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Discordが一日で超巨大なゲーム配信プラットフォームと化した件

何が起こったのか三行で

【1】1億人以上のユーザーを抱えるゲーマー向け音声通話ソフトDiscord
【2】10/16から、Discord上でのゲームの販売および月額サブスクリプション制を開始した
【3】結果、多数のユーザーコミュニティを持つ巨大なゲーム配信プラットフォームが誕生した

【注意書き】

2019/09/13時点、上記Nitroのゲーム配信サービスの終了が告知されました。公式ブログの記述を見ると、あんまりうまくいかなかった、の一言に尽きそうです。


もうちょっとくわしく

実際は2018年8月時点でカナダ向けに行われていた「Discord Store」機能のベータ版提供範囲が拡大され、日本もその対象になった、というのが正しいところ。

ストアではDiscord側がタイトルをセレクトしており、そのまま購入する以外にも月額9.99ドルの有料サービス「Nitro」に加入していればいくつかのタイトルがタダでプレイできたり、Nitro限定ゲームや先行配信タイトルもあるようだ。他のサービスから購入したゲームをDiscordのライブラリに突っ込む機能もついており、Discordがゲームランチャーの役割も果たす。

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ストアに並んでいるタイトルやサブスクリプションでプレイできるものをざっと見ただけでも『LIMBO』『INSIDE』『Into the Breach』『FTL:Faster Than Light』『Starbound』『Hollow Knight』『Abzu』『Risk of Rain』『Super Hexagon』『VVVVVV」etc、優れたタイトルが顔を揃えている。ゲーム好きな人向けという意味ではかなり洗練されているように思う(超がつくハードコアゲーマーには物足りない気もするが)。

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(Discordの公式ブログより引用)

Discordのユーザー数は1.3億人(2018年5月時点、公式発表)。毎日利用しているユーザー数は1900万人ほど、最大同時接続ユーザー数は820万人。一番でかいサーバーは大人気バトルロイヤル『Fortnite』に関連するもので、18万人が参加しているらしい。シャレにならない数である。サービス開始は2015年5月であることに留意したい(1日で、と書いたが、実際は3年と5カ月である)。

ちなみに世界最大級のゲーム配信プラットフォーム・Steamのユーザー数はだいたい2.9億人、最大同時接続数は1850万人(外部サイトSteam Spyによる発表。2017年の総括)。ユーザー数ベースだとだいたいDiscordの2.5倍くらいの規模だと考えればいい(にしてもこれが事実だとすると、Discordの伸びは本当にすさまじい)。

Steamにもユーザーコミュニティはあるし、BBSなどで様々な話題が(雑談や攻略や称賛や非難や文句やポエムが)活発に議論・発信されている。ただ、Discord的な「なんらかの一体感やまとまりのある枠組み」ではないと感じている。たまたま入った飲み屋と行きつけの店くらい違う。正直Discordはゲーマー向けとされているが、多少ゲームを遊ぶくらいの人、でも割と入ってたりする。

コミュニティにとって便利なツールを提供して使ってもらい、アップデートも繰り返しやって、その上で「分かってる」感じのあるストアを開設して、ゲームランチャーの役割まで果たす、と書くとなかなかすごい、というか、正直ビビる。

そもそもDiscordとは何か

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ゲーマー向けの音声通話ソフト。iOS/AndroidとWindows/macOSに対応している。公式で「SkypeやTeamSpeakにさよならしましょう」「Skype、TeamSpeakの時代は終わりを告げた…!」やたら挑発的なメッセージを掲げていることでも知られる。(TeamSpeakは対人ゲーなんかでもよく使われていた。Skypeもご存知の通り)

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(画像左と左下、右、それから各人のアイコンと名前はぼかしてある。こういう感じのインタフェース。このサーバーはおよそ100人ほどが所属しており、対人ゲーが盛ん)

機能としてはチャンネル別に分けられたテキストチャットとボイスチャットがメインで、インタフェース上ではタブ化して収納できるのもうれしい。一時期は公式Webサイトにも“Slack-y”と書かれていたくらいSlackっぽい(様々なゲーム等に由来するユニークな起動中メッセージやアップデート告知もまんまSlackである)。

SkypeやSlackと異なるのは、ボイスチャット=音声通話をいちいちかける必要がなく(個別通話機能もあるが)、「部屋立て」をしてそこに自由に出入りするシステムになっている。誰かが通話を開始したり終わらせたり、といった手間がかからず、勝手に来たり帰ったりする。便利だ。技術的なところはよく分からんので@mizchiあたりに聞こうと思う(私が聞いても理解できない可能性が高いが)。React NativeとかElixirとかを使ってるらしい。

余談だが自分はだいたい100人規模くらいのゲーミングコミュニティの管理者のひとりで、毎日10人から20人くらいは何らかのゲームをプレイしながらDiscordでしゃべっている。(月単位で行くと、半数以上は来てるんじゃないだろうか)。

他人がゲームをしているところに勝手にやってきておしゃべりをはじめたり、同じゲームを起動してマルチプレイを始めたりするのは、学生時代に友達の家でスマブラをやるとか部室に行ってダべる、みたいな体験で非常に良かった。

ぶっちゃけDiscordより便利なボイスチャットアプリが無い。それくらい便利でよい。

結果どうなったのか

(ここからは純粋な感想)

正直なところ、まだよくわからない。というか始まってすぐというのもあるが、Steamがすでに築いた基盤は流石にでかい。ただEpic Games(『Fortnite』)やBlizzard Entertainment(『HearthStone』『Heroes of the Storm』『World of Warcraft』『Diablo』そして『Overwatch』に『StarCraft』……)みたいに、ランチャーやプラットフォームをSteamでない場所で持つ(この場合は自社)は結構ある。

これを期に「Steam離れ」とかなんとか言うには多分早計すぎるけれど、多数のユーザーコミュニティを持つ巨大なゲーム配信プラットフォームが誕生した、ということだけは覚えておいていいと思う。

Steamとはユーザー数に2.5倍近い差があるが、Discord側が便利であり続ける限り人が増えるだろうし。今後も結構な勢いで増えると思われる。ただストア側への導線が弱く、あくまでコミュニケーション用のツールにストアがついている、といったところが実態なので、その辺はどうするのか、というのはかなり気になる。というわけで最新の動向を追うために皆さんもDiscordを使いましょう。便利です。(終)

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