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5人目のメンバーから見た、第一期大王戦

# はじめに

これは社会人Splatoonコミュニティ「Splahton(スプラソン)」にて、3月から5月まで開催されたウデマエ別リーグ「大王戦」のコーチを担当していた水原由紀(ミズハラユキ)の振り返りである。仕事と読書と家事と自分の出る大会練習をしながら3チーム×4名、合計12名を並行で指導するとかいう、今思うと気が狂っているとしか思えないことをやっていたのだが、まあそれはいいとしよう。

不参加だった人や初見の人に向けて書いておくと、この大王戦は3つのTierに分かれており、Tier1(XP2300~2600)、Tier2(XP2000~2300)、Tier3(S+~Xなりたてくらい)の各Tier内でそれぞれ総当たりリーグ戦を行い、うち上位2チームが決勝戦に進出する。私はこの各Tierで1チームずつコーチを担当していた。

なお、以下の本文ではコーチしたチーム、および他チームの選手はすべて(語呂がいいとかを除いてだいたいの場合)敬称略とする。

# Tier3チーム「あの女のパーリィ」: 予選2位、決勝進出(準優勝)

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左から、前衛~中衛のmeguu(黒ZAP)、中衛ぼーりー(デュアカス)、最前衛あでぃ(ボルシチ/ローラー)、後衛ちおん(エクカス/オバフロ2種)。主にmeguuさんとぼーりーさんが賑やかで、ちおんさんもときどき賑やかでわたわたしており、あでぃさんは黙々とイカを殺していた。

Tier3ではほぼ唯一と言っていい「強くラインを意識したプレイ」を特色としたチーム。超短射程、短射程、中射程、長射程とバランスよく揃っていたことから、いわゆる「ふつうの対抗戦」と同じ試合の組み立て方を中心に据えて指導した。

しかし、Tier3のレベル帯では対抗戦における定石のひとつ「負け筋を潰す」が100%では機能せず、「勝ち筋をつかむために敵を破壊する」ほうが強い。ていねいに戦うだけでは相手のエースプレイヤーを綺麗に潰しきれないケースが目立った(例:「ワリとヨクバリス」チームのススズや「イカコト!」チームのかがみ)。

これは明確に反省点のひとつで、「破壊する」に全振りしたプレイヤーを2名育て、そのうえでサポートを行うプレイヤーを、という軸の方がよかったのかもしれない。チーム内ではボルシチ/ローラーのあでぃがその役割を担っていたが、もっとmeguuやぼーりーを破壊できるほうにシフトさせるのもアリだったはず。

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(4-3で辛勝となったイカコト!戦の最終試合、ムツゴ楼のガチエリア。余談だが、どのTierのチームもこのステージに苦しめられていた)

チームメンバー全員がX未満ということもあり、X2200~2300くらいにありがちな「間違った定石」を身に着けていなかったことは大きい。正着手をきちんと教えつつ、とりあえずやらせてみる、だけでぐんぐん伸びた。このレベル帯はマクロな試合構築よりも、単純にプレイ時間(から来るキャラクターコントロールやエイム力、インク管理などのスキル向上)と知識が大切なのである、と気づかされる回であった。

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(因縁の地で記念撮影をする面々。)

総評は「一番ていねいで、素直だったチーム」、といったところだろうか。準優勝おめでとう。このゲームはとても奥が深くて、まだまだ楽しい。だから、もうしばらくその道を行ってみてほしい。

# Tier2チーム「ちろるあいしゅまる」: 予選4位

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左からローラー/わかば/黒ZAPで前中衛たこしゅ、ダイナモ/エクカス/オバフロで中衛ちゃちゃまる、プライム/デュアカスで前中衛ろい、スシコラやスシベで前衛Lucia(るしあ)。当初はチーム内の通話を聞いていても静か(=会話のスターターやファシリテーターになる人が不在)、コミュニケーションがあまり発生しないしみんな喋らない、ということで「まずはもっと喋って、みんな仲良くなりましょう」というアドバイスから始まった。

