相手は人間なので、対人も上手くなる必要があるな、と思います。将棋や他のゲームでも言えることですが、これは「相手の動きや盤面展開を予測する」「その予測の精度を上げる」ということだと思ってます。予測精度が向上すると相手の弾が当たらなくなるし、こっちの弾は当たる、読み通りの展開になる、みたいな話ですね。
ミズハラ:
あとは「相手がされたら嫌なこと」は何かな、というのを考えるのも大切で、さっきの「ブキの性質を理解する」とかはここにもつながってきます。使ってみると「意外と分かってなかったんだなあ」ってことが分かったりする。
あわ:
それを考える材料としてブキの知識が活きてくる。そもそも対人ゲームって基本はそれの積み重ねですからね。手っ取り早い話、うまい人とやると分かります。
ミズハラ:
最初は分からん殺しに見えますけど、途中からパターン化されてる部分とか、「やられたら嫌だなあ」って思ってたことをきちんとやってくるんですよね。
あわ:
「自分視点で相手を見る」が大切だと思いますね。相手の配信や俯瞰視点で試合を見るということではなく、「自分視点で相手の視点や考え方を見る」ということです。僕はよく「チェス盤をひっくり返す」って言うんですけど。
ミズハラ:
「相手の気持ちになる」的な。
あわ:
です。極論、自分よりうまい人は、ほぼ間違いなく予想の範囲外の行動をしているはずなんです。自分が予測できていないから倒されたり、不利な状況に追い込まれたりしてしまう。予測できていれば打ち返せばいいだけなので。
ミズハラさん、漠然とでもいいんですが、「うまい人ってこういう状況で詰めてくるんだ」みたいなのってありません?
ミズハラ:
ああ~……(笑)
あわ:
雑に言うと「マジかよ」って声が出るやつですね(笑) こういうケースを自分の視点に落とし込んでいくと、「あっこれヤバいんじゃない?」みたいな気配が察知できるようになります。事が起きる前に。
ミズハラ:
同じシチュエーションに陥りそうになった時、「これ前体験したぞ?」となれば対処できる可能性が出てくると。
あわ:
なので、自分が不利になったり倒されたりした時は、どの状況からどういう結果になったのかを何度も振り返りますね。そこから「ああこれヤバかったんだな」って学べる。
# デッドラインのギリギリを攻めろ
あわ:
ゲームの中だと「ここから先に出たらヤバい、というデッドライン」がありますよね。
ミズハラ:
スプラトゥーンの「ライン」とか「前線」と呼ばれる概念に近いものですね。厳密には違うけど似てくる。
あわ:
そのラインが前にあるなら自分もギリギリまで行かないといけないし、こっちに迫ってくるなら自分も下げないとダメなんです。なぜギリギリを突いていく必要があるかというと、それが勝つために一番楽だからです。ギリギリを突かない甘えた動きは、結果的にチーム全体を不利にしてしまったり、勝てなくなってしまう。
ミズハラ:
ギリギリで戦わないようにすると確かに楽ですが、同じくらいかそれ以上に相手も楽になっちゃってるんですよね。いわゆる「圧がかかってる/かかってない」ってやつで。
あわ:
このデッドライン、ギリギリの線はゲーム内だと目に見えないんですよね。一応塗りとかはありますけど、それも目安のひとつでしかなく、しかもデッドラインは試合中ずっと変動し続けている。これを理解するためのコツが「自分視点で相手視点を見る」という話になる。
あわ:
本当にうまいプレイヤー同士の試合って「うまいプレイ、スーパープレイをしたチームが勝つ」じゃなくて、ただ単に「ミスしたチームが負ける」それだけなんです。そもそも相手にうまいプレイを決められるのは自分たちがミスったからですし、逆も同様です。そうした時に「ミスがいつ発生するか」の勝負になってくるんですが、相手が楽なときは絶対にミスしてくれない。だから相手に圧をかける、そうなると自分も楽はできない。ギリギリを突く必要が出てくるわけです。
そうした時、自分よりうまいチームやプレイヤーと試合すると絶対ミスするんですよね。あるいは気づいていないだけでミスをしている。やられたり詰められたりするのは、自分が甘い動きをしているわけで。それを少しずつ矯正していくとより正確にデッドラインが見えてくるし、相手がミスしそうな状況や圧力のかかり方も見えてくるようになる。
ミズハラ:
これ「めちゃめちゃわかります」以外に言うことないんですが(笑)
あわ:
(笑)
# うまくなるためには、うまくなるのをうまくなれ
あわ:
僕は最初、スプラトゥーンがめちゃめちゃ下手だったんですが、自分よりずっとうまい人のプラベやナワバリに合流してひたすらプレイしてやられて考えて、で上達しました。これの繰り返し。
一例として、あくまで初代Splatoonの頃の話ですが、わざわざTwitterでフレコ交換を申し込んでナワバリ合流とかもやってましたね。その頃は〇〇募集とかじゃなくて、合流したもん勝ちなのでスルッと入れました。で、4時間ぶっ通し(※初代Splatoonのステージ変更周期は4時間)で2ステージを回すっていう。