編成にはかなり悩まされた。ほぼ長射程不在のため、Splatoon2の基本的な編成である「ヘイトが取れる前衛、キルエースとなる前衛、全体を回転させるための中衛、長射程の後衛」が取れず、「理想的な(主にエリアにおける)スプラトゥーンのチーム」を組み立てることができない、という地点からスタートしている。結果、たこしゅさんにわかばや黒ZAPなどの接着剤になるブキを持ってもらい、ろいさんを弱体化著しかったL3からプライムやデュアカスに変更。とりあえずコンセプトが成立するレベルには構築できた/してくれた。

(ここでCMです。ちゃちゃまるさんちのちゃちゃまる、めっちゃかわいい。以上です。)

このチーム最大の課題は「ガチマッチと対抗戦はまったく違うゲーム進行になる、と学ぶこと」そして「無意識のうちに身に着けてしまった誤った定石やパターンを抜くこと」だった。ガチルールの対抗戦に興味を持ち始めるのはウデマエXに入ってから(そしてだいたい2300前後から)というイメージがあるのだが、ここで多くの人たちがつまづく。ガチマッチと異なり、無茶なプレイが通らない(なぜならガチマより相手が強いため。最終的にはガチマの敵も無茶苦茶に強くなるのだが、それはまた別の話だ)。位置がバレまくる(なぜなら報告されているため)。これをとにかく解除していくのに専心した。

決勝に残るレベルの仕上がりとはならなかったものの、当初よりはずっとまとまりのある、「このチームや編成での勝ち方を理解し、それをしっかりとつかみ取る」プレイが多くなったように思う。

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(ムツゴ楼って星空がめちゃくちゃ綺麗なんですよね。知ってましたか?)

総評は「一番静かに、黙ってついてきてくれたチーム」。同時に「一番コーチの悪いところが出たチーム」でもある。後述するが、成長に貢献できたとはいえ申し訳ないことをしたとも思う。しかし今は純粋にねぎらいたい。4位おめでとう。よく戦った。次はもっと強くなれるし、もっと楽しくなるだろう。また会おう。

# Tier1チーム「鳥カツの照り焼きレヴァー添え」: 予選1位、優勝

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メンバーは左から前衛L3/黒洗濯機でTellsium(てるす)、ヴァリアブルフォイルで中後衛ヴァ、わかば/ヒッセン/金モデ/スプスピ/ハイカス等でオールレンジのザバード(とりちゃん)、キャンプ/クゲでオールレンジのtsukaby(つかびー)

Tier1で同じく決勝に残った「ダンボVSギガドラゴン」と同じく、キャンプ軸で編成を組み立てているチーム。前線を後ろ気味のてるすと前気味のつかびーという、逆のプレイスタイルを持ったプレイヤーが担う。結果としてとりちゃんを後衛にすればつかびーキャンプが突出しすぎ、前衛にすればL3のてるすが取り残される……という問題に悩まされた。

本来は長射程とキャンプを組み合わせたいところではあるが、つかびーがキャンプ/クーゲル両方を担うためちょっと難しい。結果としてとりちゃんは後衛ではなくわかばやヒッセンを持つことになり、ある程度安定。最終的にはてるすが黒洗濯機に持ち替え(前から使っていた)、かつ「なんとなくでプレイしない」「今前にいるべきかどうかは常に考える」「予測力を鍛える」ことを繰り返し繰り返し伝える形でまとまりを得た。結果的には優勝したわけで、功を奏したと言える。

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(最終決戦の場となったトジトジ。フェスステージ随一の傑作である。これまた余談だが、決勝戦は編成的にかなり有利だと踏んでおり、案の定そうなった)

総じて、「一番手がかからなかったチーム」である。Splathonの解説チームの一人であるとりちゃんがいる上、てるすは長期イベントであるLadderでコーチを担当したチームのメンバーであり、つかびーも対抗戦やeXtremeなどで顔を合わせたことは多々ある(で、ヴァは多分ほぼ初対面だったが馴染んだ)。ゆえにコーチからのコミュニケーション面では特に苦労することもなかった。ありがたい限りである。優勝おめでとう。その栄誉はあなたたちのものだ。

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(ところで、「鳥カツの照り焼きレヴァー添え」って何なんでしょうね。)

# 総評

結果だけ見れば、各Tierのチームを並行で3つ指導し、2つ決勝戦に進出し、1つは優勝した。十分すぎるくらいだと言える。Splathonでひたすら人にあれこれ言ってきただけある、というか、それに見合うだけの結果というか。これで「なんかあいつよく分からんこと言ってるな」から「実績あるし、よくよく考えると正しいっぽいな」程度には信用度も高まったのではないだろうか。(※これは権威主義です)

そして、この結果は大きな反省を残したわけでもある。

# 反省と展望

とっくに気づいている、あるいは知っている人も多いと思うが、私は強い編成を組むのが大好きである。要するに「最初から強いって分かり切ってるキャラを組み合わせて、それに合わせて強いプレイすればよくないすか?」という考え方だ。特にガチエリアはユーザー間での編成組み立てや仕事の割り振りの研究が進んでおり、どのブキがどこを担当するか、何を担うのか、何に責任を持つべきかがかなりはっきりとしているので、この考え方はより顕著になる。

が、これは上位帯、もっと言うとXP2600や2700から先の世界での話である。「最終的に強くなる組み合わせ、最終的に強くなる考え方」だ。S+以下ではエイム要素が弱く、かつ範囲攻撃であるホクサイやクラッシュブラスターが猛威を振るっているが、これらのブキはX上位にはほぼいない。

今回、わたしは「XP2700以上のレベルで対抗戦をやっている人のフレームワーク」を外すことに失敗していた。「俺のスプラトゥーン」を押しつけていたのである。Tier1チームは組み立てができていたが、Tier2やTier3には「自由に、のびのびとやってみる」方針を打ち出すべきだったのだろう。

編成の話だけではない。わたしは戦術的にも戦略的にも「最終的に正しくなるスプラトゥーン」中心に教えていて、それは「今勝てる楽しいスプラトゥーン」ではなかった。これはTier別で勝たせるという意味でも、モチベーションという意味でも間違いだった。

では、上達するという意味では? それも怪しい。課題は巨大なものや困難なものをゴールに据えるのは間違っていないが、まずは最初の一歩、最初のワンステップを踏み出しやすいものを与えるべきだったと思う。

ただ幸いにして、「最終的に正しくなるスプラトゥーン」だけを教えていたわけではなかった。今後はこの比率を改めねばなるまい。ゆっくり間違いながら「今正しいスプラトゥーン」を積み重ね、「いつか正しくなるスプラトゥーン」は少しずつ教えるようにすべきだろう。具体的には「小目標を作って達成してもらう」「小目標を立てさせて、それがなぜ正しい目標なのかを考えてもらう」あたりを増やし、細かく達成を増やしていくほうがよい、はずだ。

まあ、きっと今回のわたしは、さじ加減を少しばかり間違えたのだ。次のわたしはもっと上手くやってくれるだろう。

# 謝辞

以下は謝辞。

まず、Tier3チーム「あの女のパーリィ」、Tier2チーム「ちろるあいしゅまる」、Tier1チーム「鳥カツの照り焼きレヴァー添え」の各メンバーに最大の感謝を。この結果はみなさんの出した結果だ。これからもこのゲームを愛してやってほしい。

対抗戦やチーム練習に付き合ってくれたみなさん、このめちゃくちゃ大変な長期企画を立ち上げて無事ゴールさあせた運営担当のいかりん、「そもそも強いとか勝つって何?」という根源的な問いに向き合うきっかけとなった、あわさんにも感謝を。また同様に、面識どころか話したことさえないが、さや氏(@bioreyoru)にも感謝を述べたい。動画での解説やツイート、質問箱での回答は、Splatoon2におけるゲームサイクルの理解および理論構築において多々参考になった。

それでは、またハイカラスクエアで。


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