ミズハラ:
自分よりうまいフレンドのナワバリに合流するのは、めちゃめちゃキツいけどいい修練になりましたね。うまい人たちがナワバリをやってたら入り得みたいなところはあります。ボコされるのは修行だと思ってた。
あわ:
システム的にいろいろ出来上がってきたので、以前より合流できる機会は減ってるとは思いますが、ずっと繰り返してたら格上相手にも食らいつけるようになりましたね。百人組手とかみたいになっちゃうけど、一番地力がついた気がします。
あと、それより手前のタイミングでチームに入りました。これは結構重要。それからチーム内プラベでああだこうだ言って、大会に出て……ってなってから大会を強く意識するようになりました。
ミズハラ:
なにがしかの集まりというか、複数人で目標に取り組む、一緒に切磋琢磨している人たちがいる、というのは上達の近道ですね。モチベーションも維持できるし。
ミズハラ:
あとは、いわゆる上位勢が募集している対抗戦に行く、みたいなのは結構やりましたね。今で言うとXP2800以上の人たちに――身の程知らずにも――突撃するみたいな(笑) 自分たちより強いところに挑んでボコされるのはいいと思います。勝てる相手とだけ戦うより、ちょっと強い相手にしばかれた方が学ぶことが多い。XPにして200~300以上差があると流石にしんどいので、平均2300なら2400~2450くらいの相手と戦う、とかが良さそう。
あわ:
最初に大会出たころは1,2回戦落ちはザラでしたし、続けていくうちに個人・チームともに練度が上がって良くなっていきましたね。大会やイベントに出てみる、というのも成長するうえで良い要因になると思います。
ミズハラ:
大規模なやつだけじゃなくて、身内のレベル感が近い人たちを集めて、とか、知り合いでドラフト杯やろうぜ、とかもいいですね。Splathonだと大王戦やLadderのTierが近い人たちと戦うとか。
あわ:
この話、究極「うまくなるのをうまくなれ」みたいな感じになりそうですね。うまくなるのがうまい人は効率もいいし、自分でPDCAをガンガン回せる、一人で自己完結しているケースが多い。ただ全員がそうかと言われるとそうじゃない。だから「うまくなるのがうまい人」の知り合いや友達を増やすのは大切なんじゃないかな。ただ、ここで聞くべきは「うまくなる方法を教えてください」じゃないんですよね。
ミズハラ:
「魚の釣り方を教えてください」ですらなくて、「魚の釣り方を考えられるようになる方法を教えてください」までいくわけですね。
あわ:
うまくなるという言葉につなげて言うならば、うまくなる方法を知るのではなく、「うまくなる方法を考えられるようになる」かな。
ミズハラ:
ただし、これは誰しもが自分ひとりでできるわけじゃないし、一朝一夕にできることでもないと。「難しいぞ」となったら、「うまくなるのがうまくなる方法を知っている人」に聞いてみようぜ、と。
あわ:
そういうことです。答えを知るんじゃなくて考え方を学ぼうぜと。
ミズハラ:
身も蓋もないですが、きちんと汗かけよ、と。
あわ:
で、それを埋めようとするとプレイ時間が必要になるんですよね(笑)
ミズハラ:
話が振り出しに戻ってきましたが、質と量は両輪ですからね。耳が痛い……(笑)
あわ:
ここまでの話はスプラトゥーンに限定してきたようで、かなり一般性、汎用性のある話だと思っています。たぶん他のところでも応用が利く。
ミズハラ:
うまくなるのがうまいやつは何やらせてもうまくなるし、うまくなるのがうまくなるにはどうしたらいいかを考えるのは大切、なのはガチですね。
あわ:
ゲームに限らず他の分野でも、今日話したような内容の取り組みをすることがあると思うんですが、この世で一番難しいのは「どうやって軌道に乗せるか」で、能力があってもやる気や情熱がなかったら絶対に続かない、つまり軌道に乗らない。難しいんです。こういったモチベーションや意志をどう絶やさないか、どう続けるか、という点でゲームはすごく優れている。軌道に乗せるまでのハードルを下げてくれると思いますね。考えながらゲームをやり続けていると、そう思います。
水原:
香川県は「ゲームは1日1時間まで」とか言ってる場合じゃないですよ!
あわ:
ほんとほんと(笑)
(第二回 了)
# 皆さんからのお便りや質問、大募集中です
次回の「勝つためのスプラトゥーン」は全編おたよりコーナーです。皆さんの質問をスケール感問わず大募集中、期間は2020年7月18日まで。投稿はこちらのページ(※リンク先Google Form)から。おたより、お待ちしてます!
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